七、鶴丸国永の失踪事件と寝床探し

刀剣乱舞合歓木本丸

「それで、今日はどうしたんだ?まだ寝床は見つかりそうにないか?」
「……実はそうなんだよな」

事件から一週間、再度薬研の元に困り顔で訪れた鶴丸は、つい最近顕現した燭台切と一緒に別の内容で相談に来ていた。

「だって聞いてよ薬研君、鶴さんったら縁側の下で寝るって言うんだよ?眠れる場所だからって、いくら顕現して数日しか経っていない僕でも、そんな所でずっと寝てたら体を壊す事くらいわかるよ!」
「だから光坊~、そこは寝袋とかを用意したら何とかなるだろ?」
「でも着物だって汚れちゃうし、やっぱり僕は反対だよ」

何度も言い合いになったのか、鶴丸はうんざりした風に手をひらひらとさせた。
それでも納得していないのか、燭台切は片方の黄色い目を吊り上げた。

「いやー燭台切の言う事も一理あるぜ。いくら寝袋で寝たとしても、冬場になったら風邪だってひくだろうし、縁側の下の地面は固いからきっと背中でも痛めるかもしれない。そう考えたらいくら眠れても、別の理由で体調を崩すだろうな」
「うーん……そうなのか」

薬研が言った言葉に、鶴丸はがっくりと肩を落とした。

「鶴丸はあの縁側の下ならよく眠れたんだよな」
「ああ」
「じゃあその時、いつもの眠れない時と比べて何か違う事はあったか?」

薬研の質問に、鶴丸は考え込む様に顎に手を当てた。

「……土の匂い」

しばらくして、鶴丸は小さく言葉を零した。

「あの時土の匂いを嗅いだ後で、妙に気持ちが落ち着いてな。その後で急に眠くなって、気が付いたら眠ってたみたいなんだ」
「なるほど、土の匂いか」
「けれど、僕が初めて畑当番をした時鶴さんも一緒だったけど、その時は何もなかったよ」
「となると、鶴丸がよく眠れる条件は土の匂いだけじゃなさそうだな」

薬研は二振の話を時々頷いて聞きながら、鶴丸が眠りやすくなる条件を頭の中で絞っていった。

「うーん…これだけだと完全には絞れないな。よし、取り敢えず土がある場所で色々試してみるか」

そう言って一度あぐらをかいた自分の膝を叩いて立ち上がったかと思うと、薬研は部屋の外に出ようとした。

「いいのかい?今日はもう一度出陣があったはずだろう?」
「それが大将の霊力が尽きて、今日の出陣は中止になったんだ。夜まで付き合ってやるから、二振にも付き合ってもらうぜ」

鶴丸が彼の予定を気にしたが、薬研は大丈夫とばかりにニッと笑って見せた。


「鶴さん、具合はどうだい?」
「うーん…」

鶴丸は微妙な顔をしながら、畑の近くの木陰に寝そべっていた。
取り敢えず土の匂いがする場所で、縁側の下意外にいい場所がないか三振で探していた。
燭台切が言っていた通り、畑やただの土の匂いでは駄目らしく、地面に寝そべっても全く眠気はやってこない。
日向の明るい場所の土では効果は見られなかったので、今は逆に日当たりの悪い日陰を中心に良さそうな場所を探していた。

「さっきよりはいい気はするけど、やっぱりあの縁側の下の方がいいな」
「なるほど、乾いた土よりは湿気を含んだ土の方がいいみたいだな」
「湿気た土となると……寝る場所を探すのは中々難しいね。やっぱり外だと風邪をひくだろうし」

薬研が考えながら上を見上げていると、高い木々の隙間から薄闇が混じるオレンジの空が目に入った。

「もう夕方だな、そろそろ夕餉の時間にもだろうし、今日はこの辺にするか」
「そうだな」

彼の言葉に今日の所は鶴丸の寝床探しは、一旦切り上げる事となった。

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