この話は奈良の薬師寺の2024年7月頭に行われた、「見どころ学べる!目で観る刀の教科書展ー噂の刀展Ⅴー」に行ってきて、展示内容がとても良かったので、その勢いで書いた話です。
ここから先は、私が薬師寺に行った時の感想です。
長いので読み飛ばしてもらって構いません。
私が行ったのは平日の午前だったので、予想よりも人が少なく、あまり待たずに中に入る事ができました。
薬師寺に着いた時は雨音が聞こえないくらいの優しい雨が降っていて、屋根から伝って落ちる水滴だけがパチャパチャと鳴っているだけだったので、そこまで土砂降りではありませんでした。
展示会場はそこまで大きくありませんでしたが、展示されている刀剣の数がとにかく多くて、一ケースに五振りあるケースもあったりと、かなり見ごたえのあるラインナップでした。
できるだけ止まらずに見ないといけなかったので、流し見に近い状態で鑑賞した刀もありましたが、とにかくどれも「すごい」の連続で、いろんな情報を頭に大量にぶちこまれた気分で、一振り一振りの細かい記憶のほとんどが吹っ飛んでしまいました。
まず入ってすぐに刃文や地肌、沸や匂いの説明がされていて、それぞれにその典型的な刀が展示されていて、ルーペも設置されていて分かりやすかったです。
特に地鉄の柾目肌、杢目肌(板目だったかもしれません)、綾杉肌の刀の違いがとても分かりやすかったです。
簾刃の刃文はほぼ見た事がなかったので、見ていて面白かったです。
上杉の御手選三十五腰の刀や、軍人が所有していた刀とか、昭和に作られた刀とかもあってびっくりしました。
水神切兼光とか波游ぎ兼光とか聞いた事のある有名な刀もあって、重要文化財とか重要美術品の刀剣とか、しれっととんでもない名刀が並んでいたりしたので、横からぶん殴られる様な不意打ちを何発も食らいました。
逸話で思わず足を止めたのは、不動国行という刀でした。
織田信長の「不動〇〇つくも髪 人には五郎座御座候」という歌で、不動行光と不動国行どちらの説もあると、この展示で初めて知りました。
もしゲームに実装されたら「逸話関係で不動行光と揉めたりするのかな」とか逆に信長関連の思い出話でを肴に酒を飲み交わしててもいいなと、解説を読みながら思いました。
江戸三作
それぞれ一振りだけでなく複数展示されていたのですが、正直茎にある銘の文字の方が印象的で、刀身自身の記憶はほとんど残っていません。
水心子と大慶に関しては同じケースで展示されている刀もあって、師弟関係にも関わらず銘の文字を見比べてみると大分違っていて面白かったです。
水心子正秀
流れるような筆跡で、細い筆で書いたみたいな銘切で、特に心の字が特徴的で印象に残りました。
刃文もゆったりと波打っていて、まるで水紋みたいでした。
大慶直胤
「ザ・彫りました!」みたいなハキハキと書かれて読みやすい漢字の銘でした。
大慶直「胤」の右下の漢字の跳ねる部分が、すごく元気良く彫られていて、めっちゃ好きでした。
刃文は細かく波打っていて、まるでフリルみたいで可愛かったです。
源清麿
まず思ったのがデカい、そして思ったよりゴツい。
そのせいか殺意増し増しの刀に見えて、初めて江雪左文字を見た時並みにキャラクターと本体とのギャップを感じました。
「穏やかな笑顔で殺意マシマシでぶった斬って来るやん」と思いました。
茎の銘は読みやすくも大慶よりやや癖のある字でしっかりと力強く彫られていて、「麿」の字がかなり縦長だったので、「清麿」が「清麻呂」にも見えました。
乱藤四郎
今回の展示の本命その一です。
数年前にネットオークションに出ていた偽物と一緒に、同じケースに折り紙つきで展示されていました。
解説には騙されて悲しい思いをして、刀剣を嫌いになって欲しくない、二つを見比べて本物を見る力をつけて欲しい(このあたりは間違って覚えているかもしれません)と書かれていました。
偽物の方
刃文はまっすぐではありましたが、どこかぼやけた印象の刃文で隣と見比べて「ん?」と感じました。
刀身は綺麗ではありましたが、実際はそう見せるために全体にくぼみを打ち込んでいたり、埋金を入れていたりしたり、錆を出す為に薬品を使ったりと、元の刀にかなり手をくわえているらしいです。
