10、「空からプランクトンの死骸が降ってきてるの!」

ツイステッドワンダーランド生き別れのウツボの人魚

「あっ、首が落ちてくずれちまった……難しいな」

一方スレイドとは反対側で雪だるまを作っていたバイトは、力加減を誤って崩れてしまった雪玉を見つめて、眉間にシワを寄せていた。
 
「じゃあ雪うさぎはどうかな?ほら、こうして形を整えて耳の葉っぱを付けるだけだから、雪だるまより簡単だよ」

雪玉が上手く出来なくて困っているバイトを見て、エペルが隣で雪うさぎを作って見せた。
 
「ええっと……こうか?」
「そうそう、よくできてる。これに葉っぱの耳を付けたら完成だよ」
 
彼の雪うさぎを見ながら、バイトも残ったもう一つの雪玉に他の雪を付け足して形を真似ると今度はちゃんと形になったので、エペルに葉っぱの耳を付けて貰って、バイトは無言で嬉しそうに口角を上げた。

「へえ、雪だるま以外にも色んなのがつくれるんだね。……ジャックのは何?大きいし、雪だるまにしては形が違うみたいだけど」

自分の雪だるまを作り終えて、バイトの雪うさぎを見ていたスレイドは、今度は少し離れた場所で、自分の膝くらいまである大きさの雪の塊相手に格闘しているジャックに声を掛けた。
 
「狼の雪像だ。あまり大きいのはできねえけどな」

ジャックはスレイドに声だけで返事しながら、目は作っている雪像に向けられていた。
自分で作っている内にすっかり熱中しているらしく、彼はそれっきり黙々と手や枝を使って雪を削り、狼の毛並みを再現しようとしていた。 
 
「手とか枝で削って形を整えるんだ。俺もやってみようかな」

雪像に興味を示したスレイドは、自分が作った雪だるまの元へ戻ると、その隣に地面の雪をかき集め始めた。


「……なあ、それ何作ってるんだ?」 

 自分の雪像がようやく納得できる出来まで仕上がり、ジャックはスレイドが作っている見慣れない物体が気になって、たまらず聞いてしまった。
ジャックが指をさしたスレイドの足元には、先程作った雪だるまの隣に、雪像とも言えない塊が三つ作られていた。
一つはピンポン玉くらいの大きさの球体に細い触覚を二本くっつけた様な形で、小さな丸が沢山描き込まれている。
二つ目はスライムを床に叩きつけた様な形をしており、おまけ程度に頭の所に突起が二つと目玉の様な物がある。
そして今スレイドが枝で仕上げているのは、オムライスを楕円にした様な形状で、最初にジャックは雪うさぎかと思ったが、形が整えられるにつれて、雪の塊は巨大なダンゴムシの様な形になっていった。
 
「これは爺さんの巣によく迷い込んでたギガントキプリス、こっちはかわいいけどあんまり美味しくないメンダコ、今作ってるのは俺がよく突っついて遊んでたグソクムシ」
「ああ、なるほど。深海の生き物だったのか」

スレイドの説明を聞きながら独特なチョイスだなと思いつつも、深海育ちなら仕方ないだろうとジャックは納得した。
 
「ギガントキプリス、ってのは初めて聞いたな。どんな生き物なんだ?」
「ウミホタルの仲間だよ。この細いのを動かして、くるくる回りながら泳いでるの。ここの大きい丸が目で、俺達とは桁違いの集光能力ですごくいい目を持ってるんだ。ちなみに他の小さい丸は卵だよ」
「へえ、だからこんなに沢山丸が描かれてたんだな」

「「うおおおおお!!」」

 背後からの暑苦しい声にジャックとスレイドが振り向くと、セベクとスワローが自分の膝くらいの大きさの雪玉を全力で走って転がしていた。
二人は荷物を置いていたベンチを通り過ぎると、わたわたと転がしていた雪玉を止めた。
 
「ついた!ワタシの方が速かったからワタシの勝ち!」
「ふん!僕の雪玉の方が大きいから僕の勝ちだ!」
「えー、でもワタシの雪玉の方が綺麗だよ。セベちゃんの大きいけど、ぼこぼこじゃない」
「そんなもの後でいくらでも整えれられるだろう。僕のはただ大きいだけじゃなく、最初の方は固めながら雪玉を作ったから、お前がただ大きくしただけの雪玉より頑丈だ!」
「そんなの見ただけじゃ分かんないもん!」

いつの間にかどちらの雪玉の方がいいか勝負していたらしく、両者一歩も退かず次第に激しい言い争いに発展してしまった。
 
「……最近思ったけど、スワローって思ったより負けず嫌いだよね。この前の特別補習のテスト、倍くらい点数差あったのにすごく悔しがってたし」
「一年でセベクと言い合いになった時、同じくらいの声量で張り合ってる奴って、スワロー以外で見た事ねえもんな。クジラの喧嘩並にうるせえ……」

スレイドは先日のテストで悔しい顔をするスワローを遠い目で思い出し、バイトは目の前の二人の大声に顔を歪めた。
 
「ええっと……どうしよう、かな」
「まあ、ほっとけば納まるんじゃない?バイト、そっち持って」
「え?あ、ああ」
「よいしょっと。エペル、そっちからバランス見ててくれない?」
「え?あ、うん。分かったよ」

喧嘩する二人に戸惑うエペルにスレイドは暢気に返しながら、彼は二人を巻き込んで置いてけぼりにされている大きな雪玉を運び始めた。

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