「ふんふんふん~」
「こんばんはリリアさん、なんだかご機嫌ですね」
星が見える夜になったディアソムニア寮の談話室。
リリアが談話室のソファに座って、額縁に入れた貰った絵を眺めて鼻歌を歌っていると、一年生のスワローが声を掛けて来た。
「おおスワローか。今日は嬉しいものが手に入っての、見てみるか?」
「いいんですか?」
「ああ、存分に見てくれ」
リリアは手招きしてスワローを隣に座らせると、持っていた絵を見せた。
「わあ、シルバーさんすごく綺麗!動物と一緒にお昼寝なんていいなあ」
「くふふ。そうじゃろ、そうじゃろ?」
スワローは絵を見た瞬間、細部まで細かく描かれた絵の中のシルバーの姿に目を輝かせ、その様子を見たリリアは満足気に笑った。
「リリアさん。この絵もしかして、スレイドって子が描いた絵ですよね?」
「おお!よく分かったな。大当たりじゃ」
「やっぱり!」
スワローは自分の予想が的中して、両手を合わせて破顔した。
「その子ワタシとセベちゃんの友達なんです!時々描いた絵を見せてもらってて、絵の雰囲気が似てるなあって思ってたんです。すごいなあ……スレイドの絵、見る度にどんどん上手くなってる」
「リリア、それはシルバーの絵か?」
「親父殿、その絵はどうされたのですか?」
たまたま通りすがりで二人のやり取りを聞いていた角の男、もといディアソムニアの寮長のマレウス・ドラコニアと、隣に控えていたシルバーがやって来た。
「おおマレウス、シルバー。よく描けておるじゃろ?スレイドというオクタヴィネル生が描いていた絵に一目惚れしてしまってな。彼に頼んで譲ってもらったんじゃ」
「オクタヴィネルといえば……僕も昨日、ガーゴイルをスケッチしている二年生のリーチ達にそっくりの生徒に会った。絵についてアドバイスを求められたから、いくつか助言して、他に見て欲しいガーゴイルを紹介したが。……もしかすると、同じ生徒だろうか?」
「マレウスよ。それだけしっかり会話しておいて、おぬしはそやつの名前を聞かなかったのか?」
「ああ、僕も名乗らなかったからな」
スレイドの名前を知らない素振りを見せるマレウスに、リリアが目を丸くして尋ねると、彼は表情を変える事無くさらりと言ってのけた。
「スレイドはジェイドとフロイドと容姿が似ていたので、おそらく親父殿とマレウス様が会った生徒は同じ人物だと思います」
「そういえば、この絵はシルバーが眠っている時にスケッチしたものじゃったな。昨日「帰って来るのが遅い!」とセベクがおぬしを探しに行っておったが、また動物とお昼寝しておったのじゃな」
「す、すみません。……マレウス様に呼ばれていたというのに、スレイドに起こしてもらわなければ遅れてしまう所でした」
「くふふ、よいよい。寝る子は育つ、じゃ」
シルバーが申し訳なさそうに眉尻を下げたが、リリアは気にした様子もなく、笑顔で彼の頭を撫でた。
「……そうか……アイツの名はスレイドというのか。……本人に聞く前に名を知ってしまったな」
スレイドの名前を知って、何故か落胆した様子のマレウスを見て、不思議に思ったスワローは首を傾げた。
「マレウスさん、スレイドの名前知りたくなかったんですか?」
「……いや。絵が完成したら名前を聞く事になっていたんだ。……楽しみが一つ無くなってしまったな」
「そうだったんですね……あっ!」
事情を知ったスワローは、ある事を思いついて立ち上がった。
「マレウスさん。ワタシ来週スレイドに借りてた物を返す約束をしてるから、それを返すついでによかったら一緒にスレイドに会いに行きませんか?」
「……いや。いつかまた、偶然会えた時にでも聞こうと思っていたから、会う約束をしたわけでもないんだ」
「絵が完成してても完成してなくても、ただ会いに来たって言ってもいいと思いますよ。スレイドは気にしないと思いますし、会いたいと思ってる時に会えるなら、会った方がいいと思います」
「…………」
「マレウスよ、スワローの言う通りじゃ。スレイドの事が気になっているのなら、思い切って会ってみるのも一つの手じゃぞ?」
「…………それもそうだな。……フリル、頼めるか?」
「はい!任せてください!」
スワローの提案を聞いてマレウスは、最初は俯いて難色を示したが、リリアからの後押しをも受けて、少しだけ考えた後にスレイドに会いに行く事を決意した。

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