「うっ、げほっごほ……うわあ、すごい埃」
急に舞い上がった埃をうっかり吸い込んで、大和守は思わずその場でむせて何度か咳き込んだ。
どこから埃が来たのかと辺りを見渡すと、遠くにある倉庫の入り口から白い煙の様な埃が舞い上がっていた。
入り口から少し離れている場所には、倉庫に保管されていた大小さまざまな物が置かれていた。
「げほげほ、うぅ……目に埃が」
風で引いていく埃の中から、五虎退が埃が入ってしまった片目を擦りながら現れた。
何度か目を擦ったり瞬きをしても、目に入ってしまった埃が中々取れないらしく、片目から涙が滲み始めていた。
「大丈夫?五虎退、余り目は擦らない方がいいよ。そこの水道で洗おう」
「大和守さん……はい」
大和守はあまり目を開けられなくて周りが上手く見えず、よろよろ歩く五虎退に手を貸して、近くに設置されている水道まで誘導した。
五虎退は蛇口を捻って流れだす水をすくって、目を中心に何度か顔に水を掛けると、ようやく埃が流れたらしく何度か瞬きをして両目を見開いた。
「あ、ありがとうございます。大和守さん」
「うん、ちゃんと埃は流れたみたいだね」
少しはにかんで礼を言う五虎退の目を覗き込んで、もう埃はない事を確認すると大和守はニコリと微笑んだ。
「倉庫の掃除の様子はどうかな?」
「えっと……大きな物は大方外に運び出して、これから箒をかけようとしたんですが……さっき刀装を保管していた箱が崩れてしまって、刀装が倉庫中に散らばっちゃったんです。さっきの埃はそれで舞い上がっちゃって」
「そうなんだ。ちょっと見てくるね」
「ぼ、僕も行きます」
結構大変な事になっているなと思いながら、大和守と五虎退は未だに舞い上がっている埃を手で仰いでよけながら、入り口から中を覗き込んだ。
倉庫の中は中々の惨事になっていた。
大きな家具や道具は既に外に運び出されていたが、奥に刀装を保管していた木箱数箱がが倒れていて、金銀の沢山の刀装が辺り一面に転がってしまっている。
それをこの倉庫の管理をしている鯰尾藤四郎を筆頭に、力仕事の為に駆り出された三日月宗近、小狐丸、鶯丸、そして道具や家具の掃除の手伝いとして今剣が、転がっている刀装を拾い集めていた。
「あちゃあ~派手にやっちゃいましたね」
鯰尾は苦笑いを浮かべながら、無事だった刀装を落とさないように、崩れてしまった木箱を元の位置に直していた。
「これ三日月、その刀装はこっちじゃ。そっちではない」
「ん?おお、そうだったか」
「この刀装は投石兵か。確かこれはそっちだったかな」
「そのとうそうはこっちですよ鶯丸!」
少し離れている場所では、違う場所に刀装を直そうとしている三日月と鶯丸に、小狐丸と今剣がそれを引きとめていた。
「大変そうだけど、大丈夫?」
「あ、大和守さん!見回りお疲れ様です」
大和守に気づいた鯰尾は、転がっている刀装を踏まないように、時々つま先で飛び跳ねながら彼に近づいた。
「これから箒をかけようとしていたんですけど、刀装が散らばっちゃって……全部拾った後に数も確認しないといけないんで、ちょっと時間がかかるかもしれませんね」
「そっか、数がずれていたら大変だもんね……さっき庭当番の掃除の様子を見に行ったら、予定よりも順調で日本号達が終わったら様子を見に来てくれるみたいだから、きっと手伝ってくれると思う」
「本当ですか?他にも外に出している家具の埃も払わないといけなかったんで、正直時間までに間に合わないと思っていたんで、すごく助かります!」
先程まで少し困ったような顔をしていた鯰尾だったが、大和守の話を聞いてパッと表情を明るくした。
「そうだ。もう少し温かい服装に着替えた方がいいよ、今日の夕方もっと冷え込むみたいだから」
「分かりました。刀装を全部拾い終わったら、みんなにも着替えてもらう事にします」
「うん、じゃあ残り時間も頑張って」
「はい!」
まだまだ床に沢山散らばっている刀装を見て、少し心配に思いながらも、大和守はその場を後にした。

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