一方、打刀達は屋根に布団を干す作業をしていたが、ほとんどの作業が終わり、屋根に上がる梯子を片付ける準備をしていた。
「これが終わったら昼寝でもするか」や「腹減った~」などと、打刀同士でたわいのない話をしていたら、その集団に向かって物凄い勢いで堀川が走って来た。
「く、国広!?」
「堀川?」
「その梯子待ってくださーい!!」
スピードをゆるめる事無く全力疾走で来る堀川に圧倒されて、その場にいた者達は慌てて梯子から離れ、堀川は梯子を手を使う事無く、階段でも駆け上がるかのように素早く上って行った。
「きょ~~う~だ~~い!!」
「なっ、……うわっ!?」
堀川が駆け上がった先には、梯子から降りようとしていた国広がいて、梯子を駆けあがる堀川を見てあっけに取られていたが、嫌な予感がして
すぐに慌ててその場から飛びのいて、堀川の手から逃れた。
「ど、どうしたんだ兄弟」
「そんな風にとぼけても無駄だよ兄弟、今日はその布も洗うから出しておいてって昨日言ったじゃない」
「俺の布はこれぐらい汚れているのがちょうどいいんだ。自分で洗うから別にいい」
「そんな事言って、この前五日も洗わなかったじゃない。もうそれは通用しないからね!」
「うっ」
国広が目を泳がせて反論したが、堀川の正論でバッサリと切り捨てられて、グッと言葉を詰まらせた。
そうしている間にも、堀川はじりじりと国広との距離を縮めていった。
「さあ観念してもらうよ兄弟!」
「……っ!!」
堀川が飛び掛かると、国広は布を自分の方に手繰り寄せながら回避した。
堀川が少しでも布を掴めば見事な手腕でたちまちに布は剥がされてしまうので、国広からすれば布を掴まれたら一発でアウトだ。
「こら貴様ら!せっかくの干した布団を踏んだらどうするんだ!やるなら森でやれ!」
「あっ、すみません長谷部さん!でも絶対踏まないんで大丈夫です!って、ああっ!?こんな事話している隙に……もうっ!」
堀川が屋根の下にいる長谷部からの怒鳴り声に気を取られている隙に、国広は屋根から飛び降りて駆け出していた。
堀川は小さく悪態をついて、助走をつけて国広が駆け出した方へ思い切り飛び降りた。
難なく着地した堀川を見て、国広はスピードを上げて逃げようとしたが、その先に物干し竿がある事を思い出した。
せっかく皆で洗った洗濯物を、堀川から逃げる際に引っ掻けて汚してしまうような事はしたくない。
そう思った国広は方向を変えて森の方へと走り、近くにあった木に駆けあがって枝に乗り、そのまま猿のようにうんていの要領で、枝から枝へ移動して姿を消した。
「こらっ!逃げるな兄弟!」
堀川が珍しく声を荒げながら、彼が姿を消した木の枝に乗って、そのまま次の枝へ飛び移りながら彼を追いかけていった。
その様子を一通り見ていた打刀連中は、そんな二振りを見てポカンとしていた。
彼らの追いかけっこは洗濯の日にはお決まりの出来事だが、その動きはいつも普通の追いかけっこの範疇を超えている。
短刀達がたまに追いかけっこや鬼ごっこをしているが、木々を飛び移りながらする追いかけっこをしているのはこの二振り位だ。
今剣あたりなら出来なくもないが、出来ない短刀達もいるので、短刀同士で鬼ごっこをする時は禁止されている。
なのでこの追いかけっこになると誰も付いていく事が出来ないのだ。
「……和泉守。隊長はまあ何か分かるけど、お前の相棒すげえな」
そんな様子を一番あっけにとられて見ていた和泉守は、隣にいた同田貫にポンと自分の方に手を置かれた。

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