リドル・ローズハートによる「対フロイドあだ名防止作戦」

ツイステッドワンダーランドツイステ一話完結小説

「フロイドと面白い遊びをされているそうですね」

 フロイドに追い回されて既にげんなりしていたリドルは、横から掛けられた声に顔を向けて眉を歪めた。
隣の席には朝から散々自分を追いかけまわしていた犯人そっくりの顔のクラスメイト、ジェイド・リーチがそれはもう腹が立つくらいニコニコの笑顔で座っていた。 
 
「遊びじゃないよジェイド、キミの兄弟のせいでもうクタクタだ」
「おや、前の休憩時間にフロイドが「今日の金魚ちゃん、オレの名前をそっくり言葉で呼んでくんの」と話してくれまして。てっきり二人でそういう言葉遊びをされているのかと」
「そんな訳ないじゃないか。フロイドがボクの名前をちゃんと呼ぶまで、ボクも彼の事をちゃんと名前で呼ばない事にしたんだ」
「ちなみに何故そのような事になったのかお聞きしても?」 

 それからリドルはジェイドに、何故フロイドの名前を近い響きの言葉で呼ぶようになったのか、経緯を話し始めた。
フロイドに名前を呼ばせるために大真面目な顔で話すクラスメイト相手に、ジェイドは内心腹を抱えて笑い転げてしまいたい衝動に駆られたが、そこはスマートな彼なので己の表情筋を総動員して噴き出すのを堪えた。
 
「自分の事をふざけた呼称で呼ばれる事がどれだけ不愉快か、フロイドもこれで思い知るだろう。これで多少は反省してボクの事を名前で呼ぼうと考えるさ」

 少し得意気に話すクラスメイトに、この面白い状況を長く楽しみたいジェイドは、「本人はむしろ楽しんでいる様でしたけどねえ」と思いながら、爆笑する事なく堪えきってみせた。

「ジェイド~!金魚ちゃ~ん!」

大きくて明るい声に二人が目を向けると、教室の入り口からフロイドが手を振ってやって来た。
  
「うげっ」
「おや、噂をすればですね」
「なあに?二人でなんの話してたの?」

フロイドはジェイドの机に腕を乗せて寄りかかると、コテンと首を傾げた。 
 
「フロイドとリドルさんが楽しそうな事をしている話をしていたんです」
「休憩時間にまで何の用だいフライド、そろそろ次の授業が始まるからさっさと自分の教室に戻ったらどうだい?」
「あはっ、オレ揚げられちゃったあ。だって二人に会いたかったんだもん」 
「おやおや、可愛らしい事を言ってくれますね」

目を細めて笑うフロイドに、ジェイドも口元に手を当てて微笑んだ。

「ねっ、言ったとおりでしょ?今金魚ちゃんオレの事そっくり言葉で呼んでくんの」
「本当ですね、『フロイド』と同じイントネーションで言われるとそのまま気付かずに会話を続けてしまいそうです」
「フン、嫌ならボクへの呼び方を早く改めるんだねフローライト」
「今度は石の名前になっちゃった、ジェイドとお揃い~」 
「ふふっ、『天才の石』『知性の石』ですか。確かにフロイドにピッタリの石ですね」  

ジェイドに抱きついて笑うフロイドを見て、思わぬ長期戦になりそうな予感に、リドルはもう少し言葉のストックを増やしておこうとポケットに潜ませたメモに目をやった。
 
  
「フライト」
「金魚ちゃん正解~、オレ次の授業飛行術なんだあ。良い天気だからテンション上がってるし、今日の『フライト』楽しんでくるねー」
「フルート」 
「オレ、フルートよりサックスの方が好き」 
「フリット」 
「また揚げられちゃった、金魚ちゃんって実は揚げ物好きだったりすんの?アズールも唐揚げ大好きだから話合うかもよ?」 
「腐葉土」
「……ってなにそれ?」

それからもリドルはフロイドの事を、彼の名前に似た響きの言葉で呼び続けた。
フロイドもコロコロと変わる呼び名に楽しげに言葉を返して、時にはリドルが怒ってそれをフロイドが笑ったり、時には専門的な会話に発展したりと、リドルにとっては作戦、フロイドにとっては彼が仕掛けた楽しい遊びは数日に渡って続いた。

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