「「ジャックはどっちが勝ちだと思う!?」」
「はっ!?」
セベクとスワローの不毛な言い争いは終わりを見せず、思わぬ飛び火を食らってジャックは思わずたじろいた。
「……って、お前ら。雪玉作りの「何で」勝負するのか事前に決めとけよ」
「雪玉で大事なのは大きさと頑丈さだろう!」
「綺麗に作る方が難しいもん!」
「……はあ」
何を言っても面倒な事になりそうな状態に、ジャックは目の前に迫る二人を見て、頭を抱えてため息をついた。
「「「できた!」」」
「「え?」」
ギズギズした空気を霧散する明るい三つの声に、睨み合っていたセベクとスワローが振り向くと、二人が作っていた雪玉がスレイド、バイト、エペルの手によって大きな雪だるまに変わっていた。
「丈夫な胴体と綺麗な頭だったから、バランスいい雪だるまができたね」
「おお!でっかいのができたな。エペルの肩くらいまであるんじゃねえか?」
「本当だ。こんなに大きい雪だるま作ったの、すごく久しぶり。じゃあ、あとは飾り付けだね。バイトクン、一緒に小石探してくれる?」
「ああ」
「あ、俺胴体に模様描いちゃおう」
「「……」」
自分達が作った雪玉を使って、ワイワイと楽し気に雪だるまの飾りつけをする三人に、セベクとスワローはすっかり毒気を抜かれてしまった。
「……なんだか言い争っているのが馬鹿らしくなってきた」
「……そうだね、怒鳴ってごめんねセベちゃん。……じゃあ、ワタシ達も飾り付けさせてもらおう!ほらジャックも!」
「あっ、おい!」
スワローはシュンとなってセベクに謝ると、すぐに表情を切り替えてセベクとジャックを引っ張ってエペル達に混ぜて貰いに走り出した。
「中々いいんじゃねえか?」
「うん。いいサイズの石とか葉っぱがあって良かった」
「スレイドが彫った雪だるまの模様すごいね!何か参考にしたの?」
「うん、寮の奴が私物で着てたセーターの模様を参考にしたんだ。やってて結構楽しかった」
数分後。
飾りつけが終わった雪だるまは、葉っぱの眉毛と石で笑顔に形作られ、胴体はノルディック柄の細かい模様が枝で彫られ、真ん中には服のボタン代わりに大きな石が三つ並んでいる。
その出来にジャックとエペルは満足そうに頷き、スワローは雪だるまの近くにしゃがんで、スレイドが彫った胴体の模様に釘付けになった。
「ん?……は、ふあ……はあっくしゅ!!!」
「うわっ!?」
ジャックと同じ様に満足そうにしていたセベクは、突然の鼻の違和感に堪えようとしたが耐えきれず、隣のバイトの耳元で盛大なくしゃみをした。
不意打ちで爆音のくしゃみを耳に叩き込まれて、バイトは全身を強張らせた。
「すごいくしゃみだったねセベク。……バイト?」
「う……んん?」
「あ、バイト目回してる」
セベクのくしゃみを聞いたスレイドが、彼の隣に立つバイトの肩が妙にふらついている事に気が付いて、近づいて顔を覗き込むと、バイトは目をグラグラと揺らしていて、そのままスレイドにもたれかかった。
「ズビッ、すまん。……なんだバイト、くしゃみごときで目を回したのか?」
セベクは鼻をすすると、彼のくしゃみで目を回しているバイトを見て、小馬鹿にした態度で見下ろした。
「セベクのくしゃみ、まともにくらったらバイトじゃなくてもこうなるよ」
「うっ……クジラの怒鳴り声を真正面からくらった気分だぜ……」
「大丈夫?バイト」
「あ、ああ……まだグラグラするけど、もう大丈夫だ」
身を起こして自分から離れたバイトにスレイドが様子を伺うと、彼は頭を押さえながらもしっかりと受け答えしてみせた。
「ふん、軟弱なや……はあっくしょん!!!」
「軟弱って、今のセベクに言われたくないと思う。こういうのブーメラン?って言うんじゃなかったっけ」
「ああそうだな、オレも同感だ」
再度くしゃみをしたセベクに、今度は事前に耳を塞いでいた二人はジトリとした目つきで彼を睨んだ。
「まだ寒い?セベちゃん。うーん……ねえエペル。セベちゃんが寒い外でもあったかくなれるような、たくさん動ける他の遊びってある?」
「ふふ、あるよ。せっかく六人もいるんだし雪合戦しよっか」
「おっ、いいな。やっぱ雪遊びといえば雪合戦だよな」
エペルの提案にジャックは歯を見せて強気な笑みを浮かべた。
「ユキガッセン?」
「それなあに?」
「ジャックそれ好きなのか?」
「雪玉を作って投げ合うゲームだ。一部の国では競技としてちゃんとルールがあるチーム戦のスポーツにもなってる。弟と妹相手なら多少手加減しないといけねえけど、今日はその必要はなさそうだ」
雪合戦を知らない三人がジャックに尋ねると、彼は分かりやすく説明しながらいそいそと首に巻いていたマフラーを外して、セベク達の荷物を置いていたベンチに置いた。
「ではチームを決めるか、誰が同じだろうと勝つのは僕だ!!」
「僕だって負けないよ!」
「ほら、お前達もやるぞ。やり方はやりながら教えてやる」
「お、おう……」
「わかった」
「どんな遊びか楽しみ!」
意気揚々とチーム分けをしようとする三人に、雪合戦の楽しさも激しさもまだ知らない人魚達は、それぞれの反応を見せながらその輪の中に入っていった。
「エペル強い……雪玉作るの早いし、いきなり知らない言葉喋り出したかと思ったら豹変して、何発も雪玉食らった……」
「ゼエ……ハア……もう、動けねえ……ジャックといいセベクといい、あいつらの体力どうなってんだよ……」
「……ワタシ、もうちょっと体力育成頑張ろうかな……」
十数分後。
結局体力切れで早々に脱落した人魚トリオは、ぐったりと仲良くベンチに並んで座って、未だ白熱して雪玉を投げ合っている三人を眺めていた。
三人共真っ白な雪原の上を活発に走り回り、雪玉を避けては投げるのを繰り返している。
先程まで寒そうにしていたセベクも、今は鼻頭や頬を赤く染めてエペルからの雪玉の猛攻を避けている。
三人は己の体力不足を嘆きながら、荒くなっている息を何とか整えようと何度も深呼吸をした。
2023年3月20日 Pixivにて投稿

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