12、【番外編】もし生き別れていなかったら

ツイステッドワンダーランド生き別れのウツボの人魚

実験室にて

「スレイド~今日の授業のバディ、一緒に組もうよ」
「わっ、フロイド」

 錬金術の授業のバディを探していたスレイド・リーチの背中に、突然兄であるフロイド・リーチが覆い被さって来た。
ニコニコしているので今日は機嫌がいいらしい。

「いいよ、ちょうど俺もやってみたい事あったし」
「え~何すんの?」
「あのね……」

授業が始まってクルーウェルが課題の説明をし出したので、スレイドはバレないようにフロイドにこっそりと耳打ちした。
それを聞いた彼はニンマリと口角を上げて、スレイドの肩に手を回した。

「いいよぉスレイド。ちょーくだらないけど、気分いいから付き合ってあげる」
「ふふ、そうこなくっちゃ」


 授業を監督していたデイヴィス・クルーウェルは、大釜を混ぜている生徒達が妙な事をしていないか、部屋を回りながら目を光らせていた。
今日は問題児だらけの生徒の中でも頭一つ飛びぬけた問題児、『リーチ兄弟』の内二人がいる。
気分によって最高ランクの物を作りだしたかと思えば、次の瞬間には「飽きた」と言って授業を脱走するフロイド・リーチと、普段は普通に授業を受けているが、たまに気づけばとんでもない事をしているスレイド・リーチ、よりによってこの二人がバディを組んで授業を受けていた。
もう一人の兄弟であるジェイド・リーチがいればもう少し安心できるのだが、残念ながら彼は違う授業に出ている。
たまにスレイドが授業から脱線するフロイドを指摘する事があるから、そうしてくれるように祈りながら彼らがかき混ぜている大釜の方へ足を向けた。
パッと見た感じでは妙な事している様子は無い。
今日は二人共まともに授業を受ける気分の日なのだろうと、違う生徒達の様子を見に行こうとしたら、彼らの大釜から今日の授業では起こり得ない光反応が発生しているのを視界の端で捉えて、眉を吊り上げた。 

「バッドボーイ!!何をしているリーチ弟とリーチ末っ子!!」
「あ、ばれた」
「え~もうちょっとだったのに~」

目を吊り上げてこちらに迫って来るクルーウェルに気づいて、二人は残念そうな声を上げた。

「さて、言い訳を聞こうかリーチ弟とリーチ末っ子」
「だから弟じゃねえし」
「先生違う。ジェイドとフロイドが兄で、弟は俺だけ。俺が末っ子なのは合ってるけど」

クルーウェルの言葉にフロイドは不満げに弟である事を否定し、スレイドもすぐさま首を振って訂正した。

「それは今どうでもいい。俺は課題と関係ない物を作れと言った覚えはないぞ」

クルーウェルは持っている教鞭で机をピシャリと叩いた。

「課題の石はそこに作って置いてるからいいじゃん」

 フロイドが近くの机に置いてある小さな石を指さすと、クルーウェルはその内の一つを摘まみ上げた。
空の青を写した様な透明の石は、大釜の火に反射してキラキラと光り、向こう側の彼の手袋を透かして見る事ができた。

「大きさも純度も申し分ないな、それは評価してやろう。それで、俺の指示を無視して何を作っていた」
「教科書見たら出来た石を再結晶化する時に、混ぜる薬草の分量で色が変化するって書いてあったから、いろんな色の石を作ってみたいって思ったの。変な物を混ぜる事さえしなければ特に危険な事もないみたいだし。……あ~あ、あと赤色が出来れば虹の7色コンプリートだったのに」

 スレイドが残念そうに口を尖らせながら、課題の石の隣に置いてある石を指さした。
そこにはオレンジ、黄色、緑、濃紺、紫の石が並べられていた。
そのどれもが課題用の石と同じく透き通っていて、今回の課題の基準を余裕でクリアできるくらいの出来だった。

「はあ……本来だったら反省文十枚ずつだが、この石の出来に免じて今回は授業のレポートに加えて、それぞれの石を作った時の材料の分量と工程を詳しく書いたレポートの提出だけで許してやる」
「じゃあレポートちゃんと書くから、赤色も作っていい?」
「……この授業時間内だけだぞ」
「やった、ありがとう先生」

諦めた様に溜息をついたクルーウェルは、自分の前髪をかき上げると、踵を返して他の生徒の様子を見に行った。

「レポートめんどくさ~」
「フロイド、顎で肩ぐりぐりしないでよ。痛いから」
「え~……」

クルーウェルに叱られてやる気を失ったフロイドは、気だるそうな声を上げてスレイドの肩に顎を乗せた。
肩に食い込んだ顎は案外痛く、スレイドは眉間に皺を寄せてフロイドの額を痛くない程度にペシペシと叩いた。

「続きやりたいから離れてくれない?」
「やだ」
「じゃあこの状態のまま思い切りジャンプしてもいい?多分舌か唇噛むと思うけど」
「何が「じゃあ」だよ、スレイドでも絞めんぞ」
「ええ……」

脱力したフロイドはスレイドから離れようとせず、何とか離れて貰おうとスレイドが適当な冗談を言ったら、低い声でギロリと脅された。

「じゃあフロイドの分もレポート書くからさ、もう少し手伝ってよ」
「……」
「……ねえ、お兄ちゃん。お願い」

梃子でも動かない様子のフロイドに、スレイドが自分の頭を彼の頭の方へコテンと傾けてお願いすると、彼は小さく呻いて肩に顔を埋めてしまった。

「……スレイドそれわざとやってるでしょ」
「ふふ、フロイドこれに弱いでしょ?」
「はあ~……分かった、最後まで手伝ってあげる」

根負けしたフロイドは、頭を掻きながらスレイドから離れて、材料の薬草の瓶を手に取った。

「ほらスレイド、やるんだったら早くやろ~よ」
「うん」

悪態をつきながらも、何だかんだ付き合ってくれる兄に口元を綻ばせながら、スレイドは鍋をかき混ぜるための大きな木ベラを手に取った。


____

フロイドは自分なりに弟のスレイドを可愛がっていて、スレイドの「お兄ちゃん」呼びに弱い。
この世界線では意外とまともな「お兄ちゃん」をして欲しい。

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