8、「小さいのにすごいね、あんた」

ツイステッドワンダーランド生き別れのウツボの人魚

「クスクス……ふふふ……」
「お前まだ笑ってんのかよ、もう授業始まるぞ」

 授業開始数分前、駆け足で移動していた二人は教室の近くまで戻って来ていた。
走りながらもずっと堪えきれていない笑い声を上げているスレイドに、バイトが呆れ混じりに声を掛けると、彼は「だってさ」と言いながら口元を抑えていた手を外した。

「あのリドル先輩って人、すごい魔法使えるし、小さいのに撒いてもずっと追いかけてくるし、コロコロ表情変わってすぐ真っ赤になって怒るし、思い出したらどんどん面白くなってきちゃって。もっと鬼ごっこしたかったなあ」
「お前ああいうタイプと鬼ごっこするの好きだもんな」
「あれでフロイドくらい逃げにくそうな奴だったら最高なんだけどなあ……必死に追いかけて来る奴を、捕まえられないギリギリの距離間で逃げて、あと少しで捕まえられるって所をサッと撒いて、悔しそうにしてる顔を見るのが楽しいのに」
「趣味わり~…」

意地悪そうに口角を上げて笑うスレイドの発言に、バイトは若干遠い目をしながら乾いた笑い声を上げた。

「でも確かにあの人の魔法すごかったよな、魔法診てるのも楽しかったぜ」
「そうだよね。さすがにあの短い詠唱じゃできないけど、なんとか再現できないかな」
「あの魔法、多分ユニーク魔法だろ?オレ達がやろうとすると、とんでもなく長い詠唱になりそうだぜ?魔法を発動させる前に獲物に逃げられちまう」
「じゃあ魔方陣にしたらいいんじゃないかな。踏んだ相手に発動するような地雷式か、条件を満たしたら発動するトラップ式で」
「なるほど、だとしたらトラップ式の方がやりやすいだろうな。けどどデカい魔方陣になりそうだし、使う魔力が多すぎる」
「略せる所は略しておけばいいんじゃない?魔法を封じるだけなら首輪を掛ける必要なんてないし」

 リドルの魔法を思い出しながら、二人は彼の魔法の再現方法の案を言い合った。
時折二人が呟く魔法式の一部は、この学園の上級生でも中々習わない高度な物だったが、授業が始まる前の廊下にはほとんど人がおらず、幸運にもそれを聞いている者は誰もいなかった。
教室の入口をくぐると、思い思いに談笑する声で騒がしくはあったが、ほとんどの生徒が席についていた。
スレイド達も自分の席につくと、いつもより少し早めの手つきで教科書やインクが入った瓶を取り出して、次の授業の用意をし始めた。

「俺もあの魔法解除してみたかったなあ……バイト、ちょっとリドル先輩にあの魔法掛けられてきてよ」
「嫌に決まってんだろ。一時的でも魔法が使えないなんてごめんだぜ」
「やっぱりそう?」

スレイドのとんでもない頼み事にバイトは嫌そうに顔を歪めると、彼は特に気にした様子もなく首を傾げた。

「そりゃあそうだろ。オレにとっては死活問題だぜ?」
「まあ確かに魔法を使った遊びができなくなるのは嫌だね」
「本来遊びに使うもんじゃねえんだけどな」
「授業を始めるぞ」
「あ、やべっ」

話し込んでいたらいつの間にか授業時間が始まっていたらしく、教卓に立つ教師の存在に気づいたバイトは慌てて姿勢を正した。

「……あの金魚ちゃん。また今度会えたらあの魔法、見せてもらえないか頼んでみようかな」

頬杖をついて教師の話を聞きながら、スレイドは小さくポツリと呟いた。 
実はリドルが『金魚ちゃん』という認識は直っていなかったスレイドは、後日「リドル先輩っていう金魚ちゃん、いる?」とハーツラビュルの生徒に聞いてしまうのだった。

2022年10月26日 Pixivにて投稿

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