貰った金平糖をどうしたものかと、しばらく袋を見つめていたが、後で誰かにでもあげようかと、一旦服の中にしまった。
短時間ではあったものの、審神者の部屋を出たら既に日は沈んでいて、外はすっかり暗くなっていた。
庭に出て散歩でもしてみようかと歩き出そうとすると、遠くから話し声が聞こえてきた。
出陣から帰ってきた部隊があったのだろうか、ゲートの方が騒がしい。
足を運んでみると、小夜が所属している第三部隊が帰ってきていた。
今日の出陣は成功したのだろう、特に大きな怪我もなさそうで、皆まだまだ元気そうだ。
「おかえり、みんな」
「おう、ただいま小夜」
真っ先に小夜に気づいた第三部隊隊長の厚藤四郎が、パッと表情を明るくして、小夜に歩み寄り、同じくそれに気づいた部隊のメンバーもやってきた。
今日の部隊のメンバーは秋田藤四郎を部隊長に、厚藤四郎、前田藤四郎、乱藤四郎、今剣、そして愛染国俊だった。
「小夜君!ただいまもどりました!」
「ただいま小夜!」
「みんな、無事そうだね」
ざっと皆を見てみると、比較的練度が低い前田と愛染が軽傷になった位で、他のメンバーは服が汚れている位でほとんど無傷だった。
今は大丈夫かもしれないけど、検非違使が出始めている戦場で、今の部隊の練度差では、今後危険な目に会うかもしれない。
また部隊編成を見直した方がいいのかもしれないと、小夜は頭の隅で考えた。
「最近随分敵が強くなりましたよね、久しぶりの出陣で軽傷になってしまいました」
「ほんとだよねー、ボクさすがに疲れちゃった」
「そうですか?まだまだぼくはいけますよ!」
「オレもまだまだいけるぜ!」
まだまだ元気そうではあったが、やはり僅かに疲労の色が見えた。
そこで小夜は先程貰った金平糖の存在を思い出して、服から取り出した。
「よかったら……食べて」
「おおっ、金平糖だ!!」
「わあっ、主君の金平糖ですか?」
「頂いていいんですか?」
小夜が金平糖の袋をさしだすと、愛染と秋田が目を輝かせて、前田が本当にいいのかと心配そうに小夜を見たが、小夜は小さく頷いた。
「書類仕事の手伝いのお礼として貰ったんだけど、疲れた時は甘い物って言ってたから」
「わあ、ありがとうございます!」
「ん~!疲れが取れそう!」
金平糖の包みを開くと、皆二、三粒程手に取って口に入れた。
審神者の金平糖は、基本書類整理の手伝いの合間にたまにしか貰えない物で、万屋街でもそこそこ値が張る店で買った物だ。
おやつとしては滅多に食べられない物だったので、皆嬉しそうに金平糖を食べた。
まだ包みには半分残っていたが、それは小夜の物だからと遠慮をされたので、取り敢えずもう一度服の中にしまった。
「ごめんな小夜、急に遠征に変更して」
金平糖を食べ終わった厚が、急に予定を変えた事を小夜に謝った。
「ううん、おかげで久しぶりに兄さま達と一緒に遠征に行けたから……厚は今日部隊長ではないんだね」
「ああ、オレも大分練度が上がっちまったから、本当は練度差の解消に部隊から外れないといけなかったんだけど、今日は検非違使は確認されていない戦場で、あんまり行ったことない所だったから、念のためにオレも行く事になったんだ」
「……余りにも練度が離れるようなら、厚も外して他の刀達でしばらく回してもいいかもしれないね」
「それもそうだな、他の戦場で試してみるか」
そう言って顎に手を当てて考えこむ姿は、見た目が幼くとも立派な将の顔そのものだ。
夕方からの出陣を中心とする第三部隊は、これから解放されるだろう夜戦での戦場を見越して作られた部隊だ。
今この本丸での最前線である第一部隊が、厚樫山に挑戦している。
敵本陣を落とすのも、そう日にちはかからないだろう。
第三部隊の隊長である厚は、夜戦の戦場が解放された時に、短刀達での連携が上手くいくように、彼らの育成も任されており、基本的な部隊編成も任されている。
小夜にとっては総隊長でもある山姥切国広に次ぐ、もう一振りの頼れる隊長だ。

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