「あれ、厚君。どうしたんだい?」
「お、燭台切さん。隊長見てないか?」
畑の近くを歩いていると、畑当番だった燭台切光忠が、厚に声を掛けた。
今日の畑当番である彼は、色々な野菜を入れた籠を抱えて、不思議そうな顔で立っている。
その黒いジャージは、足元を中心に土で汚れていた。
「まんば君?」と聞き返した燭台切は、思い返すように顎に手を当てた。
「ううん、僕は見ていないかな。……鶴さん!まんば君見ていないかい?」
「ん?」
少し遠くで雑草を抜いていた、もう一振りの畑当番の鶴丸国永に、燭台切は声を掛けた。
大きな麦わら帽子を被った彼は、土で汚れた顔で振り向き、汚れた軍手で顔をこれ以上汚さないように、腕で汗を拭いながら立ち上がった。
パチパチと瞬く蜂蜜色の丸い両目は、帽子の影からでも光って見える。
「総隊長殿か?いや~俺は見てないなあ。今日は出陣していたんじゃなかったか?」
「それがさ、帰ってきてから見つからないんだよ。また畑の土の上とかで、寝てたりとかしてないかなあって、思って来たんだけど」
「土の上!?そんな所でも寝るのか」
予想外の場所に、鶴丸は「こりゃ驚いた」と面白そうに、顔を輝かせた。
「余り参考にならなくて、ごめんね厚君」
「いや、ありがとうな。こっち持つよ」
「いいのかい?ありがとう」
地面にあった籠を持って、厚は燭台切達と、野菜を厨の方へ運ぶのを手伝った。
畑は本丸から少し歩いた場所にある。
普通に歩いたら、十分もかからない距離で、その間は深い木々に覆われており、天気がいい日は木漏れ日が綺麗な一本道になっている。
「そう言えば、総隊長殿は最初からあんなに寝ているのか?」
「確かに、僕もそれは気になるな」
「これでも大分マシになった方なんだ。初めて一緒に出陣した日なんて、まだ眠気のコントロールも出来ずに、無理して倒れたからな」
当時を思い出して、苦笑いをする厚を見て、鶴丸の好奇心がうずいた。
「へえ、最初の頃はどんなだったんだい?」
「ちょっとだけ長くなるぜ?」
そう言いながらも、厚は最初の頃の本丸の事を話し始めた。

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