13、「やっぱりこの食べ方が一番おいしいんだよね」

ツイステッドワンダーランド生き別れのウツボの人魚

「ゼー……ハー……酷い目に遭った……あれ?バイト、こっちの魚はどうしたんだ?」

悪戦苦闘しながらもようやくタコ足を飲み込めた同級生は、疲労で乱れた呼吸を整えると、バイトの近くのまな板に置いてある魚に気がついた。
 
「ああ。ホイッスルパークでたまたまやってた朝市で、店のおじさんの仕事を手伝ったお礼に貰ったんだ。傷物で売り物にならないけど、かなりおいしいみたいだぜ」
「へえ、確かにどれも新鮮で美味しそう!で、どうやって調理するつもりなんだ?」
「それがどうしようか困ってるんだよな。正直このまま齧りついてもいいんだけど」
「えっ、もったいなくね?せっかくの魚なのに」
「せめて刺身にしない?塩焼きとかでも結構変わるし」
「……お前ら、こっちの魚も狙ってるだろ」
「お腹空いてるんだよ」
「俺達お昼まだで、それでここに来たんだよ。なんか食べられる食材ないかなーってさ」
 
新鮮な魚を見ている二人を見て、明らかに狙っていると気づいたバイトが目を細めると、同級生達は開き直った。
 
「うーん、そうだな……。あっ、そういえばあんた魚捌けたよな。一緒に食べる代わりにオレに魚の捌き方を教えてくれ」
「おう!三枚おろしくらいなら教えられるから、それ教えてやるよ」
「俺も料理手伝うよ」 
「おやおや。皆さん、何やら楽しそうですね」
「「「「うわっ!?」」」」

 早速下拵えから始めようとワイワイ動き出した矢先に、突然後ろから声が降りかかり、一同は驚いて振り返った。
いつの間にキッチンに入ったのか、四人のすぐ後ろにはオクタヴィネルの副寮長、ジェイド・リーチが立っていた。

「皆さんもこれから昼食ですか?」
「ああ。朝市で貰った魚を食べようとしてたんだ。そしたらこの二人もお昼だまだだから、魚の捌き方を教えてもらう条件で一緒に料理する事になってたんだ」
「なるほど、多少傷はありますがどれも新鮮な魚ですね」
 
すると、どこからともなく地鳴りの様な低い音が鳴った。

「……お前?」
「違う違う」
「オレも違うぜ?」
「俺今タコ食べてる」
「「「「…………」」」」
「ふふふ」

一年生同士で犯人を確かめ合ったが、皆首を横に振って否定したので、全員恐る恐る目の前でただ笑っているジェイドに目を向けた。
 
「実は早朝から目当ての山に山菜を採りに行ってたので、僕も昼食がまだなんです。こちらの山菜も使って僕もご相伴に預かってもよろしいでしょうか。バイトさんには僕が魚の捌き方を教えましょう」
「わあ……!」
 
 そう言ってジェイドは大きな籠を差し出した。
籠の中には青々とした山菜がぎっしり入っていて、それを見た一年生達は歓声をあげて目を輝かせた。

「凄い量ですね!」
「これだけあれば今日の昼飯がすごく豪華になりそう。いいんですか?」
「ええ、もちろん」
「ジェイド。これ、全部食べられるの?」
「はい。今日は山菜料理をいくつか作ってみたかったので、食材になる山菜をメインに採っていたんです。全て美味しく食べられますよ」
「へえ、これ全部食べられるんだな」
「おや、ジェイド。帰っていたんですね」
「あっ、ジェイドおかえり~」

山盛りの山菜を前に全員のテンションが上がっていると、今度はアズールとフロイドがやって来た。

「あ、ウツボちゃんいいモン食ってんじゃん」
「……あげないよ?あとこれだけだし」
「一口くらいいいじゃん」
「やだ。あげない」
「ちぇ~、ケチ」
 
 スレイドは自分の好物に手を出そうとしているフロイドから遠ざけるように、未だピクピクと動いているタコを自分の元に引き寄せて、足を全て食べ終えて頭と胴体のみになったタコを、腹の部分を真ん中から真っ二つにするように噛みちぎった。
弱肉強食の海の中では特に珍しい光景では無いが、とどめを刺さずに足から食べて最後まで生かしたまま食べるスレイドの食べ方は、見ていて気分のいいものでは無い。
アズールは彼の弄ぶような食べ方を見て、思わず眉を歪めた。

「アズールとフロイドもこれから昼食ですか?」
「ええ。新メニューの試作の製作がてら、フロイドと何品か作ろうかと。あなた達もこれから昼食ですか?」
「ええ。バイトさんに魚の捌き方を教える条件に、僕の山菜とバイトさんの魚を使って、皆さんと料理を作ろうかと」
「へ~、ちょっと傷あるけど結構いい魚じゃん」

フロイドはまな板に載せられた魚のヒレをつまんで、裏返してみたり、目や鱗を眺めて魚を検分した。

「ジェイドが一緒に食べるのにこんなんじゃ足りねえでしょ。オレ冷蔵庫から他の食材持って来る」
「ついでに傷みそうな食材も整理しておきましょうか。あなた達も試食ついでに手伝ってください」
「「はい!!」」

一年生二人は、声を掛けたアズールに喜んでついて行った。
 
「なんか、すごい大人数になったな。オレ達も行くか」
「うん。いつもより美味しいのが食べられそうだね」
「ああ」
  
その後全員で用意した食材は、試食会と称した豪華な昼食になり、七人は全員で談笑しながら舌鼓を打った。

2024年5月7日 Pixivにて投稿

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