「大将!文が届いてたぜ」
今日の近侍である厚藤四郎は政府からの文を持って執務室に入ってきた、今日も中々数が減らない書類仕事に頭を悩ませる審神者は、彼の声にいったんパソコンのキーボードを叩く手を止めて、顔を上げた。
「ん、ありがとう厚。いつもの戦績か?それにしては早い気がするけど」
「いや、そうじゃなさそうだな。戦績にしてはいつもより封筒の中身が重そうだ」
厚が手に持っている封筒を上下に揺らして重さを確かめて、首を傾げながら審神者にそれを手渡した。
審神者は受け取った封筒の裏表を確かめて、確かに政府からの文だという事を確かめてから、封を切って中の紙を取り出した。
「参加必須の演練のお知らせ……?」
「なんだって?」
文章の頭を見て訝し気な表情を浮かべる審神者を見て、厚も回り込んで審神者の肩越しにその紙に書かれている文章に目を通した。
手紙の内容を簡単にまとめるとこうだった。
・所属国内で同じ位の経験年数の審神者同士での情報交換を目的とした演練を行う。
・今回は通常の演練とルールを変えて、審神者四名を一組とした総当たり戦とする。
・各試合の部隊編成は試合開始まで自由に変更しても構わないが、全試合登録出来る刀剣男士は最大六振りまで。本丸で最も強い部隊での三連戦を推奨する。
・なお繰り返すが、この演練は参加必須である。
「ふーん、確かに珍しいな。しかも明日の話なんて随分と急だな……でもたまには他の本丸の話を聞くのも面白そうだな」
「同じ位の経験年数の審神者同士……か」
「大将?」
手紙の内容を読み終えてそれに興味を持った厚だったが、隣からのいくらか温度が下がった声に顔を向けると、審神者は嫌そうに眉間に皺を寄せていた。
審神者があまり見せない顔に厚は戸惑ったが、すぐにその表情はいつもの笑顔に戻った。
「いや、何でもない。ちょっと面倒くさいなって思ったんだ。できればサボれないかな~……なんて」
「ん~……難しいと思うぜ。政府からの催し物の参加なんていつも任意なのに、今回は珍しく必須なんだから」
「だよな……」
「…………」
そう言って編成を考え始めた審神者を見て、厚は審神者の真正面に座った。
「なあ大将。その演練、オレを入れて貰ってもいいか?」
「厚を?」
「できればだけど、第三部隊になってからずっと夜戦続きで、短刀と脇差の編成でしか戦ってなかったから、久しぶりに初期の第一部隊の編成で戦ってみたいんだ」
「そうだな。初めてのイベントだし、久しぶりにその編成もいいかもな。じゃあそれにしよっか」
「よっしゃ!ありがとな大将!」
厚はガッツポーズをして、歯を見せて笑った。
「じゃあ他の皆の予定を一部変更するか。それが決まったら、皆にこの事を伝えてもらってもいいか?」
「おう分かった!じゃあ後で伝えておくよ。じゃあそれまでこっちの書類まとめておくぜ」
「うん、頼んだよ」
審神者が自分の刀達の数日の予定を見直している間、厚は審神者の様子をちらちらと見ながら、残っている書類の整理を始めた。
夕餉を乗せたお盆を持って、大広間に足を運んだ厚はキョロキョロと辺りを見渡して、探していた山姥切国広を見つけた。
また長い昼寝をしていて、堀川国広に引きずられて大広間にやってきたのだろう。船を漕ぎながら薄目でおかずをもそもそと口に入れていた。
いつもより眠気が酷いのか、頭の揺れ方が大きくて今にも味噌汁に頭を突っ込みそうになっている。
相変わらずの総隊長の様子に苦笑しながら、厚は丁度開いていた彼の隣に腰を下ろした。
「ちゃんと起きないと、また味噌汁こぼすぜ隊長」
「ん……あつしか……きんじのしごとおつかれ」
「ああ、隊長もお疲れ。……実はさっき伝えた政府からの演練の話なんだけどさ」
少し声を落とした厚の声に反応した国広は、おかずを取ろうとした箸の手を止めた。
「……何かあったのか?」
薄っすらとしか開いていなかった目を開けて、国広は布の中からヒタリと厚に視線を向けた。
「その演練の手紙が来た時に、大将が少し嫌そうな顔をしていたんだ。いつもだったらそんな顔しないだろう?」
「確かにな……他に何かいつもと違う事はあったか?」
「そういえば、同じ位の経験年数の審神者同士って所が気になっているっぽかったな」
「演練で同じ経験年数の審神者か……やはりあの時の事を気にしているのだろうか……」
「あの時?」
何かを思い返すような遠い目をした国広に、厚が首を傾げて聞き返した。
「ほら、俺達に特がついた頃の……」
「……あ、あれか」
国広が言い出した事に思い当たる節があったのか、厚も小さく頷いた。
「だとしたらどうする?また大将にあんな思い……オレはさせたくねえよ」
「……厚、ちょっと一緒に探して欲しい物があるんだが」
「……ん?……おう」
しばらく考え込む様に黙っていた国広が口を開くと、先程までの内容とかみ合わない話に、首を傾げながらも厚は頷いた。
「助かる。演練に持っていきたい物なんだが、主には余り気づかれたくない。これを食べ終わって主が風呂に行ったら探しに行こう」
「分かった」
詳しい事を話さない国広を不思議に思いながら、厚は頷いて残っているご飯をかき込んだ。

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