「……うん。じゃあ、大阪城の編成はそういう方向で行こう。手入れで資源が一気に減りそうだから、開いている刀達で出せるだけ遠征に出て貰おうか。余り長くない時間の遠征の回数を多くしたいから……鶴丸、イベント中は本丸にいてもらう事になるが、前回同様遠征の編成と内番の割り振りは任せてもいいか?」
寒さも緩み、梅の花の蕾も綻び始めた季節。
次のイベントに向けて、審神者は全ての部隊の隊長を呼んで編成の話し合いをしていた。
編成の話が一段落ついてから、審神者が姿勢を崩して鶴丸に目を向けると、鶴丸も審神者同様姿勢を崩して、笑ってみせた。
「俺は大阪城には出られないからな、任せてくれ。君は現場の指揮と手入れに専念するといい」
「助かる。じゃあ、何かあったら逐一報告してくれ。この場は解散する」
そう言って、審神者はさっそく最初に出陣する刀の部隊編成の設定に取り掛かり始めた。
「鶴丸」
「何だ?総隊長殿」
国広は執務室を出てから、前を歩く鶴丸を呼び止めた。
「イベント中は、本丸を頼む」
「ああ、また編成の相談とかに乗ってくれ」
「分かった。俺が出るのは後になるから、いつでも言ってくれ」
鶴丸の笑顔につられて、国広も口角を僅かに上げた。
審神者に呼ばれた為、念のために戦装束にしていたが、どうせイベントの間は出陣は無いし、遠征もほとんど出られない。
国広と別れた鶴丸は遠征のメンバーを考えながら、内番着に着替える為に自分の部屋へ向かった。
一方国広は、自分と別れた後、己の部屋へと戻っていく鶴丸の背中を見つめていた。
「何を見ているんだ?」
「薬研、内番終わったのか」
声を掛けられた国広が顔を向けると、内番姿の薬研藤四郎が立っていた。
「ああ。今日は大分土を耕せたから、そろそろ種まきに入れそうだな。全部隊の隊長が揃って大将の部屋から出てきたって事は、また催し物でも始まるのか?」
「今回は大阪城だ。それで主と編成の話し合いをしていたんだ」
「成程。そろそろ弟達も、いち兄に会いたいだろうから頑張らないとな。……鶴丸を見ていたのか?」
簡単なやり取りをして、薬研は本題に入った。
「ああ。前回同様、鶴丸には出陣メンバー以外の遠征と内番の編成を任せる事になったんだが、こういった時に本当に頼もしいなと思ってな」
「確かにな。たまにふざけた事もするが、戦事に関しては頼れる御仁だ。さすがは一番大きい第二部隊を大将に任せられているだけはある」
国広の言葉に、薬研も頷きながら同意した。
鶴丸国永は現在、第二部隊の隊長を務めている。
燭台切が見つけた押入れにより自分にあった寝床を見つけた鶴丸は、彼と部屋を入れ替えて押入れで眠るようになった。
そのおかげで彼の睡眠不足はすっかり解消されて、体の調子が上がり多くの誉を取れるようになったのだ。
その武勲を見て、審神者は鶴丸を第二部隊の隊長に任命した。
国広が率いる第一部隊が、新たな戦場を切り開く精鋭部隊だとすると、第二部隊は第四部隊である程度練度を上げた刀達の練度を上げる為の育成部隊だ。
そんな第二部隊に所属している刀は、他の部隊より圧倒的に所属数が多い。
ある程度固定で出陣するメンバーはいるものの、一番メンバーの入れ替わりが激しい部隊でもある。
しかし鶴丸の采配により様々な戦術にも柔軟に対応し、政府からのイベントが始まると、それに合わせてすぐさま対応してみせる優れた部隊に成長した。
変化の激しい部隊を指揮できるのは、古参として広い交流関係を築き上げて、他の刀の事をよく見ている鶴丸だからこそ出来る業だ。
「本当に、昔に比べたら大分変わったもんだ。俺に体調の事を相談していた頃とは大違いだ」
「そういえば、あいつもお前に自分の体質の事を聞いていたな」
「ああ、あの頃はここにいた刀もまだ少なかったから、長谷部の事があった後でもなかなか鶴丸の体質は見抜けなかった。……まったく。大将の影響もあるとはいえ、この人の身は興味が尽きないな」
そう言って薬研は目を細めながら、自分の手のひらに目を落とした。
「じゃあ、俺もイベントに備えるとするか」
「最初は第四部隊が出るから俺達が大阪城へ出るのはもう少し後になりそうだが、遠征の回数はかなり増えそうだ。いずれ鶴丸から指示が出るだろうから、いつでも出られるようにしておいてくれ」
「ああ」
それからいくつか事務的な事を話してから、薬研は国広と別れて自室へ戻ろうとした。
すると既に内番着に着替え終えた鶴丸が、たすき掛けの紐を結びながら、遠くの廊下を歩いているのが見えた。
その足取りは、これからの戦いを楽しみにしているかのように、軽やかに感じられた。

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