三、へし切長谷部のなんでもない一日と回想

刀剣乱舞合歓木本丸

「おーい、今日の長谷部係誰だ?」

朝餉から大分時間が経った大広間で、非番の者が各々くつろいでいると、同田貫正国が入ってきて呼びかけた。

「俺だ」
「うおっ!?」
 
 大広間にいた者達は、誰だったろうかと互いに顔を見合わせていると、同田貫の背後にいた山姥切国広が声を掛けた。
まさか背後から声がかかるとは思わなかった同田貫は、驚いて思わずその場から飛びのいた。

「……って、隊長かよ。寝落ちとか大丈夫か?」
「今日は主と長谷部で、一日書類整理だ。余り動き回らないし、大丈夫だろう。食事も執務室で取るから、厨当番にそう伝えておいてくれ」
「分かった。昨日の買い出しの奴らから、レシートを預かったきりだったのを忘れててよ、ついでに長谷部に渡しておいてくれ」
「分かった」

同田貫から手渡されたレシートを受け取った国広は、長谷部の部屋に向かった。

 へし切長谷部はこの本丸の中でも、特に珍しい体質を持っていた。
何の前触れも無く、突然意識を失って眠りに落ちてしまうのだ。
あらかじめ、どんなに睡眠を取っても変わらない。
いつ目が覚めても、一定時間以上活動すると、不規則な時間でブレーカーが落ちたみたいに倒れてしまう。

 前触れも無く意識を失ってしまうのは、日常生活でも戦闘時でも、とても危険な事だ。
倒れた場所が階段の途中だったら、誰にも見つからない人気の少ない場所だったら、攻撃を仕掛けてくる敵の前だったとしたら。
場合によっては、折れてしまう事態に直結してしまう、そんな最悪の場合を避ける為に、審神者は彼の為にいくつかの決まり事を作った。
 その内の一つが、長谷部係と言われるものだった。
彼が倒れた時に怪我をしない為に設けられた係で、脇差と短刀は二振りずつ、打刀以上は一振りで、本丸の皆交代で、なるべく長谷部の側にいるようにするのだ。
内番以外で雑事の仕事を任されている者は、彼の意見を伺ったり、戦闘が好きな者は手合わせに誘ったり、古参である長谷部は何かと頼られる事が多い。
それでなくとも、短刀達は当番になると、長谷部を遊びに連れまわしたりするし、静かに過ごしたい者は、彼の部屋で読書や昼寝をしたりする。
何だかんだ言って、皆この係を気に入っている者は多いのだ。

ちなみに国広が係の日になると、大抵は審神者の書類整理の手伝いをする。
なので第一部隊の出陣を休みにして、一日執務室に籠る事が多いのだ。

「長谷部、いるか?」
「ああ」

部屋の襖を開けると、ジャージ姿の長谷部が、書類仕事に必要な道具を整理していた。

「今日はお前だったな」
「ああ、今日は俺と主とで書類仕事だ」
「分かった、ちょっと待ってくれ。もう少しで終わる」

長谷部は少し慌てて、机に出していた道具をいくつか取り出すと、国広と共に審神者がいる執務室へ向かった。

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