12、【番外編】もし生き別れていなかったら

ツイステッドワンダーランド生き別れのウツボの人魚

キノコ

「ただいま戻りました」
「ジェイドおかえり~」
「おかえりジェイド」

 学園が休みの夕方、山を愛する会の活動として近くの山に行っていたジェイドが部屋に戻ると、自分のベッドに寝転んでいるフロイドと、彼の椅子に座っているスレイドが二人で談笑をしていた。
ジェイドに気づくと、二人は話を中断して彼の方へ顔を向けた。

「スレイドも遊びに来ていたのですね」
「うん、フロイドに借りてた雑誌返しに来てた。また何か持って帰って来たの?」

ジェイドが背負っていた重いリュックを自分の机の近くに置きながらスレイドに話し掛けると、彼は椅子から立ち上がってジェイドのリュックに近づいた。

「ええ、大量ですよ」

リュックから取り出した大きな袋に入っていたのは、様々な種類の大量のキノコだった。

「げえ~またキノコ持って帰ってきたの!?土臭いからヤダって言ったじゃん!」

キノコを視界に入れた途端フロイドはあからさまに嫌そうに眉を歪めて、対してスレイドは興味津々といった様子で袋の中を覗き込んだ。

「何か面白そうなの生えてた?」
「ええ、もちろん。スレイドならこの辺りのキノコはいかがでしょう」

ジェイドは袋からいくつかのキノコを選び取って、スレイドに見せた。

「ジェイド~、スレイドまでキノコ狂いになったらどうしてくれんの」
「俺別にキノコは嫌いじゃないよ?食べるのはたまにでいいけど、薬や毒に使えるのは興味ある」
「え~スレイドのうらぎりもの~」
「別に好きとも言っていないけどね」

頬を膨らませて拗ねるフロイドを余所に、スレイドはジェイドから差し出されたキノコを受け取って、一つずつ眺め始めた。

「フロイド、そう拗ねないで。あなたには腕によりを掛けた、とびっきりのキノコ料理を作ってあげますから」
「だからキノコはやだって言ってるじゃん!」

 ギャンギャン騒ぐフロイドを面白がりながら、ジェイドは今日取って来たキノコの説明を始めた。
スレイドはそれを横目に、受け取ったキノコの検分を進めて、今度使ってみたいと思っていたキノコを手に取った。

「あ。これちょうど今度試してみようと思っていた魔法薬の材料だったんだ。少し分けて貰ってもいい?」
「もちろんです。代わりに土を落とすのを手伝ってもらえませんか?」
「いいよ」
「ではラウンジの厨房へ行きましょうか」
「うん」

 キノコを入れた袋を抱えたジェイドについて行って、スレイドはモストロラウンジの厨房へ向かった。
今日はラウンジも休業日なので、いつも客とスタッフで賑わう紳士の社交場はすっかり静まり返っている。
ジェイドは二つの籠にキノコを入れて、その内一つをスレイドに渡し、蛇口から流れる水でキノコを洗い始めた。
何度もこうして手伝いをさせられているので、スレイドもジェイドの隣に立って慣れた手つきでキノコについた土を洗い流していった。

「フロイドのキノコ嫌いも相変わらずだよね」
「フロイドもスレイド位の反応をしてくれたらいいんですけどね。フロイドにもキノコの魅力を知って欲しくて、この前ものキノコ料理をふるまったのですが、中々いい反応を貰えませんでした」
「あんなに嫌と言われても無理矢理食べさせるからだよ。フロイドが見るのも嫌がる程シイタケ嫌いになったのそのせいじゃない」

 以前ジェイドがキノコにハマったばかりの頃、ほぼ毎日食卓にキノコ料理が出てきたことがあった。
最初はフロイドも美味しそうに食べていたが、次第に飽きが来て嫌がったのに、ジェイドが無理矢理食べさせた。
その時のキノコがシイタケだったので、フロイドはすっかりシイタケが嫌いになってしまったのだ。
それでも懲りずにフロイドに毎回キノコを食べさせようとしてくる姿を見ていると、普段は大人びていて「リーチ兄」なんてクルーウェルなどに言われているけれど、案外こちらの兄の方が子供っぽい一面があるのかもしれないのではと、スレイドは密かに思っていた。

