虹が映り込む空色の瞳

ツイステッドワンダーランドツイステ一話完結小説

「ただいまぁ~」
「おかえりなさい、頼んだ物は買えましたか?」
「はいこれ。外ちょ~寒かった」
「ありがとうございます」
 
 オクタヴィネル寮のVIPルーム。
寮長のアズール・アーシェングロットは、書類の整理をしていた手を一旦止めて、不満顔で帰ってきたフロイドから紙袋を受けとった。

「最近また寒くなってね?気温はそうでもねえのに、風のせいで凍えるかと思ったんだけど」
「確かにそうですね。この前麓の街に行ったら、マフラーやコートを身に着けている方ばかりでしたよ」
「だからアズール、オレにおつかい押し付けたんでしょ」
「お前が昨日ラウンジの皿を割りましたからね。給料から天引きでもよかったんですよ」
「ちぇ~……オレが来月発売される新作の靴狙ってるの知ってるくせに」

不平を漏らすフロイド相手に目もくれないアズールの反応を目の当たりにして、彼はすっかり拗ねてソファにドカリと座りながら口を尖らせた。

「失礼します」

 ノックの音と共にドアが開くと、フロイドの双子の兄弟でオクタヴィネルの副寮長、ジェイド・リーチがトレイの上にポットと三つのカップを乗せて入ってきた。

「おや、フロイドも戻っていたのですね」
「うん、外ちょー寒かった。それなに?」
「ハニージンジャーティーです。ジンジャーが入っているので、温まると思いますよ」
「オレにもちょーだい」
「もちろんです。アズールも一息つかれては?」
「そうですね。書類が散らかっているので、そちらでいただきましょう」

 ジェイドに声を掛けられて時計を確認したアズールは、休憩する為に一度眼鏡を外して眉間を揉みほぐしながら、フロイドの向かいのソファに腰を下ろした。
ジェイドは持って来たトレイをローテーブルに置いてフロイドの隣に座ると、慣れた手つきでカップに紅茶を注いだ。
温められたポットから注がれる透明なブラウンの液体からは、ほんのりと白い湯気が立ちのぼり、同時にジンジャー特有の香りが漂ってくる。
綺麗な三等分に注がれた紅茶のカップを、ジェイドはアズールの手元に置き、もう一つをフロイドに差し出した。

「どうぞ」
「ありがとうございます」
「ありがと」

カップを受け取った二人はジェイドに礼を言うと、すぐに口をつけた。
アズールは一口飲んでから、一息ついて再度カップに口をつけたが、対してフロイドは一口飲むと残りは飲まずに、温められたカップを大きな両手で包み込んで、外で冷えた指先を温めた。
 
「外はかなり寒かったようですね」
「冬の海程寒くねえはずなのに、陸ってあったかくなったと思ったら急に寒くなるから、余計寒く感じるんだよなあ。あとウミウマくんの店、暖房入ってたから余計に外寒かった」
「確かにこの時期の陸の温度差はまだ僕も慣れませんね。そういえば昨日母さんから電話があって、家から数キロ北の方の海面はもう流氷で覆われたそうですよ」
「え、今年流氷来るの早くね?もう海凍ってんの?」

 彼らの出身である珊瑚の海の北側は、冬になると流氷で覆われる。
ウィンターホリデーではその流氷が原因で帰れないので、春になって流氷が溶けだした頃に帰省するのだ。
しかし今年は例年より流氷が来るのが早いらしい、フロイドはジェイドの言葉に目を丸くした。
 
「週末は更に冷え込むみたいなので、僕達の家も流氷に覆われるのも時間の問題でしょうね」
「え~まだ寒くなんの?ちょー萎えるんだけど……あ」

フロイドは不満を隠そうともせずに、顔を顰めて紅茶に口をつけると、何か思い出したように顔を上げた。
 
「どうしました?フロイド」
「そういえばさ。流氷がそこまで来てるんなら、そろそろ『あれ』が見れんじゃね?」 
「『あれ』……ですか?」

フロイドの指す『あれ』が分からないジェイドは、紅茶を飲もうとした手を止めて首を傾げた。
 
「ほら、エレメンタリースクールの最後の学年の時に行ったじゃん。ジェイドが尾鰭巻き込まれかけてさ、結構大変だったやつ」
「……ああ!『あれ』ですね。確かにこの寒さなら、そろそろ見れる時期でしょうね」
「なんですか?『あれ』って」

思い出したジェイドがフロイドと思い出話をし始めたので、話が分からないアズールが素直に尋ねると、二人は幼いいたずらっ子の様にニッと笑った。

「僕たちの秘密の遊び場ですよ」
「アズールも気にいると思うよ」

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