「じゃあスレイドさん、何か気になる物があったら指をさしてくださいね」
「うーん……ん」
「これですね、これはツキヨタケです。ブナなどの枯れ木に生えていて、シイタケと見た目が似ている毒キノコですよ」
「ツキヨタケ……これは?」
「それはカエンタケですね。触っただけで皮膚に炎症を起こす毒キノコです」
夕食を摂り終えて、ジェイドと入浴を済ませたスレイドは、ぶかぶかで自分の膝丈まであるフロイドのTシャツを着ていた。
彼のパジャマは用意していないので、一日だけの話なのでこれでいいだろうと、フロイドがクローゼットの中から選んだものだ。
そんなスレイドは、自分の机の前に座ったジェイドの膝の上に座り、ジェイドの持っているキノコの図鑑を見ていた。
広げられた図鑑のキノコの写真で気になった物を指さし、ジェイドがそのキノコについて簡潔に解説をする。
それ以外の会話はほとんど無かったが、スレイドは見た事の無いキノコの写真に興味津々のようで、ジェイドの解説にふんふんと頷いていて、無表情ながらも楽しそうにしていた。
「ジェイド~、ウツボちゃんにキノコ教えるのやめろよ」
風呂場から出てきたフロイドが、バスタオルで髪を拭きながら出てきた。
戻って二人で何をしているのかと思えば、自分が嫌いなキノコについて話していたので、思わず顔を歪めて不機嫌顔になった。
「ウツボちゃん、それ楽しい?」
「うん」
「え~~?マジ?」
「ふふ、スレイドさんは素質がありますね」
「ぅえ~~……まあいいけど、ウツボちゃんが嫌がらない程度にしなよ?」
ジェイドに無理矢理付き合わされているのかと思えば、予想外のスレイドの反応に驚きはしたが、スレイドが楽しそうにはしているので、ジェイドに釘だけはさしておいて、フロイドはムスリと不貞腐れて自分のベッドに寝転がった。
「…………」
「ウツボちゃん、眠い?」
「……ん、んん……」
スレイドが図鑑を見始めて二、三十分後、消灯時間も近づいた頃に、スレイドはジェイドの膝の上でうつらうつらと船を漕ぎ始めた。
それに気づいたフロイドが彼に声を掛けると、スレイドは眠たげに目を擦っていた。
「おや、もうこんな時間でしたか。もう少しキノコについて話をしたかったですが、そろそろ寝るとしましょうか」
「……んん」
スレイドは半分目を閉じながら、フロイドの方に手を広げた。
「ん?」
「おや、スレイドさんはフロイドがいいみたいですね」
「あはっ、じゃあウツボちゃんこっちで寝よっか」
「ん……」
フロイドはスレイドを抱き上げると、自分のベッドに連れ込んだ。
フロイドのベッドに寝転んだスレイドは、既にほとんど夢の世界に旅立っていて、むにゃむにゃと口元を動かしている。
その口元の動きがなんだか面白くて、フロイドは痛くない程度に優しく彼の頬をつついた。
「んう」
「ふふっ、ほっぺやわらけ~」
「フロイド、明かり消しますよ。おやすみなさい」
「はぁい。おやすみジェイド」
部屋が暗くなって一足先にジェイドが眠りについたので、フロイドもスレイドと一緒にブランケットを被った。
「おやすみ、ウツボちゃん」
「ん……」
スレイドの柔らかい頬をひとしきり楽しんで、満足したフロイドは目を閉じた。

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