三、へし切長谷部のなんでもない一日と回想

刀剣乱舞合歓木本丸

「へし切長谷部、と言います。主命とあらば、何でもこなしますよ」

 長谷部はこの本丸の二番目の打刀として鍛刀された。
長谷部が初めて目にしたのは、寝巻を着た審神者と、その横に立っている厚藤四郎だった。

「やっと顕現できた……」
「隊長の手入れの後だったからな、仕方ねえよ大将。久しぶりだな長谷部!」
「ああ、久しぶりだな厚。まさかこんな所で会えるとはな。……あなたが主ですか?どこかお体でも?」
「ああ、こんな格好で悪いな長谷部。自分はちょっと変わった体質らしくてな、さっきまで寝てたんだ。色々苦労させると思うけど、これからよろしくな」

そう言って笑った審神者は、手を差し伸べて長谷部と握手を交わした。

「今日はもう出陣の予定はないから、簡単に本丸の案内をするな」

 案内をする審神者を前にして、長谷部は本丸の縁側を歩きながら庭の景色を眺めた。
木々は青々と生い茂り、空気も澄んでいる。
本丸の自然が豊かなのは、審神者の霊力の質がいい証拠だ。
ここはきっといい本丸なのだろう。

「長谷部?どうかしたか?」
「あ、すみません」

気が付けば歩みが遅くなっていたらしく、審神者は少し離れた場所で首を傾げていた。
それに気づいた長谷部は、慌てて審神者の元へ駆け寄った。

「あるじさま、おはようございます」
「あれ、主さん新しい仲間ですかー?」

遠くから声がしたと思えば、畑当番から帰ってきた鯰尾藤四郎と五虎退が、審神者の元に駆け寄ってきた。
まだ畑を耕している途中だった様で、二振り共泥だらけの状態で、道具を抱えている。

「ああ、おはよう二振り共。新しくやってきたへし切長谷部だ。色々教えてやってくれ」
「へし切長谷部だ。長谷部と呼んでくれ」
「よ、よろしくお願いします。僕は五虎退です」
「俺は鯰尾藤四郎です、よろしくお願いしますね長谷部さん!」
「うんうん、じゃあまた歓迎会は夕餉の時にするから、後で手伝ってくれ」
「分かりました!」

元気な声で笑った鯰尾達が、その場から離れていくと、審神者は引き続き長谷部の案内を続けた。

「ああそうだ、まだ案内していない場所と、紹介していない刀がいたな。後はこっちだ」

 ふと足を止めた審神者は急に方向転換して、先程とは別方向に歩き出した。
審神者が向かった先は、生活スペースや大広間から離れた場所、手入れ部屋だった。
そこにある閉じられた襖の一つを審神者がそっと開けると、その真ん中には傷を負った金髪の青年が寝かされていた。
青年の体はほとんど布団に隠されていて見えないが、投げ出されている手や、顔の半分は包帯に包まれている。

「主、この者は?」
「ああ、山姥切国広。うちの初期刀で、隊長だ。今日の出陣で重傷を負ってな。今日はもう起きないだろうから、詳しい紹介はまた明日にでもしよう」

そう言って、審神者は部屋に入る事無く、襖をそっと閉めた。

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