十四、沖田組の本丸大掃除 二日目

刀剣乱舞合歓木本丸

御手杵(虫描写ありなので注意!)

「「お部屋改めである!」」

 加州と大和守が戸を開け放つと、まだ掃除が終わっていない様子の御手杵が部屋の真ん中で、ゴミ袋にいらない物を突っ込んでいた。

「あれ、今年は二振りで来たのか?」

二振りで来た事に、御手杵は首を傾げた。

「僕に充てられた見回りは終わったからね。この後政府からゴミ回収の業者が来るから、清光と大掃除で出たゴミの回収の立ち合いをしないといけないんだ。だからすれ違い防止で一緒に来たんだ」
「なるほどな。じゃあ、よろしく頼む。……と言いたいんだけど、見ての通りまだ片づけが終わってなくてな~。悪い」
「普段こんなに散らかってないよね、なんかあったの?」

 普段の彼の部屋も、それなりに彼の私物で散らかっているが、今日に関してはいつにも増して酷かった。
彼が私物で持っている漫画だけじゃなく、他の刀が共同で使用しているゲーム機や、お菓子の空箱や袋が散らばっていた。

「いやー。実は昨日の夜獅子王と同田貫と、あと暇そうだった小夜と山姥切誘って、ちょっとしたゲーム大会やってたんだよ。おかげですっかり寝坊しちまって、掃除する時間が大分無くなっちまってな。ははは」
「ああ、だから朝餉の時に見かけなかったんだ」

 頭を掻きながら乾いた笑い声をあげて苦笑する御手杵を見て、加州は納得した様に頷いた。
加州が朝餉の食器を片付ける時に、いつまで経っても朝餉のおかずを取りに来ていない刀がいると、燭台切が少し心配そうに言っていたのを思い出した。
おそらく朝餉の時間が過ぎても眠りこけていたのだろう、加州は少し呆れたように腰に手を当ててため息をついた。

「俺達も手伝うから、さっさと終わらせるよ」
「立ち合いの時間は決まっているから、それまでに何とか終わらせないとね」
「お、手伝ってくれるのか?助かるよ」

そう言って一緒に散らかっている物を拾い始めた二振りを見て、御手杵は表情を明るくして礼を言った。


「御手杵、この漫画はここで大丈夫?」
「ん?ああ、そこで頼む。できれば巻数順に並べてもらえると助かる」
「了解」

小さめの箒で床の塵を掃いている御手杵の背中に、彼の漫画や本を整理していた大和守が声を掛けると、御手杵は肩越しに振り返って、それに答えた。

「うわ。ちょっと御手杵ー、お菓子の袋はちゃんと口閉じておいてよ、ほとんど開けっ放しじゃん」

加州が掃除していた場所からは、口が開いて中身の欠片が少し散らばってしまっているポテトチップスの袋が転がっていた。
他にも食べ散らかしたのか、クッキーや煎餅の食べかすの様な物は、一部が畳の隙間に入り込んでしまっていた。

「あれ。口の所は開かないように、ちゃんと折っておいたんだけどな」
「ポテチの袋は紙製じゃないから、折っても意味ないって。ちゃんと輪ゴムを使わないと勝手に開いちゃうから。これだけ食べかすも落として、もし虫でも湧いたr……」

加州が床に散らばったお菓子の空箱を掴むと、それに隠れていた黒くて小さい影が、加州の足めがけてカサカサと動いた。

「うわあああああ!!ほんとに出た!安定、安定ァ!!」
「うわっ、いきなり抱き着くなよ!」

突然の奇襲に加州は叫びながら大和守の腕にしがみつき、いきなり腕にしがみつかれた彼は、うっとおしそうに加州を自分の腕から引き剥がそうとした。

「ん?何だ虫か」
「何で二振り共平気そうなの!?どうにかして!!」

黒光りする奴だけでなく、虫全般が駄目な加州は大和守にしがみついたまま、今は動きを止めている“奴”を指さした。

「はあ、しょうがないな~……。首落ちて死n」
「本体でやろうとするなよ!!」
「針の穴を通すが如k」
「刺せばいいって訳でもないから!!」

一体何を思ったのか、大和守と御手杵は自分の本体を出したかと思ったら、それを使っていきなり“奴”に襲い掛かったので、加州は大慌てで彼らを押しとどめた。

「あんなの斬ろうとしないでよ!あれ斬った逸話が後で残ったり、名前変えられたりしたらどうすんのさ!」
「ゔッ……それは嫌かも」
「どうせならもう少し凄い奴倒したって言われたいしな。じゃあ止めておくか」

