「バイト。三歩先、右に曲がるよ」
「ああ」
翌日の昼休み。
いつもの遮光眼鏡が無い状態で学園に復帰したバイトは、目を閉じたままスレイドの腕に掴まって、廊下を歩いていた。
障害物が多いとはいえ誰もいなかった船の墓場と違って、人通りの多い廊下は沢山の生徒が歩いているので、ぶつからないように彼らの動きに注意して歩かないといけない。
スレイドはすれ違う生徒を見ながら、バイトがバランスを崩さない程度に、左右に方向を修正しながら前に進んだ。
「それにしても眼鏡が直るのが三日後なんてな……」
「眼鏡は用意できても、視力の補正に関わる魔法に細かい調整が必要らしいからね。あの魔法に関しては医学も学んでないと習得できなさそうだから、今の俺には習得はまだ無理かな……本当すごいよねあの魔法」
「スワローの眼鏡も借りてみたけど、一人一人の視力に合うようにカスタマイズされてるらしいからな。……はあ、黒板の文字が見えねえのがもったいねえ……解説だけだと物足りねえな」
「眼鏡が戻ったらノート貸すよ」
「ああ頼む。……ああ。お前、小さくなってた間どうしてたんだよ」
「バイトの眼鏡壊したフロイドの所に世話になってたよ」
「はあ!?フロイド先輩の?」
スレイドが言った予想外の人物に、バイトは目を閉じながらも大きな声を出した。
「それ、大丈夫だったのか?」
「うん。小さくなってた時はぼんやりとしか覚えてないけど……うん、楽しかった」
「ふーん?……まあ、お前が楽しかったなら別にいいけどよ。……それで?あの後何があったんだ?」
「えっとね、まず食堂でご飯を食べて……あ」
遠くで何かを見つけたのか、歩くスピードを緩めて立ち止まった。
「どうした?」
「ちょっとね。バイト、ちょっと廊下の端で待っててくれる?」
「ああ。わかった」
スレイドはバイトを廊下の端に誘導して待たせると、遠くに見つけた「彼」に向かって駆け出した。
「フロイド」
「ん?あ、ウツボちゃんじゃん。朝いなくなってたし、身体戻ってたんだ。なんか用?」
「うん。大した事じゃないけど、あの時上手く言えなかったから」
廊下を歩いていたフロイドは、スレイドに声を掛けられて立ち止まった。
「木の葉ダツ、すごく楽しかった。今の俺だったらどれだけ的増やしてもできるから、気が向いたらまたやろうね」
「あはっ、いいよぉ。気が向いたら相手してあげる」
スレイドが挑戦的に微笑みかけると、フロイドも楽し気に笑った。
後日、木の葉ダーツで互いを的にして鋭い葉を飛ばし合い、スレイドとフロイドは服も身体もボロボロ状態で寮に帰って、アズールに叱られるのだった。
2024年8月16日 Pixivにて投稿

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