一、とある本丸のある一日

刀剣乱舞合歓木本丸

 日が高く昇った昼頃、審神者はあくびを噛み殺しながら、執務室の前で大きく伸びをした。
春の強すぎない日差しを浴びていると、凝り固まった体の筋が伸びていく。
温かい空気に、時折吹いてくる丁度いいそよ風、どこからともなく聞こえてくる鶯の鳴き声に、さっきまで寝ていた審神者だったが、この絶好の昼寝日和に、もう一度眠ってしまいたくなる。

「よお、大将!相変わらず遅いお目覚めだな?」
「ふわあ~……おそよう、厚」

たまたま廊下を通りかかった厚藤四郎が、明るい笑顔で片手を上げながら挨拶をした。
それに審神者はあくびをしながら、同じく片手を上げて返した。

「今日は日課の鍛刀と、報告の書類を仕上げないといけないからな、これでも頑張って起きた方なんだ」
「まあ、大将にしては今日はまだ早い方だよな」
「書類に関してはシャレにならない位溜まっているから、今日は最強布陣でかかろうと思うんだ。夕餉が終わったら、手伝ってくれないか?」
「そんなに溜まっていたのか?分かった、博多には俺から伝えておくよ」
「助かる。……出陣する予定の部隊は?」
「五虎退と薬研が、昼寝から起きてからだな、あの二人だけ少し早めに寝ていたから、そろそろ起きると思うぜ?」
「ん~……じゃあ、起きて準備出来てから、出陣だな」

 厚と雑談をしながら廊下を進んでいると大広間に出た。
大広間には複数の短刀達が眠っていて、皆畳の上で揃いの薄くて青い掛け布団を被って、すやすやと眠っている。
そんな中、一振りだけ体を起こしている刀がいた。
未だ眠たげに目をこすっているが、審神者の気配に気づいて、その刀は紫の目をパチリと開いて、ニッと笑いかけた。

「あぁ、おはよう大将」
「おはよう、薬研。今日は出陣頼むな」
「ああ、しっかり寝たからな、ちゃんと動ける。頼りにしてくれていいぜ?おーい五虎退、そろそろ出陣だぞ」
「……んぅ」

小さな声が聞こえたかと思うと、薬研の近くで小さく丸まって、五匹の虎達と眠っていた五虎退も目を覚ました。
ゆっくり瞬きをして、目をこすりながらもそもそと起き上がった。

「うぅ…薬研兄さん……あるじさま?」
「ああ、おはよう五虎退。今日は出陣よろしくな」
「はい……がんばります」

寝起きで呂律が回りきっていないが、それでも五虎退は近くの虎を一匹抱き上げて、しっかりと頷いた。
うんうんと審神者が頷いていると、審神者の背後で大きなあくびが聞こえた。
厚が大きく伸びをしながら、あくびをしていたのだ。

「ふあ~……オレもまだ寝ていなかったからな、ちょっと寝るとするか。薬研、その布団貸してくれ。まだ寝てないんだ」
「ああ、構わないぜ」
「んじゃ、おやすみ大将」
「ああ、おやすみ厚」

薬研から掛け布団を受け取った厚は、そのまま布団を肩まで被って、外の短刀達と一緒に眠りについた。
やがて小さな寝息が聞こえ始めると、薬研は一度伸びをして立ち上がった。

「さてと、俺達は出陣の準備をするか」
「は、はい。虎君達、起きて、出陣だから起きないと」

わたわたとまだ眠っている虎達を起こす五虎退と、それを手伝う薬研を見て微笑ましく思いながら、審神者は大広間を後にした。

送信中です

×

※コメントは最大500文字、5回まで送信できます

送信中です送信しました!

コメント