ケースの下に薬品の化学式みたいなのがありましたが、長すぎて私には分かりませんでした。
そして個人的に一番気になったのは茎で、粟田口の鎌倉時代の刀剣ならかなり古い刀剣なのに、茎のすり減り方などの劣化が少ない気がしました。
一緒についていた折り紙は、崩し字みたいなのが少なくて、現代の習字みたいな書き方で読みやすく、筆運びも昔の人っぽくない感じがしました。
あと書かれている文章の内容はいまいち分かりませんでしたが、平仮名が多すぎる気もしました。
最初から偽物として作られたとあって、それを本物と比べる為に同じケースで展示すると考えたら、この刀で本物を本物と認識できるように勉強させてもらえたと共に、偽物として沢山の人に見てもらうのと、ただの刀として誰か一人の手元にあるのと、どちらがこの刀として良かったのかとも考えました。
もし気力があればこの刀を主人公にして何かお話を書いてみたいです。
本物の方
まずパッと見た時の輝きが違いました。
金筋が反射しているのか、全体的にきらきらしていて、地鉄もきめ細かくて肌の揺らいだ複雑な模様が浮き出ている様に見えて、それらがあまり感じない偽物を比較して、「確かに打ち付けただけではこれを再現するのは無理だろうな」と思いました。
今まで鑑賞した粟田口の短刀は直刃の刀ばかりで、「ピンとした背筋みたいな刃文」のイメージが強く、この刀も鋒側は粟田口らしく一本筋が通った直刃で、茎の方に蝋燭が僅かに揺らいでいるような控えめな乱刃の刃文がありました。
ゲームで乱刃のイメージが強調されていたので、もっと分かりやすく乱れまくっているのかと思えば、本物を見ると思った以上に控えめな波紋でした。
やっぱり長く大事にされてきた刀とあって、佇まいも心なしか堂々としていて、胸を張って堂々と正座しているキャラクターの乱藤四郎が頭に浮かびました。
折り紙の方は堂々とした筆運びで書かれていて、紙の折り目も何度も開けて折りたたんでを繰り返しているのか、劣化して柔らかくなってるように見えました。
紙の変色もこっちのが濃かったです。
今回は本物を見比べる事ができましたが、何の予備知識も無くいざ偽物単体で見せられたとしたら、他の見ていた方も呟いていましたが、「これ単体だったら分からない」と思いました。
本物は「金」で偽物は「銀」ってイメージでした。
大倶利伽羅
今回見に来た展示物の本命その二です。
展示の一番最後に設置されていて、大俱利伽羅の展示ケースの近くの壁に、四枚くらいの紙で本体についてや所持していた人とかの解説がありました。
大倶利伽羅を所持していた武士や家を見ていたら、徳川家の名前があって、伊達のイメージが強かったのでびっくりしました。
思ったより太い刀身で、表にある龍の彫刻は磨上げされているので薄れていたのですが、思っていたより残っていて、「元の模様はこうかな」と想像できるくらいには残っていました。
解説に「彫刻以外にもう一つ龍がある」と知って、ケースにあった写真つきの説明を見ながら見つける事ができました。
大俱利伽羅ドリンクのパッケージにも分かりやすい写真があって、龍の彫刻の間から、龍の目みたいな小さくて丸い刃文がキョロキョロとあって、目が合うとちょっとドキッとしました。
表より裏側をじっくりと見る事ができたのですが、照明の光の加減のせいか刃文と地金の模様が曖昧に見えて、刀全体が大きく揺らいでいる炎を纏っているみたいに感じて、つい魅入ってしまってしばらく動けませんでした。
拵えも一緒のケースに展示されていて、飾り気の無いシンプルな黒塗りで、木の細かな凸凹が浮き出て見えました。
分かりやすい派手さは無かったですが、存在感があってかっこよかったです。
一緒のケースで展示されていた、細かく作られた竜の装飾が付いた笄(こうがい)も綺麗で、やや曇って見えても綺麗な金色が、長く大事にされているんだなと思えました。

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