加州の必死の制止の言葉に、大和守はかつて“奴”を斬ったと語られる自分を想像して眉間に皺を寄せ、御手杵も素直にそれに賛同して自分の本体を納めた。
今にも動き出しそうな“奴”にじりじりとした硬直状態が続いた。

「おーい御手杵、昨日俺のゲームそっちに忘れてねえか?」
「同田貫!」

何も知らない同田貫が部屋の入り口から顔を出すと、加州は虫が平気そうな味方が増えたと思いながら声を上げた。

「ちょうど良かった、同田貫もあれどうにかするの手伝って!」 
「あー?……何だよただの虫じゃねえか。放っときゃどっか行くだろ」
「あんなの放置するなんて無理だって!!」

加州が必死になって協力を頼むが、同田貫自身は“奴”をちらりと見ると、気にした様子もなく自分の私物のゲーム機を探し始めようとしたが、加州がもう一度叫ぶと面倒くさそうにため息を吐いた。

「しょうがねえな~、何かいい得物はねえのか?」
「いらない雑誌とかは昨日の内に処分しちまったからな~……お、この辺りのやつとか使えそうだぞ」

同田貫が“奴”を倒す為の武器を探し始めると、御手杵が床に散らばっている物を拾い集めて、同田貫や加州達にそれを一つずつ手渡した。

「……ねえ、何これ」
「ハリセンだな」

 加州は苦虫を噛み潰したような顔で、御手杵にいきなり手渡せられたハリセンをしげしげと見つめた。
御手杵はハリセンの名前を聞かれたと思ったのか、彼は良い顔で加州に向かって親指を立てた。

「いやハリセンの名前を聞いている訳じゃないんだよ。何でこれな訳?何でハリセンがあるの?」

 他の刀が持っている物を見ると、大和守は比較的丈夫そうな厚紙でできているお菓子の空箱を両手にはめていて、同田貫はピコピコハンマーを両手で構え、御手杵はお菓子の筒を持っていた。

「何だかんだあって、叩いてかぶってじゃんけんポンを、総当たりでやろうって流れになってよ、鶴丸の奴から借りてきたんだ」
「その何だかんだの経緯がすごく気になる……」

同田貫が理由を説明すると、加州は心の中で「どうしてそうなった」と頭を抱えた。

「ヘルメットはないみたいだけど、何をかぶったの?」
「いい奴がなかったから、最初は座布団で代用してたんだけど、白熱して途中からハリセンで防御しようって事になってさ、何か叩いて防いでみたいになっちまってたな」
「ええ……何そのめちゃくちゃなルール、原型とどめてないじゃん」
「だよな。今思えば、何であんなので盛り上がってたのか意味が分からねえ」
「深夜のノリって怖いよね……」

御手杵達のゲーム大会の様子を想像して、加州は若干引いてしまい、大和守はたまに行われる宴とかで、その浮ついた分に気に飲まれて、必ず誰かが変な行動を起こしているのを思い出して、つい同調してしまった。

「ちなみに誰が優勝したの?」
「えっ、まだ話広げるの?」
「小夜の圧勝だった。ちなみに俺と獅子王は一勝もできなくて、山姥切はじゃんけんで負けても、毎回ハリセンで相手を叩こうとするから失格。最後は同田貫と小夜の一騎打ちだったな」
「やっぱり短刀の機動に勝つのは難しいよね。けど山姥切が失格なのはちょっと意外だな。ルールとか規則とかは守りそうなのに」
「なんか「いざやってみようとハリセンを握ると、やられる前にやってしまおうと攻撃してしまいたくなるんだよ」ってさ。あいつ意外と血の気多いよな~」
「そろそろその話終わってもらっていい!?早くあいつ始末してしまいたいんだけど!」

