この本丸の審神者はよく眠る。
夜は日を跨ぐ前に眠りについて、起きるのは昼近く、もしくは昼過ぎになる。
昼寝もするので、一日の睡眠時間が非常に長い。
霊力の質は良いものの、顕現や手入れなどで消耗する霊力の量が激しい、要は燃費が悪いのだ。
その為に政府からの日課の鍛刀や、日に数度の最低限の出陣だけで霊力が尽きてしまう。
それで消耗した霊力を回復させる為に、睡眠時間がどうしても長くなってしまうのだ。
そんな審神者の霊力で顕現した刀剣達も、少なからずそれの影響を受けている。
その為、この本丸の刀達は眠りに関して、特殊な事情を抱えている者が多かった。
例えば先程昼寝をしていた短刀達は、昼寝をしないとまともに動くことが出来ない。
昼寝を抜いて行動すると、眠気が酷くて動きが酷く鈍ってしまうのだ。
この本丸ができてから間もない頃、昼寝を抜いてしまった薬研が、眠気でふらついてしまった所を斬られて、重症で帰還したのは苦い記憶だ。
その為この本丸の短刀達は、毎日最低でも30分の昼寝の時間を取る事にしている。
昼寝さえ取る事が出来れば、日常に支障はないので、今では短刀全体での大事な習慣だ。
その為昼餉が終わった後の大広間は、昼寝を取る為のスペースとして解放されていた。
短刀以外の刀剣達も、昼寝をする場所としてよく使っているので、昼過ぎの大広間の近くはとても静かだ。
そうでなくとも、この丁度いい温かさだと、他の刀剣達も昼寝がしたくなってしまうのだろう、本丸自体も今日は静かだ。
鍛刀するために妖精に資材を渡して、新しい刀が来るの待っている間、そろそろ第一部隊が出陣する時間になっていたので、見送りに行こうと審神者が廊下を曲がろうとすると、丁度向こう側から歩いてきた誰かとぶつかった。
ぶつかった鼻をさすりながら、数歩下がって見上げると、褐色肌が目に入った。
「悪い」
「すまない…って、大倶利伽羅。起きたのか!」
「ああ」
短く返した彼は、審神者がぶつかったであろう、倶利伽羅龍が彫られた左腕をさすっていた。
この大倶利伽羅も変わった体質を持っていたが、話が長くなるので今は割愛する。
「そっか~今日は大分暖かいからな、調子はどうだ?」
「まだ本調子じゃない、先ほど膝丸も少しだけ起きていた」
「まあ、これからどんどん暖かくなるだろうからな、内番から慣らして、そしたらまた頼むぞ」
「……慣れ合うつもりはない」
これもまたそっけない返事だけ返して、大倶利伽羅はその場を去っていった。
伊達の刀辺りが喜ぶだろうなと思いながら、元の目的地へ足を運んだ。

コメント