「却下だ」
「やはりそうかね」
テーブルでいつものように作業していると、同じ図書当番である南海太郎朝尊と肥前忠広がやって来て、南海から本の題名がぎっしりと書かれたリストを手渡された。
南海に渡されたリストに目を通した大倶利伽羅はばっさりと切り捨て、南海は分かっていた風に特に落胆する事もなく頷いた。
「さすがに多すぎる。検討はするが、全部手に入れようとしたら今年の本を買う予算が無くなる」
「入り口のあの箱に入りきらなかったから、駄目元で直接渡しに来たのだがね」
「だから言ったろ先生。こんな専門的な本、先生位しか読まねえし手に入らねえよ。多くても数冊が限界だ」
肥前が南海の後ろから、テーブルに置かれた彼の希望リストの文字の羅列を見ながら、呆れた様に溜息をついた。
肥前と南海は、先日この本丸に指令が来た特命調査文久土佐藩にて、先行調査員を任されていた刀達だ。
数カ月前の聚楽第に引き続き連日の出陣の結果、無事優判定を貰えた事でこの本丸に配属された。
ちょうど本が増えて去年の大掃除が大変だった為、本丸に慣れる為の一環として、人手が欲しかった図書当番に割り当てられる事になった。
南海は記憶力に優れて本を探すのが上手く、肥前は粗雑な口調とは対照に本の扱いが丁寧で、二振り共新刃ながらも本棚の整理に大いに役立っている。
閑話休題。
南海は刀剣博士を名乗っているだけあって、知識に貪欲な一面があり、図書室の歴史や民俗学などの専門書を図書室から借りたり、当番の日に一日中図書室で本を読みふけっている姿がよく見られている。
しかしここに配属されてから間もないにも関わらず、図書室の彼が専門として読んでいる類の本は粗方読み終えてしまったらしく、最近は読みたい本の画像を見せては図書室に置いてもらえないかと、大倶利伽羅に頼むようになっていた。
肥前がいる時は彼が止めてくれる事もあるが、ほとんど意味を為していなかった。
「肥前の~、南海先生~、長谷部が呼んどるき。支度したらゲートへ来とおせ」
「ああ?」
少し間延びした声が図書室の入口から聞こえてきたので、肥前が入口に足を運ぶと、今日の畑当番から戻って来た陸奥守吉行が野菜の籠を抱えて立っていた。
「てめえ陸奥守、その籠絶対図書室に入れんなよ。土が入るだろうが」
肥前が土のついた野菜の籠を見て陸奥守を咎めると、彼は豪快に笑って「わかっとるき」と言いながら、籠を入口から少し離れた場所に置いた。
「おんしゃあら、これから遠征じゃろ?そろそろ支度せんと間に合わんぜよ」
「あ?……ああ、もうそんな時間か」
陸奥守の言葉に肥前が図書室の備え付けの時計に目を遣ると、彼の言った通り、そろそろ支度しないと間に合わない時間まで迫っていた。
「おい先生!そろそろ行くぞ、先行くからな!」
「これは預かっておくから、行ってこい」
「ああ、ぜひ検討してくれ」
南海は大倶利伽羅にリストを預けると、やや早歩きで既に立ち去った肥前の後を追って、図書室から出ていった。
大倶利伽羅は渡されたリストに再度目を通すと、テーブルの引き出しから茶封筒を取り出して、その中にリストを入れて軽く封をした。

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