時間とは早いもので、髭切が大阪城への出陣を繰り返して、早くも一週間が経とうとしていた。
彼もこの頃にはとっくに特が付いて、レベリングは予定していたより遥かに順調に進んでいた。
このままいけば、かなり余裕を持って目標の練度まで上げられるかと思っていた髭切だったが、それが気の緩みとなったのだろう。
部隊との連携に慣れてきた頃に、博多と髭切以外のメンバーが全て入れ替わった為、立ち回りや連携の仕方が変わって、髭切は新しい部隊での立ち回りに慣れるのに手間取っていた。
まだ自己紹介位しかした事の無い仲間がどのような戦い方をするのかを、まだ新刃の髭切は知らない。
なのでそれに対して自分がどのように動けばいいのかが、すぐには分からなかったのだ。
加えて髭切はこの部隊では一番練度が低い。
それに目を付けられたのか、髭切は敵から集中攻撃を食らってしまい、重傷を負ってしまったのだ。
怪我は手入れですぐに治ったが、顕現してまだ日の浅い中、連日の出陣で疲労が溜まってしまったのだろう。
次の日髭切は高熱を出してしまって床に臥せってしまった。
彼の手入れで霊力を消耗した審神者も、霊力を回復するために大事を取って、その日の出陣は取りやめになった。
無理をさせてしまったと博多が謝りに来た事と、燭台切がお粥を持ってきたり、時折容体を見に来る薬研が額に乗せてある手拭いを替えてくれたりする事以外は、髭切しかいない部屋の中は本当に静かで、退屈だと思いながらも大人しく寝ていた。
「お、起きたか?」
いつの間にか眠っていた髭切が目を開けると、枕元には顔なじみの白い太刀が胡坐をかいていた。
彼の顔がオレンジがかっているのを見て、もう夕方まで寝てしまっていた事に気が付いた。
「……鳩丸?」
「鳥違いだな、鶴丸だ。具合はどうだい?」
鶴丸が具合を聞くと、髭切はもぞもぞと自分の額に乗ってある、既に乾いた手拭いに手を乗せた。
「うーん……大丈夫だけど、頭がいつもよりふわふわするかな。……何か体も重いし、暑い」
「まだ熱は下がりそうにないか。大分無理をさせてしまったみたいだな、悪かった」
「いいよ、僕からお願いしたんだもの。……これも手入れとかで治らないの?」
「残念ながら手入れは怪我は治せるが、熱や風邪の病気には効かないんだ。ゆっくり休んで自分で治す事だ」
「……そうなんだ。人の身体はこういう所は弱いんだね」
「そうだぜ。疲れたらちゃんと休まないと、この身体はすぐに調子を崩すからな。予定より速く練度は上がってるんだ、数日休んでも間に合うだろうさ」
「うん……そうするよ」
鶴丸が髭切を労うように布団から出てしまっている肩を軽く叩くと、髭切はもぞもぞと自分の布団をかぶりなおした。
「なあ、一つ聞きたいんだが」
「なあに?」
「君はどうして膝丸が起きるまでに同じ練度になりたいんだ?」
「……んー?」
質問の意味が分からない髭切は、目だけ布団を出して鶴丸を見上げた。
「ただ起きたあいつを驚かせたいだけじゃあないんだろう?」
「うーん……そうだなあ……丹頂丸は兄弟いたっけ?」
「鶴は鶴ではあるが……まあいいか。いるにはいるんだろうが、皆転々ばらばらで今でも残っているのはほとんどいないだろうなあ。……兄弟刀の記憶は俺には無いな」
「そっか……じゃあ、鶴丸には分からないかもしれないなあ」
鶴丸が自分の兄弟がいたか首を傾げながら思い返していると、それを見ていた髭切はおかしそうに「ふふっ」と笑った。
「どういう事だ?」
「お兄ちゃんってね、弟には負けたくないものなんだよ」
「そういうものなのか?」
「そういうものなんだよ」
「よく分からないなあ」と言う鶴丸を見てクスクス笑いながら、髭切は今度こそ布団をかぶりなおして眠りについた。

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