二、厚藤四郎の本丸捜索

刀剣乱舞合歓木本丸小説

「もう、まんば君。あんな所で寝てたら危ないじゃないか、落ちたらどうするんだい?」
「む……すまない……」

 鶴丸が声を掛けても反応が無かったので、ひとまず屋根から下ろして、縁側の柱に凭れさせた。
燭台切が注意すると、返事はしていても反応は薄く、うつらうつらと船を漕いでいた。

「ああそうだ。隊長、今日の夕方出る部隊なんだけどさ、小夜の練度が秋田とだいぶ開いちまっているんだ。検非違使も出ている戦場だし、どうする?」

 厚が聞きたかった事を尋ねると、国広は少しあって僅かに目を開いた。
瞼の間から覗く翠玉は、出陣時の鋭い光とは違って、今ではとろんとしている。

「……そうだな、小夜は一旦遠征の方に行ってもらおうか……最近、出陣ばっかりだったから……宗三と江雪とで夕方からの短期遠征に出して……たまには兄弟水入らずでもいいだろう」
「そうだな、じゃあ代わりに前田を出して調整するか。ああ、あと堀川さんが布を持って来いだってさ」
「むう……いやだ」
「まあそう言ってやるなって、あと同田貫が夕方手合わせに付き合えだってさ」
「わかった……わかったから……それまで、寝かせてくれ……」

すると、自分の布を引き寄せて床に丸くなり、そのまま動かなくなった。

「……隊長さん、また寝ちゃいました」
「毎回思うが、よく会話が成立するなあ。むにゃむにゃとほとんど寝言みたいで、聞き取れないのに」
「まあ慣れだよ、案外分かりやすいし。にしても、起きたくない時に丸くなるのは大将そっくりだな」

 感心したような鶴丸に笑いながら、厚は丸くなって乱れた国広の金の髪を整えてやる。
光を反射してキラキラ光る金糸は、とても指どおりが良く、いくらでも触りたくなってしまう。
布に埋もれた顔は、気が抜けたように無防備で、起きている時より幼く見えた。

「とりあえずここだと風邪をひくし、彼の部屋に運ぼうか」
「そうだな、頼むよ燭台切さん」

燭台切に横抱きにされて、部屋に運ばれていくうちの総隊長を見て、その場にいたものは目を和ませた。

「あ~あ。今回のは本当に分かんなかったな~」
「けれど編成の相談で、いちいち総隊長殿を探すのに、毎回本丸中を歩き回るのは大変じゃないか?夕餉の時とかに聞きに行けばいいのに」
「へへっ、いいんだ」

 鶴丸の言葉に、厚は笑って返した。
その笑顔につられて、五虎退もクスリと笑う。

「厚兄さん、隊長さんを探している時、いつも楽しそうですよね」

 最初は共に同じ部隊で出陣していたが、今後の夜戦の戦場が解放される事を見越して、国広は朝から昼にかけての出陣、厚は夕方からの短刀が多く出陣する、第三部隊を任されるようになり、国広と厚が顔を合わせる機会は、めっきりと減ってしまった。
しかし、編成について聞きたい事があった時、仲間に彼の居場所を聞きながら、皆の仕事の手伝いをしながら、時に最近の彼の話を聞きながら、厚は国広を探して本丸中を歩き回る。
それは既に、この本丸の日常になっている。
 会える時間が少なくなったとしても、審神者と彼と一緒に作り上げていった、この本丸中に彼の痕跡がある。
だから厚は困った様な素振りを見せながらも、いつも楽しそうに国広を探すのだ。

「隊長を探すの、オレ結構楽しみなんだ」


2019年9月19日 Pixivにて投稿

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