山姥切コンビの特殊討伐任務in足利

刀剣乱舞刀剣展示感想あり短編小説

「お土産のカステラだ、みんなで食べよう。十切れあるから君達が二切れ、俺達が一切れだよ」

 翌日。
特殊討伐課において現代への任務に向かう刀は、可能な限り美味しいものをお土産として買ってくる暗黙の了解があるので、任務から無事戻った二振りは、お土産として購入したカステラを、同じ特殊討伐課の刀の水心子正秀、源清麿、鶯丸、三日月宗近と分けていた。

「わあ、ありがとう。金粉が乗ってて綺麗だね水心子」
「わ、本当だ美味しそう!……っ、ゴホン!感謝する二振り共、ありがたくいただこう」

 清麿がお礼を言いながら隣に立つ水心子にカステラを見せると、密かに甘いものが好きな彼は、カステラを見て目を輝かせた。
うっかり素で反応をしてしまった水心子は、すぐに我に返って咳ばらいで誤魔化すと、山姥切達に礼を言った。
 
「折角のカステラだ。とっておきの茶を入れてこよう」
「私も手伝おう」
「じゃあ僕は、取り分けるお皿を用意するよ」

鶯丸が給湯室へ向かうと、水心子と清麿が手伝いを名乗り出て、彼の後ろへ着いて行った。

「さて、二振り共。任務の報告がてら、旅の話を聞かせてくれ」
「いつも思うけど、側から見たらとても報告をしている様子には見えないね」
「なに、細かい事は気にするな。何をしているのかと聞かれたら、任務内容を全員で共有する為の報告会をしている、とでも言えばいい」

三日月の催促に対して、山姥切が肩をすくめながら笑って軽い皮肉を言うので、鶯丸はもっともらしい事を言いながら茶を啜った。
 
「無論、仕事である事には変わりない。報告書の提出はしてもらうが、俺は紙に書かれた文字よりも、長義と国広の口から直接話を聞きたいからな。それと皆の話を肴に茶を飲むのは、俺の楽しみなのだ」
「確かに書類を読むより頭に入って来やすいから、なんだかんだ言って、僕もこの時間が気に入っているんだよね」
「私もこの時間は好きだ。特に博物館や美術館の任務の話は、刀剣の話も聞ける事もあって、学びがある。……お茶も美味しいし」

 先程皮肉を言った山姥切含め、この時間に対して否定的な者は、ここにはいない。
息の詰まる仕事も多く、単独任務も多くて誰かが留守になる事が大半の中、こうして全員揃って土産の美味しい物を食べながら茶を飲む時間を設けられるのは珍しく、現に特殊討伐課全員が揃うのは今月で初めてだ。
皆報告会と言う名目の茶会という、この和やかなひとときを気に入っているのだ。
 
「本歌、もったいぶらずに早く話してしまおう」
「ああ……って、もうカステラ食べ終わったのか?」

隣の国広からも促されて山姥切は口を開こうとしたが、その前に彼の皿が既に空になっている事に気づいて、思わず目を丸くした。

「ああ。……美味しかったぞ?」
「もっと味わって食べればいいのに勿体無い……まあいいや。まず、足利に着いて最初に行ったのは……」
 
口の端にカステラの欠片をくっつけながら、きょとんとしている国広にやや呆れ気味の視線を向けつつ、山姥切は今回の任務の事について話し始めた。
   

「片づけを手伝ってくれて助かったぞ、国広」
「ああ。これくらいの事はするさ」 
 
 茶会がお開きになり、他の刀がそれぞれの仕事に戻った後。
急ぎの仕事が無くて手が空いていた三日月と国広は、先程使った皿と湯呑みを給湯室で洗っていた。 
茶会が終わったら、大抵この二振りで食器を洗って片付けるので、一つの流しを二振りで肩を並べ、湯呑みを洗うのも手慣れたものだ。
 
「あのカステラ、実に美味かった。鶯丸と事前に調べて、長義に頼んでおいた甲斐があったな」
「あんたまさか……一週間程前に真剣な顔で鶯丸とパソコンを見ていたの、その為じゃないだろうな」
「何事も息抜きは大事だからな」
「あんた達は少々休憩が多い気もするが……」
「はっはっは」

国広はジトリとした目つきで仕事をサボっていた事を咎めたが、結局三日月に笑って誤魔化されてしまった。
 
「国広よ」
「なんだ?」

ふと皿を洗う手を止めて、三日月は国広に話し掛けた。
 
「此度の足利の任務はどうだった?息抜きにはなれたか?」
「そうだな……」

国広は今回の任務の出来事を思い出して、しばらく遠くに思考を飛ばしたが、やがて彼は吐息の様な笑い声を漏らし、柔らかく微笑んだ。

「楽しかった。……本歌と共に足利に行かせてくれてありがとう、三日月」
「うむ。よきかな、よきかな」

2025年3月10日 Pixivにて投稿

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