ドレスアップ
手入れ部屋の一番奥の部屋。
単騎で敵陣に突っ込んでしまった山姥切国広が重傷を負った。
実力は充分に備わっているが、時折無茶な行動をとってしまうのは、国広の悪癖でもあった。
今は手入れを終えて意識が戻った国広は、兄弟からのお説教を受けている所だった。
「兄弟、前にも言ったよね。無茶に飛び出しちゃ駄目だって」
「う……すまない」
「そうであるぞ兄弟。兄弟だけではない、他の者達まで危険に晒す可能性だってあったのだぞ」
「……すまなかった」
普段温厚な兄弟刀の堀川国広と山伏国広も、今は真剣な顔で国広を見下ろしている。
自分でも無茶な事をした自覚がある上に、兄弟達の言葉が正しいのを分かっているので、国広は何も言い返せずにただ俯くしかできなかった。
「まあまあ兄弟達、もうその辺りでいいんじゃないかな?」
山伏と堀川の後ろから、水鏡は彼らの肩に手を置いて止めさせた。
「兄弟も今年に入ってこれで三回目、同じ内容の説教を聞いても飽きちゃうでしょ?口で反省はいくらでもできる。でも行動が伴ってないなら、反省もしてないし兄弟達の話を聞いてないも当然だ」
「なっ、ちがっ……!」
「ああ、いいんだよ兄弟。今の君に言葉は不要で無意味だ」
反論しようとする国広の肩に手を置いて、水鏡は彼に向かって笑いかけたが、その目は一切笑っていなくて冷たい光が宿っていた。
「……何度口で伝えてもちゃんと伝わらないなら、身体で分からせてあげよう」
「ま、待ってくれ兄弟!さすがにこの格好は……」
「だーいじょうぶだって。あっ、いたいた。ねえ、長義の山姥切さーん!」
「な、にかな……水鏡、偽物くんのその格好はどうしたんだ」
廊下を歩いていた山姥切長義は、後ろから水鏡に声を掛けられて振り向くと、目に飛び込んで来た光景に目を剥いた。
いつも被っている布はどこにもなく、濃緑のベストを着用していて、どこかの貴族を連想させるような洋装で、目元は珍しくうっすらと化粧されている。
普段そのような服装を着ない国広は、恥ずかしさに頬を真っ赤に染めて、山姥切から目を逸らしていた。
「兄弟がまた無茶に飛び出して危ない事になったのが今年でもう三回目だから、罰として徹底的に着飾らせて、同じ部隊の仲間に謝罪行脚やらせてるんだ。どう?うちの山姥切、すごく綺麗になったでしょ?化粧は加州に手伝ってもらったんだ」
「うっ……ふふっ、な、中々似合ってるじゃないか……」
顔を逸らして笑っている山姥切を見て、国広は「ガーン!」と言わんばかりに顔を青くして、すっかりしょぼくれて俯いた。
「や、山姥切……やはり俺なんかがこのような服装など……」
「そうやって背中を丸くしているから似合わなく見えるんだ。折角みんなに着飾ってもらったんだ。もっと堂々とするべきだ、よっ!」
「うっ……!」
そう言って山姥切は、丸まっている国広の背中を思い切り叩いた。
「水鏡。次に偽物くんが無茶をしたら、ぜひ俺も呼んでくれ」
「ほんと?楽しみだなあ!次やったら京極くんみたいな衣装着せて、女の子みたいにしようって思ってるんだ」
「それは中々楽しそうだね。衣装の色は青にしよう」
「いいね、そうしよう!絶対似合う!」
「なっ……き、兄弟!本歌!」
次に自分が無茶をした時の話に花を咲かせ始めたので、国広が抗議の声をあげると、山姥切はスッと表情を冷たくして国広を見据えた。
「それが嫌なら今後無茶な行動は慎むんだね偽物くん。無闇に突っ込んで倒れたお前を助ける仲間達の事も考えろ」
「……すまなかった」
国広は今度こそ、しっかりと彼に頭を下げて謝った。

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