八、髭切のレベリング奮闘記

刀剣乱舞合歓木本丸

「第四部隊隊長、へし切長谷部だ。今日からよろしく頼む」
「うん。よろしく頼むよ」

 本丸に慣れる為の内番を経て、髭切は第四部隊で初めての遠征をする事になった。
顕現して間もない男士は、この部隊で長谷部の指揮の元、遠征と函館の戦場を何回か周回して戦いの感覚を掴んでいくのだ。
遠征自体はつつがなく終了して、集めた資材を抱えて帰路につく所だった。

「ねえ、おし切君」
「おし切じゃないへし切長谷部だ、そして俺の事は長谷部と呼べ。なんだ?」

髭切が何度も名前を呼び間違える度に訂正させる長谷部は、本日三回目の同じやりとりをしてから彼の方へ振り返った。

「弟の……なんだっけ?とにかく弟ってどの部隊にいたの?」
「お前の弟……ああ、膝丸だったか。あいつは第二部隊に所属している」
「この前言ってた練度ってどれくらいなの?」
「あいつは確か……六十は超えていたな」
「そうか……春までに僕も同じくらいになる事は出来ないのかい?」
「春までに……か?」
 
 髭切の言葉に長谷部は目を大きくして、思わず足を止めてしまった。
初めて遠征をする刀にそう言われたのは初めてという事もあったが、季節は冬の終わり、春が来るまで二カ月も無い。
正直今から髭切が順調に出陣を重ねたとしても、せいぜい特が付くかつかないか位の予定なのだ。
なのでもし春までに膝丸と同じ位の練度になろうとすると、本来の三倍近くのペースで練度を上げないといけない。
そうなると他の部隊の出陣のスケジュールも崩れてしまう可能性もあった。

「……難しいだろうな。普通のやり方で出陣してもせいぜい特が付くか、付かない位の練度しか上がらないだろう。他の部隊の都合もあるし、主の負担も考えると出陣回数もそう増やせない。……だが何故だ?」

長谷部が訳を聞くと、髭切は「ん~」と言いながら顎に手を当てて考えるそぶりを見せた。

「寝ている弟が春に起きた時に、同じ練度になって驚かせてやりたいから……かな?」

口調は軽い物だったが、髭切の目は本気だった。
長谷部はしばらく髭切をじっと見ていたが、ふいと目を逸らして眉間に皺を寄せながら少しの間考えた。

「成程な。……どちらにせよ、それは俺だけで判断出来るものではない。まずは鶴丸に相談してみるとするから、お前も来い」
「鶴丸?」
「奴は第二部隊の隊長だ。いずれお前も特が付いたら入る事になる。部隊編成はそれぞれの部隊長と主が決めているから、どちらにせよ話は通した方がいいだろう。さて、話は一旦終わりだ。早く本丸へ帰るぞ」

そう言って長谷部は遠征を終わらせる為に再び前を歩き出して、髭切もそれに続いた。



「えっ、髭切を春までに膝丸と同じ練度にか?」
「そうだ」

 部屋で戦装束に着替えている途中だった鶴丸に声を掛けた長谷部は、髭切も連れて先程の遠征で話していた内容を彼に話した。
着替えも終わって部屋の真ん中であぐらをかいた鶴丸は、少し考えた後ニッと笑った。

「そういう驚きは大好きだぜ。うん、俺も協力しよう」
「いいのかい?」
「ああ」

髭切の願いに鶴丸は笑顔で快諾した。
予想以上に話がすんなりと済んだので、長谷部と髭切は少々拍子抜けした。

「だが問題は、一日に出陣できる回数は限られている。仮にそれに全部参加したとしても間に合うのか?」
「おっと、それなら大丈夫だと思うぜ?」

長谷部が課題を提示すると、鶴丸はピッと人差し指を立てた。

「さっき総隊長殿が、政府からの文を持っているのを見かけた。おそらくいつもの戦績と催し物の知らせだろう。催し物での出陣ならいつもの戦場より早く練度が上がる。それに髭切を編成に入れるように俺から話してみよう。それならギリギリ間に合うはずだ」
「他の刀の編成はどうするんだ?まだ髭切は特すら付いていないぞ」
「それならなるべく練度が近い刀をあてるさ。ただ今回の場合はかなりの特例だから、他の刀との出陣回数のバランス調整で、膝丸が起きたら出陣ができるようになるまで、髭切も出陣は一時的に停止させる事になるだろうがな。もしこの話が通ったら、かなりきついスケジュールになるが君は大丈夫なのか?」
「僕が言い出した事だからね、やってみせるよ」

鶴丸の問いかけに髭切は笑って答えてみせた。

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