二、厚藤四郎の本丸捜索

刀剣乱舞合歓木本丸小説

 夜が明けて審神者は目を覚ますと、枕元に目元を赤くして眠っている厚がいて、思わず声を上げた。
その声に起きた厚は、涙を滲ませながら無言で審神者の腰に抱き着いた。
顕現初日で、審神者と初期刀が倒れたのだ、不安にならない訳がない。
慌てながらも、審神者は謝りながら厚を宥めて、落ち着かせた。
ようやく落ち着いた厚は、少しむすっとした顔で、審神者から出されたお茶を啜っていた。

「すまんな厚。心配をかけて」
「いいって……本当に寝てただけなんだよな」
「ああ、もう大丈夫だ。……まんばは…起きないな」

 二人で向かい合って座っているこの部屋は国広の部屋で、その部屋の主は部屋の中心で寝かされている。
声を掛けたり、怪我でもあったのかと、審神者が手入れを施してみたが、何の反応もなく、ただ眠っていた。
特に体調不良でもなさそうで、苦しそうに息を吐いている訳でもなく、魘されている様子もない。
本当にただ熟睡しているだけの様にも見えるが、原因が分からない為どうすればいいのか分からず、彼が起きるのを待つ事しか今の二人には出来なかった。

「まんばは出陣から帰ってきて、部屋に戻ってからこうなったんだよな」
「ああ、大将が倒れていた後で、隊長を呼びにここに来たら、もうこうなってたんだ」
「ただ眠っているだけの状態なんだよな……」

審神者は考え込む様に、難しい顔で下を向きながら腕を組んだ。

「……んん」

 しばらくすると、静かな部屋に小さな声が響いた。
声の方に審神者と厚が振り向くと、国広が小さく呻いて身じろぎをしていた。
起きるかもしれないと二人が彼を覗き込むと、伏せられた睫毛がふるりと震えて、ゆるゆるとその目が開かれた。

「まんば!!」
「隊長!」
「……あるじ……あつし…」

飛びつくように枕元に迫る二人に向かって、かすれた声で二人を呼びながら、国広は呆けた顔で二、三度瞬きをした。

「大丈夫か?どこか体におかしなところはないか?」
「……いや、大丈夫そうだ……」
「隊長、何か飲んだ方がいい。起きれるか?」

厚の補助を受けながら、緩慢な動作で起き上がった国広は、彼から受け取った湯呑に入った水を飲んだ。

「まんば、起きて早々悪いんだが……何があったんだ?」
「……」

飲み終わった湯呑を置いて、しばらく何かを考える様に、国広は宙を見つめた。

「分からない。本丸に帰ってから、急に頭がふらついて瞼が重くなって……何とかして部屋に戻ったんだが……そこから記憶がない」
「ふらついてって……あの倉庫の時か」
「う~ん……熱とか、怪我でもないみたいだし……まんばももしかしたら、眠くなりやすい体質なのかな…一度担当さんに聞いてみるか」

 そうと決めた審神者は、さっそく担当に連絡を取ると、すぐさま刀剣達を連れて検査を受けるようにと言われ、二振りを連れて政府へ向かった。
簡単な問診から、何やら大掛かりな機械に入って、写真を撮ったりなど、時間をかけて隅から隅まで検査された。
検査の結果は、審神者の霊力は純度が高い分消費が早く、それを回復する為に体が睡眠を欲しているとの事だった。
どうやら初期刀である国広も、審神者の影響を強く受けた為に霊力の消費が早く、同じ様に眠りやすい体質になってしまっているらしい。

 通常刀剣男士は顕現している状態でも、審神者の霊力を使っている。
そして戦闘などなど、激しく動いたりする時は、霊力を多く消費してしまう。
その場合、大抵は疲労として現れるのが普通だが、霊力の消費が早い国広の場合、すぐに霊力が底をついて、酷い眠気として現れてしまう。
倒れたのは、二回連続で出陣した事で霊力が底をついて、起きられなくなっていたと言うのが、政府の医者の見解だ。
 唯一起きていられた厚も、国広程の審神者の影響は受けなかったが、やはり通常の刀剣男士より霊力の消費が早く、途中で昼寝を取らないと、日常に支障をきたしてしまうようだ。
そしてこれから顕現するであろう刀達も、同じ様に何らかの影響を受けてしまうだろうとも診断された。

「……ごめんな、自分の体質こんな厄介な体質のせいで、二振りにまで影響してたなんて」
「いや、あんたが悪いんじゃない」
「そうだぜ大将、頭上げてくれ」

 検査の結果を聞いて、本丸に帰った審神者は、二振りに頭を下げた。
頭を下げる審神者に、二振りは慌てて頭を上げさせた。

「……きっとこれから来る刀達も、すぐ眠くなったりとかあると思う。二振りには特に迷惑をかけるだろう。……それでもなんとかやっていけるようにするからさ、二振りには……手伝って欲しい」

再度頭を下げようとした審神者を、今度は二振りが同時に肩を押さえて止めさせた。

「もちろんだ、主」
「それが大将なんだ、それを踏まえてこれから考えていったらいいじゃないか!」

 国広の真剣な顔と、厚の笑顔に、審神者はわずかに涙を滲ませて「ありがとう」と小さな声で礼を言った。

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