「よし!合格だジグボルト。体幹がよく鍛えられているから、姿勢も安定していているな」
「ふっ、若様に仕える者として当然だ!」
人魚三人から離れたセベクは、早々に飛行術の教師のバルガスに自分の飛行を見せて早速合格を貰った。
自分の体幹を褒められたセベクは、鼻を高くして胸を張った。
「では、残りの授業の時間はそこで苦戦しているスレイド、クッキーカッター、フリルの指導をしてやれ」
「はっ!?」
「大丈夫だ、お前の筋肉なら必ずあの三人を上手く飛ばせられる!じゃあ任せたぞ!」
「なっ」
突然のバルガスの指示にあっけに取られている間に、バルガスはさっさと他の生徒の所へ指導に行ってしまった。
一人取り残されたセベクはしばらく唖然としていたが、ぎこちなくバルガスに言われた三人へ顔を向けると、彼らはこれでもかという程ニッコリと満面の笑みを浮かべていた。
「よろしくね、セベちゃん!」
「よろしくセベク」
「頼んだぜ、セベク」
「はあ……不本意だが仕方ない。じゃあ、試しに箒で浮いてみろ」
セベクは頭を抱えて一度大きなため息をついて三人へ箒を乗るように指示すると、彼らは素直に指示に従った。
「……おい、ふざけてないで早く飛べ」
「ふざけてないよ、何度ジャンプしても浮かないの」
「できたらこんなに苦労してねえよ」
「身体が軽くなる感じはするんだけど、飛べそうな感じはしないのよね」
いつまでも箒に跨ってジャンプを繰り返す三人にしびれを切らしたセベクが声を掛けると、スレイドは箒に跨ったまま口を尖らせ、バイトはふてくされた様に顔を背け、スワローは苦笑いを浮かべながらジャンプをして地面に着地した。
「おい人魚!」
しばらくその場でジャンプを繰り返す三人の様子を見ていたが、セベクがまずスワローにアドバイスをするために声を掛けると、人魚三人は顔を合わせてニヤリと悪い顔を浮かべた。
「俺人魚」
「オレも人魚だ」
「ワタシも人魚よ」
「で、どの人魚?」
「うぐっ……」
セベクがいつものようにスワローの事を呼ぼうとすると、三人は面白がるようにテンポよく返事をした。
箒に跨って並んでいる三人が全員人魚である事を思い出すと、セベクは言葉を詰まらせた。
「セベちゃーん、ワタシそろそろ名前読んで欲しいなー」
「俺も名前で呼んで欲しいなー」
「人魚って呼び方だと誰を呼んでいるか分かんねえしなー」
わざと間延びした口調でからかいを込めて三人が声を掛け続けると、セベクは「ぐぬぬ……」と唸り始めた。
「「「名前で呼んで欲しいなー」」」
「結託するな人魚ども!分かったから一旦箒から降りろ!!」
ダメ押しで三人同時に声を上げると、とうとう根負けしたセベクは大声を上げた。
ひとまず一旦箒から下りた人魚三人の顔を一瞥したセベクは、頭をクールダウンさせる為に小さく咳ばらいをしてから口を開いた。
「ごほん……スワロー、貴様は箒に込める魔力が弱い。スレイドは箒に身体を密着させ過ぎだ、まず体を起こして箒に跨れ。バイトは力み過ぎだ、もっと肩の力を抜け」
「もっとやってもいいの?これくらいかな……」
スワローは箒に跨って先程よりも多くの魔力を込めると、フワリと地面から足が離れて、ゆっくりと課題の高さまで浮き上がった。
「わあ、できた!」
「スワローすごい!」
「すげえ、浮いた!」
興奮で頬を赤くさせながらパアッと表情を明るくさせたスワローを見上げて、スレイドとバイトも自分の事の様にはしゃいだ声を上げた。
「やったあ!できたよセベちゃん!」
無事地面に降り立ったスワローは、満面の笑顔でセベクに駆け寄って思い切り抱き着いた。
「わっ、抱き着くなスワロー!」
「あっはははは!」
「おい離れろ!暑苦しいぞ!」
スワローはセベクが引き剥がすまで、笑い声をあげながら彼に抱き着いて離れなかった。

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