看病の方法は図鑑に載ってない

ツイステッドワンダーランドツイステ一話完結小説

 休日の昼前の図書室、リドル・ローズハートは課題に使う本を探しに来ていた。
入学して早数カ月経ち、学園の設備の使い方や制度もある程度頭に定着して、学園生活にもある程度慣れてきた。
図書室では勉強熱心な生徒が休日でも利用している。
古い紙の匂いに包まれて、人が動く足音やページを捲る音、そしてペンを走らせる音だけが聞こえる静かな環境がリドルは好きだった。
今日は寮の自室で勉強するつもりだったが、幸いノートも持ってきていたので、この静かな場所なら勉強も捗るだろうと思い、リドルは目当ての本を見つけると近くの椅子に座って本に目を通し始めた。
 
「あ~~も~~!!陸の本熱帯魚の病気ばっか!!全然使えねー!」
「頭足類の図鑑を見ても知っている事ばかり……知りたい事が載っていませんね」

……前言撤回。
毎日のように騒ぎが起こるこのナイトレイブンカレッジでは、休日でも例外なく静かに過ごさせてはくれないらしい。
席に座ってから数分で早速出鼻を挫かれたリドルは、目を吊り上げて先程の大声の方へ顔を向けた。

 椅子に座っている筈なのに高い位置にある、揃いのターコイズブルーのベリーショートに、左右対称に生える黒いメッシュ、入学早々リドルの中で関わりたく無い生徒の上位に食い込んだ双子、ジェイド・リーチとフロイド・リーチその二人が大量の本の山に埋もれる様に本を読んでいた。
何か調べものをしているらしいが、目当ての物が見つからないらしく、彼らは持って来た本を開いて数ページ目を走らせては、近くの本の山に積み上げるのを繰り返している。
 はずれの本を引き当てる度にフロイドは悪態をつき、普段人当たりのいい笑みを絶やさないジェイドも、珍しく苛立ちを隠し切れていない。
近くにいた他の生徒達は彼らの気迫にやられて、そそくさとその場から逃げて、遠くから彼らを見ている生徒は騒がしい彼らに眉を歪めている。
すっかり集中力が削がれてしまったリドルは本を閉じると、ツカツカと彼らの元へ向かった。
 
「キミ達、図書室内では静かにするものだよ」
「……おや、ごきげんようリドルさん」
「金魚ちゃんじゃん、今遊んでる暇ねぇからまた今度にしてくんない?」
「ウギッ……」

「うんざりです」と言わんばかりに本を閉じて笑いかけるジェイドと、あからさまに不機嫌な顔で頬杖をついてリドルを睨むフロイドの、彼らのあまりにもぞんざいな態度に、実は沸点が低いリドルは限界寸前まで頭に血が一気に上った。
 
「……いいえフロイド、やはり今の僕達だけで調べるのは限界なのかもしれません。リドルさん、この前の期末テストで学年トップだった貴方を見込んで聞きたい事があるんです」
「……なんだいジェイド、手短に頼むよ」
「茹でダコを元に戻す方法を知りませんか?」
「は?……はあ……」

 真面目な顔をして尋ねるジェイドに、一体何を尋ねてくるのかと思えば、ふざけているとも捉えられる質問をされた。
リドルは怒りを通り越して、困惑やら呆れやらの複雑な感情が入り混じって、思わず長いため息をついて脱力してしまった。
 
「……帰っていいかな?ただの雑談に付き合える程、ボクも暇じゃないんだ」
「待って金魚ちゃん帰らないで!知ってんなら助けて!」

腕を掴んで必死に引き留めようとするフロイドに、リドルは目を丸くした。

 いつも自分を見かけてはちょっかいをかけて、それに怒る自分の反応を見て笑っているフロイドが自分に助けを求めるなんて、余程切羽詰まっているらしい。
リドルはほんの少しの良心からその場に思いとどまり、二人が読んでいた本に軽く目を走らせると、観賞魚の病気や海洋生物の図鑑、主にタコやイカをメインに調べていたようだった。
 
「……ペットの魚でも病気になったのかい?」
「ペットじゃねぇって、病気なのはアズール!」
「アズールが?」

 言われてみればいつも彼らの真ん中に立って歩く、胡散臭いをそのまま具現化したような銀髪の同級生、アズール・アーシェングロットの姿が見当たらなかった。
一緒にいるならリドルが双子を注意しに来た時点で、彼は人好きな笑顔でリドルに声を掛けていただろう。
まあいつも彼らが一緒にいるとは限らないのだろうが、それと何故彼らがこの本を読んでいる理由が関係しているのか、リドルには分からなかった。
  
「それでどうしてこんな本をキミ達が読んでいるのか、全く話が読めないのだけれど……」
「朝部屋に遊びに行ったら、アズールが茹でダコみたいに顔真っ赤にしてぐったりしてんの」
「……えっ?」
「声を掛けても起きねーし、陸なのにぐにゃぐにゃだし」
「海では見た事が無い症例で、対処方法が分からなかったのでここに調べに来たのですが、どうやらナイトレイブンカレッジの図書室でも茹で上がったタコを戻す方法が書かれた本は無いようで、正直手詰まりの状態なんです」
「……それで、今アズールはどうしているんだい?」
「触ったらいつもよりかなり熱かったですし、脱力した手足も引き締まるかと思い、取り敢えず冷ます為に水風呂へ入れておきました」
「なっ、病人を風呂に放置してここに来ていたのか!?看病の知識なら少しは分かるから早くアズールの所へ案内おし!」

彼らの話を聞いている内にどんどん嫌な予感がして今のアズールの状態を尋ねると、彼らの予想以上の酷い対応に、リドルは魔法ですぐさま積み上がっている本を片付けて、ウツボ二人を引き摺るようにしてオクタヴィネル寮へ走った。

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