6、「魚って、空を飛べるものなの?」

ツイステッドワンダーランド生き別れのウツボの人魚

「二人共、飛行術はまず浮かなければ話にならないぞ」

 数分後、スワローが今日の課題を合格する為にバルガスに自分の箒を見せに行っている間、スレイドとバイトは変わらず浮く気配の無い箒相手に格闘していた。
セベクも箒の跨り方や、正しい姿勢などいくつかアドバイスをしていたが、肝心の「浮く」事ができていない二人相手には、あまり意味がないものになってしまっていた。
全く浮いていないとはいえ、ずっと箒に魔力を流しているので、二人には若干の疲れが見え始めていた。

「やってるんだけどね……難しい」
「まず空中で浮くってイメージが湧かねえ」

 とうとう箒から降りた二人は、コツが全く掴めずに覇気のない不満の声を上げた。
知らない魔法にはすぐに興味を持ち、何度も試行錯誤して成功に繋げる努力ができる二人ではあるが、解決の糸口が全く見つからない事に、どうすれば上手くいくのか考えてもうまい方法が見つからない。
二人共見かけはただ拗ねた態度を取っているが、内心とても困っていた。

「人魚なのだから、海中で浮く感覚は分かるだろう」
「それは分かるけど、陸は地面を蹴っても浮かずに落ちちゃうじゃない」
「海なら基本ゆっくり落ちるけど、空中だとすげえ速さで落ちるから少し怖いしな」
「落ちる海流に巻き込まれるんだったら話は別だけどね、あっという間に深海に引きずり込まれるし」
「おいおい、お前のソレはシャレになんねえよ。まあそれを置いといても、陸と海じゃあ浮く感覚も全くの別物だろ?飛行術にに応用できるのか?」
「簡単な事だ。海中で浮く感覚を箒に乗る時、同じ様にイメージをすればいい」
「同じように?どういう事?」

予想していなかったセベクのアドバイスに、スレイドはいまいち理由が分からず首を傾げた。

「海底から水面に向かって泳ぐ時をイメージしてみろ。その時の身体が浮き上がる感覚、水の抵抗と浮力、その感覚を魔力で補うんだ」
「……ああ、なるほど。そういう事か」
「できそうな気がしてきた。バイト、もう一回やってみよう」
「ああ」

 セベクの言葉のお陰で「浮く」イメージが一気に身近になり、空中で浮こうとする抵抗感が薄らいだ二人は、今頭の中に浮かんでいるイメージを浮かべながら箒へ跨った。

「すぐに浮こうとはするな。安全に箒で浮くために必要なのはまず正しい姿勢。まずは両手でしっかりと箒を握って、足を肩幅まで広げる。背筋を伸ばして胸を張り、しっかりを前を見据えろ。そして浮くためのイメージをしながら箒に魔力を込めるんだ」

スレイドとバイトは、セベクのアドバイスを聞きながら姿勢を正し、深呼吸をしながら箒に魔力を込めた。
すると箒の周りから風が発生して、身体が軽くなったかと思うと地面から足が離れ、二人が乗っている箒はゆらゆらと時間をかけて浮かび上がった。

「でき…た、できた!」
「浮いた!」

 浮いている時間は十秒にも満たない程短い時間だったが、初めて箒に乗って浮く事ができた二人は、地面に降り立った二人は頬を赤く染めて喜んだ。

「セベク、俺浮いた!」
「さっきの見てたかセベク!オレもできたぞ!」
「うわっ、近い!そんなに迫って来るな!」

興奮した状態で駆け寄って来た二人に、セベクはタジタジになりながら二人の身体を押し返した。

「ただいま!あっ、二人共もうセベちゃんと仲良くなってる!」

セベクがようやく自分から二人を引き剥がすと、バルガスの元へ行っていたスワローが帰って来た。

「あ、おかえりスワロー」
「バルガス先生に見せて来たんだろ?どうだったんだ?」
「うん、セベちゃんのお陰でバッチリ合格だった!」

二人が結果を尋ねると、スワローは笑顔でピースマークを作った。

「二人もさっき浮いてたでしょ?遠くから見えてたよ」
「そうなの。セベクが分かりやすいイメージの仕方を教えてくれたんだ」
「「浮く」って感覚がやっと分かったぜ、次はもっと上手くできそうだ」
「スレイド、バイト。今日の課題は地面から一メートル浮いて、二十秒それをキープする事だ。高さも時間もまだまだ足りない。この授業中に必ず合格するぞ!」
「うん」
「おう!」
「二人共頑張って!」

その後セベクのアドバイスとスワローの声援を受けながら特訓した二人は、授業終了ギリギリで無事課題を合格して、セベクを押し倒す勢いで大喜びで抱き着いたのだった。

2022年6月15日 Pixivにて投稿

送信中です

×

※コメントは最大500文字、5回まで送信できます

送信中です送信しました!

コメント