六、鶴丸国永は押入れの中の眠り姫

刀剣乱舞合歓木本丸

 鳥が鳴き始めた天気のいい早朝、既に内番着へ着替え終わった秋田は、鶴丸を起こす為に彼の部屋へと向かっていた。
乱みたいな大きな作戦はないが、秋田は彼の布団に乗っかって、起きるまで降りずに声を掛けようと考えていた。

「あれ?秋田、今日は早いですね」
「あ、おはようございます前田」

廊下の向かいから、既に内番着に着替えた前田に出くわして、秋田は足を止めた。
前田の首から下げてある物に気づいた秋田は、一つの事を思いついた。

「そうだ!今日はそれ、いつもと違う所でしてもらっていいですか?」
「え?いいですけど」
「よかった、じゃあ付いてきてください!」
「わっ!?」

何も分からない前田は、何の説明もなく秋田に手を引かれて、目を白黒させながら彼に付いていった。

「鶴丸さーん、朝ですよー!」
「おわっ!?」

 スパンと勢いよく押入れの扉を開けて、秋田が布団に思い切り乗っかると、鶴丸は突然降ってきた重さに目を覚ました。
何が起こったのか分からず、狭い押入れの中、秋田の重さですぐに起き上がる事が出来ず、寝ぼけ眼でキョロキョロしていたが、すぐに彼の特徴であるピンクのふわふわした髪に気が付いた。

「その髪は、秋田か?」
「えへへ、おはようございます」
「ああ、おはよう」

秋田の無邪気な笑顔に、鶴丸も思わず頬が緩んだ。

「今日はいい天気ですよー。鳥達もいっぱい来てますから、少しだけお散歩しませんか?」
「ああ、じゃあ眠気覚ましに行くとしようか」

鶴丸は布団から這い出して、秋田と一緒に外へ出た。

 外は秋田が言った通り、空は真冬の時よりも淡い色をした青空で、雲はほとんど浮いていない。
ほの温かい日差しが、まだ葉が少ない木々を柔らかく照らしていた。
すると「ピチチチ……」と鳥の声の様な音が聞こえて、鶴丸は歩いていた足を止めた。
しばらくその音を聞いていると、秋田が「こっちですよ」と鶴丸の手を引いて音のする方へ連れていくとその先には、先程鶴丸と同じように秋田に連れられた前田が、沢山の木々に向かって首から下げた何かに息を吹き込んで、さっきの音を出していた。
その音につられたのか、小さな小鳥が何羽か彼の足元でピョコピョコと跳ねていた。

「あ、鶴丸さん。おはようございます」

鶴丸達に気づいた前田は、一旦音を止めて彼らに笑いかけた。

「おはよう前田、鳥笛かなり上手くなったな」
「ありがとうございます。鶴丸さんに教えてもらって大分上達しました」

にこりと笑う彼の手には、手のひらに収まる程の、木で作られた笛が握られていた。

 その笛は以前鶴丸自分自身の手で、自分と秋田とお揃いで作ったものだ。
かつて鳥の声を聴いていた秋田と前田の前で、鶴丸が自分で作った鳥笛で鳥を呼び寄せて見せた時に、彼らが興味を持ったのでお揃いの笛を作ったのだ。
鳥の声に似せるために時々鶴丸が教えていたのだが、知らないうちに鳥を呼び寄せられる程にまで上達していたようだ。

「あ、見てください!白い鳥がいますよ!」

秋田が興奮したように、木の上の方を指さした。
二振が彼が指さした方へ顔を向けると、高い木の枝の先に白い鳥が一羽とまっていた。

「鳩でしょうか?珍しいですね」
「そうだろうな。白い鳩が見られるなんて、秋田には朝からいい驚きを貰ったな」
「今日はきっといい事がありますよ!」
「そうだな」

三振りは他の者が朝餉に呼びに来るまで、しばらくその鳩を眺めていた。

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