バトルサブウェイ 新トレイン試運転開始!

サブマス一話完結小説ポケモン(サブマスメイン)

「……うっ」

 ノボリが目を開けると、そこは電車の中だった。
規則正しく響くガタンゴトンという音と、それに伴う振動で揺れる吊り革、一定の間隔で窓から横切るトンネルの光、記憶が戻ってからは何度も夢に見る程焦がれていた、バトルサブウェイの車両の中だった。
ノボリは目を覚ます前の事を思い出そうとすると、ヒスイの土地に降り立った時と同じ、強い光に包まれたところで記憶が途切れている。
深く考える事を諦めたノボリは、ふと右手を包む温かさに気が付いた。

「あ……」
 
 横を見たら、そこにはずっと会いたくて堪らなかった弟のクダリが眠っていた。
真っ白のマスターコートの中は、何故かサイズの合っていない窮屈そうなシャツを身に着けていて、履いている黒いスラックスも丈が短くて、白くて細い足首が見えてしまっている。
その寝顔は記憶にあったもの全く同じで、そのあどけなさにノボリの目から涙が溢れてきた。
  
「ん……」
  
 小さな呻き声の後に瞼を震わせると、クダリはゆっくりと目を開けた。
クダリは寝ぼけまなこでしばらく辺りを見渡してから、ようやく隣に座るノボリの存在に気づくと、彼は泣いている兄を見て目を丸くした。

「ノボリ……?」
「クダリ……」
「ノボリだ……ノボリぃ……!!」
「クダリ……!」

クダリもノボリを認識すると大粒の涙を流し始め、二人はどちらからともなく強く互いを抱きしめ合った。

「ノボリ、会いたかった!……ずっと、ずっと会いたかったあ!!」
「クダリ!!……本当に、クダリなのですね!」
「夢じゃない!ノボリも本当のノボリだ!」
「ええ、ええ!わたくしノボリです!何度この日を夢に見た事か……ああ、本当に良かった!」

二人は駅に到着して、様子を見に来たてつどういん達に見つけられるまで、涙を流しながら再開を喜び合った。


 それからギアステーションは大騒ぎだった。
三日前に揃って行方不明になったサブウェイマスター両名が、車両点検後の試運転中の車両内で抱き合い、大声でわんわん泣いている姿で見つかったからだ。
そして何故かノボリのコートはボロボロで中に見た事のないパーカーを着ており、クダリはコートの下にサイズの合わない、つんつるてんの服を着ていた。
取り敢えず電車から降ろそうとしたが、二人は二度と離れないと言わんばかりに固く抱きしめ合って梃子でも動かす事ができず、結局子供のように泣き疲れて眠ってしまうまで、その場から一歩も動かす事ができなかった。
 数時間後、仮眠室で目が覚めた二人はようやく落ち着いて、隣り合うベッドに向かい合って腰かけると、まるで片割れがいなかった時間を補うかの様に、互いに今まで何があったのかを話し合った。
それぞれ行ってきた世界の事、そこで出会った人々やポケモン達の事、そしてその世界で自分はどう生きてきたのか。
互いの話に二人は驚き、笑い、時にまた涙ぐみそうになり、相手の壮大な冒険譚とも呼べる話に聞き入り、何分、何十分、何時間と話題は尽きる事は無かった。

そして一通り話し終えると、ノボリはクダリの手を取った。
  
「クダリ、わたくしここで新しく始めたいバトルがございます!」

ノボリの言葉を聞くと、クダリはしばらくきょとんとしていたが、パアッと花が咲く様な笑顔になって、ノボリの手を握り返した。
 
「ノボリ、ぼくも新しくここですっごくやりたいバトルがある!」

送信中です

×

※コメントは最大500文字、5回まで送信できます

送信中です送信しました!

コメント