十、くろのすけと鯰尾藤四郎の本丸視察

刀剣乱舞合歓木本丸

「え?本丸視察?」
「はい、そうです」

久しぶりのこんのすけの来訪に加えて、聞いたことない単語に審神者は首を傾げた。


 本丸の活動をサポートする管狐であるこんのすけは、政府からの知らせを持ってくる時にやってくる。
通常のイベントでは文を使って、ゲートの近くのポストに戦績と一緒に送られてくるのだが、特殊な演練や政府からの重要な知らせなどは、本丸の担当である政府役人の使いであるこんのすけが、役人の代理でやってくるのだ。
審神者はこの本丸の担当の役人と、定期的に連絡を取ってはいるが、審神者が政府に出向く時以外では直接会う事はない。
審神者が政府で担当に会う度に、彼はいつも疲れた顔をしているので、多くの仕事に本丸に出向く時間も余裕もないのだろう。

 そして昨日この本丸の担当から、こんのすけをそちらに向かわせると連絡が入り、その通りにやって来たこんのすけを審神者は執務室に招き、今日の近侍の鯰尾藤四郎を側に控えさせて、こんのすけを正面の座布団に座らせた。
緑茶を淹れたこんのすけ用の小さい湯呑みを勧めると、こんのすけは前足を器用に操ってその茶をこくこくと飲み始めた。
互いに息災か、今の本丸はどうかなどと、ちょっとした談笑をしてから、こんのすけは本題に入った。

「現在本丸を稼働している審神者様の多くは、二十一世紀前半……つまり平成、令和の生まれの方が多いのです。しかし、今その時代でとある疫病が流行っており、現世に一時帰還していた多くの審神者様や、その護衛についていた刀剣男士様達が、続々とその病にかかっているのです」
「疫病……確かにあったな……病気にかかった審神者達は大丈夫なのか?」
「ご安心を、その病は今の医学で治療法が見つかっていますので、発症した審神者様は、政府が管理している病院にて治療を受けております」
「そうか……良かった」

張りつめた表情で質問する審神者に、こんのすけが安心させるようにそう言うと、審神者はホッとしたように肩を撫でおろした。

「え~と、それと本丸の視察となんの関係があるんですか?」

今までこんのすけと審神者のやり取りを見ていた鯰尾が、小さく手を上げて声を上げた。

「そこで各本丸の審神者様の体調の確認と同時に、本丸での皆様の生活がどのような物か、政府から使いを出して様子を見にいく事となったのです」
「家庭訪問みたいなものか?」
「そのような解釈で大丈夫です」
「主さん、『かていほうもん』って何ですか?」
「現世での学校……寺子屋の方が分かりやすいか?その先生が自分の教え子の家を訪れて、家での様子を見に来たり、生徒の親に学校の様子を伝えたりするんだ」

聞きなれない単語に再び鯰尾が審神者に聞くと、審神者ができるだけかみ砕いて説明した。

「へえ~、面白い事するんですね」
「さっそくなのですが、明後日こちらにわたしの同僚が向かいますので、その日は出陣と遠征、出来れば万屋への外出はお控えいただきますよう、刀剣男士様達にもお伝えください」
「分かったよ」


「それでは、わたしはこれにて失礼します」

話を終えたこんのすけは、見送りに付いてきた審神者にゲートの前で一礼した後、政府へと戻っていった。

「じゃあ、鯰尾はみんなに後で視察の事を伝えておいてくれ。見られて恥ずかしい物とかは隠す時間とかいるだろうし」
「何ですか恥ずかしい物って」
「え~言わなきゃダメか……かわいいオンナノコが乗っている本、とか?男所帯だから一冊ぐらいありそうだし」
「成程、エロ本ですか」
「……そっちは知ってんだな。……うん、よろしく頼むよ]

純粋そうな目で聞く鯰尾に対して、審神者が顔を僅かに赤くしてぼかしながら具体例を言ったのに、意味が分かった鯰尾がストレートに言ってしまったので、審神者は頭を押さえて項垂れながらも、鯰尾に視察の伝令を頼んだ。

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