二、厚藤四郎の本丸捜索

刀剣乱舞合歓木本丸小説

「よっ…と。オレは、厚藤四郎。兄弟の中だと鎧通しに分類されるんだ」

 厚がこの本丸に顕現して最初に見たのは、眠そうに壁に寄りかかって座り込んでいる、この本丸の主だった。

「あ~……っと、あんたが大将か?大丈夫か、どこか悪いのか?」
「ああ……だいじょうぶ、ちょっと眠いだけ。今日からよろしくな、厚」
「おう、任せとけ!」

眠たげに目を擦りながら、審神者は手を差し出して笑いかけ、厚は内心審神者を心配に思いながらも、審神者の手を取って握手をした。


 涼やかな風が吹き、木々が擦れる音が絶えない。
そんな清涼な景色を厚は眺めながら、本丸を案内する審神者と一緒に縁側を歩いていた。

「さっそくで悪いんだけどさ、まんばと一緒に出陣してきて欲しいんだ」
「まんば?」
「山姥切国広。この本丸は昨日できたばっかりでね。まんば一振りで出陣してもらったんだけど、ボロボロになって帰ってきてしまって、大変だったんだ。だから、彼を隊長として一緒に戦ってほしい」
「おう、分かった。で、その隊長はどうしたんだ?」
「ん~~この辺にいると思ったんだけど……あ、いたいた。おーいまんば!新しい刀が来たぞ!」

 審神者が声を掛けた先には、木漏れ日が降り注ぐ木陰の中に一人、背中を向けて佇む人影があった。
白い布を頭からかぶって、顔は良く見えない。
しかしその影から覗く新緑の瞳は、柔らかい木漏れ日の明かりを受ける度に、きらきらと光り輝いていた。

「……新しい仲間か?」
「ああ、厚藤四郎だ。まんばを隊長にして、一緒に出陣してもらう」
「わかった」
「じゃあ後は頼んだ。執務室の荷解きが終わっていなくてな。ちゃんと指示が出せるように片付けるから、その間に自己紹介とか装備の準備でもしておいてくれ」

そう言って審神者はやや早足でその場を去り、厚は国広とその場に取り残された。
しばらく互いに見つめ合っていたが、国広が先に沈黙を破った。

「……山姥切国広だ」
「厚藤四郎だ、よろしくな隊長!」
「まだこの本丸はできたばかりなんだ。出陣の前に刀装を装備しないといけないから……案内する」
「わかった」

自己紹介も終わり、そのまま二振りは二回出陣をした。
国広の刀装が一つなくなっただけで、二振りは無傷で帰還する事が出来た。


異変が起きたのはその後だった。

「……っ」
「隊長?どうかしたか?」
「……いや、何でもない」

 戦場で拾ってきた資材を倉庫へ片付けている時、ふいに国広がふらついた。
しばらくその場で突っ立っていたが、国広は何も無いように振る舞い、着替えてくると言って部屋に戻っていった。
 報告は既に国広が済ませていたが、する事もないので何か手伝う事でもないかと、厚は審神者のいる執務室へ向かった。
障子を開けると、そこには審神者が床に転がっていた。

「大将!?」
「んん……」

厚は慌てて審神者に駆け寄り、肩を軽く揺さぶった。
すると、小さく呻きながらでも審神者は目を開けた。

「大丈夫か大将!体調でも悪いのか?」
「ああ……ちょっと眠気が酷くてな。元から良く寝る体質なんだけど、これはちょっと…厄介かもな」
「隊長を呼んでくるよ!」

 ひとまず近くにあった座布団を折って、枕代わりに審神者の頭の下に差し入れると、厚は執務室から目と鼻の先にある国広の部屋に走った。

「隊長!大将が……」

 国広の部屋に駆け込むと、彼も審神者と同じく床に倒れていた。
審神者にした時と同じ様に、声を掛けながら肩を揺さぶってみるも、瞳は固く閉じられており、審神者の様には目を覚まさない。
完全に脱力しており、厚に揺さぶられるがままだった。

「隊長まで……どうしたらいいんだ…」

動かない彼に、厚は月を見上げて途方に暮れる事しかできなかった。

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