「ごきげんようリドルさん、これから寮長会議ですか?」
数日後の放課後。
寮長会議が始まる数十分前、リドルが事前に手渡されていた資料に目を通しながら廊下を歩いていると、後ろからアズールが胡散臭い笑顔で話しかけてきた。
「アズール、風邪はもういいのかい?」
「ええ。陸の病気にかかったのは初めてでしたが、おかげ様ですっかりよくなりました」
「そう。……そういえば今日ジェイドが休みだったのだけれど、何か知らないかい?」
「ああ。実は僕の風邪がうつってしまったらしく、今度はジェイドとフロイドが風邪になってしまったんです」
「ジェイドとフロイドが?」
結局ジェイドが言った通り風邪がうつってしまったのかと思うと同時に、リドルの中では再び嫌な予感がした。
「……アズール、今二人はどうしているんだい?」
「ご安心ください。先日リドルさんが教えてくれた通り、ちゃんと水分を摂らせて部屋を暖かくしてベッドに寝かせてありますよ」
アズールは先日リドルが自分にやっていた風邪への対処法をしっかり覚えていたようだ。
どうやらリドルが頭の中で、浴槽の水で身を寄せ合って震えているウツボ二人を想像していたのを見抜かれていたらしい。
ご丁寧に双子にどんな対処をしたのかも全て説明してくれた。
「そういえば、それは何を持っているんだい?随分量があるようだけれど」
「ああ、これは購買部で買った二人に食べさせるお粥の材料です。個包装のレトルトを複数買うよりは安くなるので、自分で作ってしまおうかと」
「えっ、まさかこれ全部!?」
アズールは片手に持っていたパンパンに膨らんでいるビニール袋をリドルに見せると、中には食料がぎっしりと詰まっていた。
五人分近くはあるのではないだろうか、傍目に見ても二人分にしては多すぎる量に、リドルは目を剥いた。
「アズール。栄養をつけるのは確かに大事だけれど、風邪で熱が出ている時は食欲が落ちている事が多いんだ。いくら消化のいい食べ物でも食べ過ぎは身体に良くない」
「ええ、もちろん承知しています。ですのでいつもより少し少なめに用意しました」
「これで少なめ!?あの二人は普段そんなに食べているのかい?」
「フロイドも気分によってはそれなりに食べますが、ジェイドの方が燃費が悪い体質でして。普段はこの袋の食材くらいなら一人で食べます」
「そ、そうなんだね……」
こんな所で同級生の思わぬ一面を知って、リドルは曖昧に頷くしかできなかった。
「まあ、食べられるならいいけれど。くれぐれも無理矢理食べさせてはいけないよ」
「お気遣いありがとうございます。けれどフロイドはともかく、ジェイドの食欲は病気くらいで失せる事はありません。それこそ天地がひっくり返りでもしないと無くなりませんよ」
困惑しながらも双子の心配をして注意をしようとするリドルの顔を見て、アズールは楽し気に笑った。
2024年3月3日 Pixivにて投稿

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