いつまでも終わらない話にしびれを切らした加州が、とうとう大きな声を上げた。

「いいけどよ、あの虫どこいったんだ?」
「えっ、あれ、どこいった?」

同田貫の言葉に加州が慌てて先程“奴”がいた場所を見たが、そこには既に何もいなかった。

「いなくなったんだからもういいんじゃねえか?」
「いい訳ないじゃん、どこいったのか探さないと」

加州達はある程度の距離を保ちながら、主に床に転がっている空き箱の影などを中心に、“奴”がどこにあるのか探し始めた。

「あ」
「安定いた!?」
「あそこ」

 大和守が声を上げたので加州が尋ねると、彼は天井を指さした。
するとそこにはいつのまにか天井に上っていた“奴”がいた。

「ええ……あれじゃあとどかないじゃん。御手杵届く?」
「ああ、余裕だぜ」
「じゃあお願い、絶対、一発で仕留めてよね!」
「おう」

御手杵は“奴”がいる下に回り込むと、静かにお菓子の筒を構えて狙いを定めた。

……この時誰しもが忘れていた。
“奴”は飛ぶ事ができると言う事を。
そしてそれは何の前触れも無く起こると言う事を。

「突く!!」

勢いよく突き出された筒は、確かに“奴”がいた所を的確に突いた。
しかしそのほんの少し前に“奴”は黒い羽を広げて、不規則に飛び始めたのだ。

「ああああああ!!無理無理無理無理!!」
「ちょ、清光痛い、痛いって!!」
「うわっ」
「おいこっちに寄りかかってくるな。……うおっ!?」

 加州は再び悲鳴を上げながら大和守に抱きつき、彼はその力の強さで痛みに顔を歪めて、抱き着いてくる加州の背中をばしばしと叩いた。
一方、一番“奴”に近い所にいた御手杵は、羽音を立てながら自分の顔めがけて飛んできた“奴”をとっさに避けた為、同田貫に思い切りもたれかかる事になり、彼は傾いた彼の重い身体を支えないといけなくなった。
とっさに支えていても姿勢が悪かったらしく、同田貫は踏ん張りが効かず、その場に御手杵の下敷きになって床に倒れてしまった。

「失礼する。御手杵、昨日俺が持っていた本そちらに忘れていないかn……うわあっ!?」

 飛び回る“奴”は散々四振りを攪乱した後、運悪く部屋に入ってきた山姥切に向かって飛んできた。
部屋に入った瞬間に眼前に飛び込んできた“奴”に、彼は咄嗟の判断で思い切り上体を反らして、“奴”からの奇襲を見事回避したが、反った状態のまま体勢を崩して、廊下に仰向けに倒れて後頭部を強かに打ってしまった。

「ちょっといつまでしがみついてるのさ清光!山姥切大丈夫?同田貫も下敷きになってるし」
「いつまで寝っ転がってんだ御手杵!重いから早くどけ!!」

御手杵の巨体の下敷きになった同田貫は、自分の上に乗っかっている彼の脇腹をばしばし叩いて、彼に早くどくように促した。

「あ~……悪い同田貫、大丈夫か?」
「そんなやわじゃねえよ、ったく。おい、そっちは大丈夫か」

御手杵は同田貫に謝りながらようやく起き上がり、彼は悪態をつきながら御手杵の下からはい出した。

「……」
「えっと、山姥切?」
「大丈夫?」

仰向けに転がったまま何も言わない山姥切に、ようやく復活した加州と、加州を自分から引き剥がすことに成功した大和守が、恐る恐る近づいて声を掛けた。

「……ぶった切る!!」
「あんたもかよ!!」

いきなり起き上がったと思ったら、山姥切は自分の刀を取り出して、飛び回る“奴”に向かって振り回し始めた。
まさか彼まで他の連中と同じ事をするとは思わなかった加州は、思わず叫ぶように突っ込んた。


その後加州と大和守で暴れる山姥切を取り押さえ、“奴”は大騒ぎしている面子を余所に、森の中へ姿を消したのだった。

2021年2月14日 Pixivにて投稿

送信中です

×

※コメントは最大500文字、5回まで送信できます

送信中です送信しました!

コメント