「……あれ?このキノコ見た事ない」

スレイドは今までに見た事の無いキノコを見つけて、一旦洗う手を止めてそれを手に取った。
自分の指くらいの長さで笠は細長く、そして毒々しい程真っ青な色をしていた。

「ああ!僕としたことが、すっかり忘れていました。それはぜひスレイドに見せたかったんです」

スレイドの持っているキノコを見た途端、ジェイドは若干興奮気味の口調で一歩近づいて、もう一つあったそのキノコをつまんだ。

「俺に?」
「ええ。本来なら必ず火を通して食べるキノコなのですが、実は生で食べてもおいしいらしく、正しく利用すれば薬にも使えるそうです。……試してみませんか?」

ジェイドは悪だくみをする時と同じ様に、ギザギザの歯を見せながら口角を吊り上げた。

「嫌だって言っても、どうせ他の方法で試そうとするんでしょ?いいよ、俺も気になるし」
「ふふ、そうこなくては。では僕はこれを頂きましょう」
「じゃあ俺はこれね」

スレイドとジェイドはそのキノコを同時に口を入れた。

「ジェイド~スレイド~、アズールが呼んでんだけど、って……は?」

 数時間後、アズールに呼ばれたジェイドをスレイドを探していたフロイドは、ラウンジに足を踏み入れた途端にあんぐりと口を開けた。
キッチンの入口から長い脚が二人分転がっているのが見えたのだ。
嫌な予感がして慌ててキッチンへ入ると、探していたジェイドとスレイドが倒れていた。

「っ……ジェイド!スレイド!」

 フロイドが横向きに倒れているジェイドを抱き起すと、彼は真っ赤な顔で大量の汗をかいてぐったりしていた。
近くでうつ伏せに倒れているスレイドも、同じように顔が真っ赤にして荒い息を吐いていて、額に手を当てると燃える様に熱かった。
フロイドはジェイドに視線を戻して、真っ赤になっている頬をペチペチと叩くと、彼はうっすらと目を開けて口の端を持ち上げた。

「っ……ふふふ、来てくれると思っていましたよフロイド。……さすがは僕の片割れです」
「二人共どうしたの?すげえ熱出してるじゃん!」
「ハア、ハア……ジェイドと一緒にキノコ食べたら……頭ボヤボヤしてきて……動けなくなっちゃった」

床に伏せたままのスレイドが、フロイドに顔を向けて荒い息を吐きながら事情を説明した。

「……は?」
「ふふふ……ここまで強力な症状が出るとは……思いませんでした」
「……ふ、ふふ。これを使ったら……面白い薬……できる、かもね」
「……はあ~~~」

 目を虚ろにしながら笑っている二人を見て、フロイドは長い溜息を吐いた。
そして抱き起したジェイドを床に下ろすと、すぐさまアズールが待っているVIPルームへ駆け込んだ。

「アズールー!!あのバカ二人、また変なキノコ食ってぶっ倒れたー!!」

その後、高熱を出したジェイドとスレイドは、フロイドとアズールに説教を受けながら数日に渡って看病された。

「ジェイド、この前作った痺れ薬にあのキノコを加えてアレンジしてみたんだ。一緒に試してみない?」
「それは興味深い。では早速試してみましょうか」
「……って、ああっ!二人共この前ぶっ倒れたばっかじゃん!しばらくは絶対ダメだかんね!!」
「あっ」
「おやおやフロイド。可愛い弟がせっかく作った薬を取り上げてしまうなんて、同じ兄として僕は悲しいです。しくしく」
「頑張って作ったのにー……クスン」
「二人揃って下手くそな嘘泣きしてんじゃねえよ!」

数日後。
ようやく回復したスレイドは、懲りずに新しく作った怪しい魔法薬をジェイドと試そうとして、たまたま通りかかったフロイドに止められるのだった。


___

ジェイドとスレイドはキノコや魔法薬の事で組むと、必ず好奇心が暴走する。
一緒に毒見をして共倒れをするもある。
スレイドが新しい魔法薬を作って試そうとする時、物によってはフロイドとアズールに止められるので、一切止めようとしないジェイドに真っ先に見せに行き、ジェイドはそれを密かに嬉しく思っている。
好奇心の暴走を起こす兄弟二人に、ストッパーになるフロイドは毎回苦労している。

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