十六、とある本丸の連隊戦前日

刀剣乱舞合歓木本丸

 玄関の前にあるゲートへ続く石畳に打ち水をしていた加州清光は、ゲートの門が開く音に顔を上げると、遠征部隊の歌仙兼定、明石国行、鶯丸の三振りが帰って来たのが見えた。

 遠征部隊は名前の通り、遠征を活動の主体に置いている本丸の後方支援を担う部隊だ。
高練度の刀剣男士で編成されていれば、必ず六振りでなくても長期の遠征に出る事ができる。
なので遠征部隊は時として少ない隊員数で編成して部隊数を増やし、資源や小判をできるだけ多く集める事に徹していた。
加州は一旦打ち水をする手を止めて、遠征部隊隊長の歌仙に声を掛けた。

「おかえり、歌仙達」
「打ち水かい?風情を感じるね」
「そ、少しでも暑さがマシにならないかなあって。遠征はどうだった?」

歌仙は自分の両手に抱えていた箱に入っている小判を見せた。

「さすが。大成功じゃん」
「小判を集める事が目的だったからね。上手くいってよかったよ」
「歌仙はん、自分資源を倉庫に持って行くんで、先上がってもいいですか?さすがに朝からずっと遠征行ってて、もうくたくたですわ」

明石が持ち帰った資源を入れた袋を自分の前に掲げながら、空いている方の手で自分の肩を揉む仕草をした。

「分かった、じゃあここで解散しよう。資源を倉庫に保管し終わったら、二振り共明日に備えて休んでくれ」
「助かりますわ。じゃあ明日までゆっくり休ませてもらいます」
「ああ、お疲れ様」

明石は少し疲れた顔で笑うと、袋を背中に担いでそのまま倉庫の方へ歩いていった。

「やっとゆっくり茶が飲めるな。歌仙は主への報告があるだろう、その小判は俺が運んでおこう」
「ではよろしくお願いするよ」

鶯丸も歌仙から小判を入れた箱を受け取ると、先に倉庫へ向かった明石を追いかける様に去っていった。

「ただいま……戻りましたよ」
「帰ってきたさー」
「ただいまー」

 再び複数の声がして加州と歌仙が振り返ると、他の時代へ遠征に向かっていた江雪左文字と千代金丸と北谷菜切の三振りが帰って来た。
千代金丸と北谷名切は、つい先日第四部隊から遠征部隊に配属された刀達だ。
あまり激しい戦闘を好まない彼らは、第四部隊である程度の出陣や遠征の流れを掴んで練度を上げると、割と早い段階で遠征部隊への配属を希望した。
遠征部隊は所属する刀の数は第一部隊の次に少ないので、新しい刀の配属、特に初めての短刀の刀剣男士の参入に部隊の皆は喜んだ。
どんな刀でもある程度練度を上げないと、遠くの遠征には出られないので、今二振りは時折第二部隊と一緒に出陣して、練度を上げながら遠征に参加している。

「あ、江雪達もおかえり」
「おかえり。そちらも無事終わったようだね」
「ええ。無事小判も手に入れる事ができました」

歌仙達に声を掛けられて、江雪は足を止めて自分の袖に入れていた小判の袋を見せた。
江雪の口角を僅かに持ち上げるだけの微笑を見て、歌仙も満足げに頷いた。

「そちらも大成功だったようだね。資源の方はどうだい?」
「大漁だな」
「たくさん集めてきたよー」

千代金丸と北谷菜切は揃って資源を入れていた袋の中を見せた。

「へえすごいじゃん、もうすっかり遠征部隊に慣れたって感じだね」
「ああ、ここ数日での遠征で大分慣れたな」
「知らない所に行くと楽しくなってくるんだよねー」
「二振り共練度も上がってきたし、そろそろもう少し遠くの遠征に出てもいいかもしれないね」
「そうですね……ゆくゆくは二部隊で長期遠征に出られるようにしたいですからね」

嬉しそうに加州に資源の袋を見せる二振りを眺めながら、歌仙と江雪は和やかな気持ちでこれからの部隊の方針を話し合った。

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