「あれ、ランタン。……だよね?」
双子と別れて再び廊下を歩いていると、今度は一匹の赤い半透明の魚がどこからともなくやって来て、スレイドの周りを泳ぎ始めた。
深海と陸では見え方が違うので、最初は何か分からなかったが、うっすらと向こう側が透けているヒレの形に見覚えがあったので、彼が足を止めてその魚の名前を呼ぶと、正解だと言わんばかりに円を描くように宙を泳いだ。
ガイドは「自立する疑似餌(オート・デコイ)」という、バイトのユニーク魔法で作られた二匹の魚の内の一匹だ。
青い魚はガイド、赤い魚はランタンと名付けられ、この二匹を利用して主に何かを探す事に利用している。
ランタンがここにやって来たという事は、彼がスレイドを探しているという意味だった。
「バイトが探してるの?……じゃあ待ってた方がいっか」
下手に動くよりは待った方がいいと判断したスレイドは、廊下の窓枠に腰かけて足をぶらぶらさせたり、ランタンを突っついたりして遊びながら、彼が来るのを待った。
しばらくそうしていると、ガイドを連れたバイトが、若干ぎこちない足取りで小走りでやって来た。
「やあっと見つけた、どこふらついてたんだよ。放課後は部活の見学に行くってお前が言ったのに、もう終わる時間になっちまったじゃねえか。まだ二本足慣れてねえのに走らすなよ」
「ふふ、ごめんごめん。ちょっと面白そうな奴らに会ってさ」
バイトが息を切らしながら、魔法を解除してガイドとランタンを消すと、少し恨めしそうな目で窓枠から降りたスレイドを睨み上げた。
睨まれたスレイドは、どこ吹く風という感じに微笑みながら軽く謝り、バイトは呆れたように腰に手を当てて長い溜息をついた。
「はあ……ま~たお前は変な事やらかしたのか?誰なんだよそいつら」
「自称俺の兄弟を名乗る双子」
「なんだそりゃ」
「クスクス……それがさ……」
スレイドが事の経緯を話すと、腕を組みながら話を聞いていたバイトは、怪訝な顔からどんどん面白そうな物を見つけたみたいに、口の端を吊り上げた。
「ふーん?そんなに面白そうな奴らだったんだな。そこまで楽しそうなお前、久しぶりだぜ」
「久しぶりにちょっと面白かった。あいつらと鬼ごっこしたら楽しいかもね」
「ひひっ。お前にそこまで言わせるなんて、そいつらかなりやるな」
「うん。次はバイトも一緒に遊ぼうよ」
「じゃあ、また面白い遊び方考えてくれよな」
「もちろん」
暗闇の海の底からやって来た人魚二人も、次の遊びに思いを馳せながら、顔を寄せあって笑いあった。

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