八、髭切のレベリング奮闘記

刀剣乱舞合歓木本丸

「さあさあ、泣きごとは一切聞かんばい!数日は大変だと思うけど、今後の本丸財政の為にひたっすら小判拾ってもらうばい!」

 部隊長の博多藤四郎がいつも以上に目を光らせて、赤い縁の眼鏡をくいっと上げながら大声で宣言した。
鶴丸の言った通り、数日後大阪城のイベントが始まった。
鶴丸と長谷部の口利きで、髭切は大阪城限定で部隊長を務める博多同様、ほとんど固定で部隊に編成される事になった。
イベント序盤は髭切と同じ部隊に所属している第四部隊の刀達の編成となるが、地下深くに行くにつれて敵も強くなるので、途中から第二第三部隊の刀と交代して、最後の方になると第一部隊と一緒に出陣するのだ。
かなりの特例の話で疑問に思う者もいたが、その度に鶴丸と髭切が訳を話す事で納得してもらった。

「新人しゃん、小判入れる袋は持ったと?」
「うん、ちゃんと持ってるよ。え~と、はかま君?」
「おしい、一文字違い!俺はは、か、た、藤四郎ばい。袋は予備があるから小判がいっぱいになったり、破れたりしたりしたらいつでも言ってくれていいけんね」
「うん、よろしく頼むよ」

 既に何度か名前を呼び間違える髭切に気にした様子もなく、博多は人懐っこい笑顔を向けて小判を入れる為の袋の束を見せた。
その袋の量はかなりあるので、本当に取れる限りの小判を回収する気だろう。
 本丸の財政は決して楽な物ではない。
生活する為の物資や万屋で買う為のお金はまた違う貨幣になるが、本丸の模様替えをするための設備や、他のイベントの進行に必要な通行手形は小判じゃないと手に入れる事が出来ない、その為どうしても小判は多く手に入れておきたいのだ。
政府の情報によると、大阪城へ向かう部隊に博多藤四郎を編成させると、通常より多くの小判を見つける事が出来るとの事だったので、大阪城のイベントが始まると必ず博多を隊長として、大阪城に向かわせるのだ。
全員の用意ができた事を確認した博多は、大阪城へ向かうためのゲートを起動させた。

「じゃあ。大阪城特別部隊、出陣す!」


 狭い道、湿った土の匂い、パチパチと松明の木が爆ぜる音、薄暗くても大阪城の地下は夜戦とは違って、太刀である髭切でも前の様子が良く見える。
隊長の博多に続いて、髭切は周りの景色をキョロキョロと見渡しながら、部隊の後ろの方を歩いていたが、しばらくして博多が合図をしたのですぐに足を止めた。

「敵の気配がするばい……商売は情報、偵察で相手見てから攻撃するばい」

 博多は手慣れた様子で他の刀に指示を出して、戦いに備えた。
髭切は後衛として、囲まれないように刀を構えながら、後ろに敵が来ていないか確認した。
すると部隊の前方で敵部隊を発見したらしく、偵察に向かっていた刀が戻ってきた。
彼の報告を聞いて博多が陣形の指示を出し、短刀達が銃兵を展開して相手に発砲し、それで敵の戦力を削ってから、一斉に斬りかかった。
目の前の空中を飛び回る短刀の動きを見極めて、髭切は敵を頭から縦に両断した。
 長い間人間に使われてきたが、人の身を得て自分の手で刀を振るい、敵を倒す感覚は何とも不思議な心地ではあったが、髭切は言いようもない高揚感を覚えた。
肉を、骨を絶つ感触、血しぶきが飛び散る音、その後で香る鉄の匂い、ただの刀であった時とはまた違う感覚。
それが髭切にはとても面白い物だと感じた。

「髭切しゃん、大丈夫と?」

他の刀達も敵を倒し終えたらしく、博多が様子を見にやってきた。

「うん。この身体で敵を斬るのって、刀の時とはまた違う感覚で面白いねえ」

ふわりと笑う髭切に、博多も歯を見せて笑い返した。

「それはよかったばい!さあ、小判が待ってるから、次行くばい!」
「そうだね」

髭切は上機嫌で、部隊の者と合流して次への道を進んだ。

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