14、「気が向いたらまたやろうね」

ツイステッドワンダーランド生き別れのウツボの人魚

「あはは、またオレの勝ち!さすがに小さいウツボちゃんじゃ、同時に的二つはまだ無理かぁ」
「……むう」

 授業が終わって放課後になり、ラウンジの開店準備の為に廊下を歩いていたアズール・アーシェングロットは、聞き覚えのある無邪気な笑い声を聞いた。
声に目を向けると、そこには楽し気に笑うフロイドと小さくなったスレイドが地面に並んで座っていた。
スレイドが錬金術の事故で幼い子供に戻ってしまい、フロイドが今日一日面倒を見る事になった事はクルーウェルから知らされていた。
しかし昼休みは寮長としてこなさないといけない仕事があったせいで様子を見る事ができなかったので、一度様子を見る為に彼らに声を掛けた。

「フロイド、何をしているんですか」
「あ、アズール!」

アズールがフロイドに声を掛けると、彼は明るい表情で振り向いた。
彼の横に座っているフロイド似の小さな子供が件のスレイドのようだが、どういうわけか拗ねた様に口を尖らせて俯いていた。

「ウツボちゃんと木の葉ダーツしてたんだあ。一つの的だと全部ど真ん中に命中で引き分けばっかだから、今は二つに増やして遊んでんの」
「……ひとつなら、できたのに」
「なっ……稚魚ができるレベルの魔法じゃありませんよ!?」

 二人が遊んでいた木の葉ダーツは、柔らかい葉を木に突き刺さる程の硬度まで上げる強化魔法と、葉を飛ばす浮遊魔法を同時に使用しないといけない。
更にダーツの様な小さな的に正確に当てるには、正確な魔力のコントロールが必要になるので、とても魔法が発現して間もない位の子供が到底できる芸当ではない。
物を引き寄せる程度の浮遊魔法でも、アズールが八歳の頃にやっとできたくらいなのだ。
この学園なら一つの葉のコントロールするくらいなら初歩中の初歩のレベルだが、それでもそれなりに難易度がある魔法である事には変わりない。
それをスレイドは完璧にコントロールしてみせた。
魔法が発現したにしては幼すぎるスレイドの姿と、異常なほどの魔法の上達ぶりにアズールは目を剥いた。

「って、スレイドさんのマジカルペン、ブロット溜まってるじゃないですか!一体これでどれだけ遊んでいたんだ」

アズールがスレイドのマジカルペンに目をやると、魔法石の半分程が黒く染まっていた。

「ん~……ウツボちゃんは練習時間含めて昼休みが終わってからかな」
「それだけ魔法を使ったらブロットも溜まるだろう。もう今日のスレイドさんの魔法の使用は禁止です」
「だってさ。ウツボちゃん、今日はもう魔法はおしまい」
「あっ」

アズールのストップによって、フロイドはスレイドを腕に抱き上げて魔法を使うのを止めさせた。

「……むう」
「拗ねても駄目だからね」

フロイドは不満そうに頬を膨らませるスレイドの手から、マジカルペンを取り上げた。
マジカルペンを取られて、スレイドはフロイドを見上げて何か言いたげに口を開いたが、すぐに諦めて口をつぐんで俯いてしまった。

「ねえアズール。ウツボちゃんの世話あるから、今日のラウンジ休んでもいい?」
「そうしてやりたい所ですが、今日は団体客の予約が入っています。お前がラウンジに行っている間は、僕がVIPルームで預かりましょう」
「じゃあお願い。今ウツボちゃん歩けねえから、抱っこして運んであげて。はい」

いきなりフロイドからスレイドを渡されて、アズールは慌てて彼を受け取った。

「うわっ!ちょっ、いきなりこっちに寄越すな!……って、手足細すぎません?折れますよこれ」
「あははは!アズール、すっげ~腰引けてんじゃん」
「うるさいですよ」

 小さい子供なんて抱き上げた経験がないアズールは、子供の姿のスレイドの細い手足を見て、力加減が分からずあたふたとしていたが、彼の腰が引けた姿勢を見てフロイドは指をさして笑った。
フロイドによって知らない人に渡されたスレイドはしばらくポカンとしていたが、もぞもぞと動き始めてアズールの胸に顔を寄せて匂いを嗅ぎ始めた。

「な、いきなり匂いを嗅ぎ始めましたよ?」
「ウツボちゃん、どうしたの?」
「……いいにおい、おいしそう」
「「えっ」」
「……あっはははは!そ~だね!アズール、タコちゃんだもんね!」

スレイドの発言にアズールはフリーズして、フロイドは腹を抱えて大声で笑いだした。

「たべちゃだめ?」
「うん、アズールは食べちゃダメ」
「……むう」

スレイドはあざとく首を傾けてフロイドに尋ねたが、彼にはそれが通じずニッコリと止められたので、少しだけ拗ねて口を尖らせた。

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