四、同田貫正国は機嫌が悪い

刀剣乱舞合歓木本丸小説

 張りつめた空気。
乾いた空気に混じる硝煙と鉄の匂い。
遠くで聞こえる怒号や、何かがぶつかり合う様な音が、鼓膜を震わせる。
空は夜が明けたばかりで、金色に輝く日の光が暗い空を明るく照らし始めていた。
今まで出陣していた合戦場とは違う、初めて訪れた戦場に、同田貫は血が滾る思いで部隊のメンバーの後ろを歩いていた。
部隊のメンバーは部隊長の山姥切国広を始め、へし切長谷部、薬研藤四郎、鯰尾藤四郎、五虎退、そして同田貫となっている。
皆それぞれ雑談などを楽しんでいるが、それでも周囲への警戒は怠らない。
第二部隊とは違う雰囲気に、同田貫も気を引き締めて周りを警戒していた。

 ふと視界にくすんだ白がちらついた。
それに目を向けると、部隊長である国広が、列の先頭で長谷部と何か話しながら前を歩いていた。
話の内容は数メートル離れているここからは聞こえない。
大抵眠気でふらついている足元がふらついていないので、今はさほど眠くはないのだろう。
まあ、戦場で眠りこけるような事をしていたら、部隊長であろうともぶっ叩くつもりだが。
戦場で彼は一体どのように戦うのだろうか、そう思って彼を見ていると、いきなり肩を叩かれた。

「もっと肩の力抜こうぜ同田貫、そんなに気張っていると持たないぞ」

 いつの間にか横を歩いていた薬研藤四郎が、同田貫に声を掛けた。
幼い見た目にそぐわない男らしい声からは、この第一部隊で何度も戦場を駆けた経験からか、幾らか精神的余裕がある様に見えた。
第一部隊のメンバー共通で言える事だが、彼も本丸で早くに顕現した刀だ。
おまけに医学にも精通している事から、この本丸特有の刀それぞれの、眠りに関する体質を見抜くのが上手く、更に負傷した者達の応急処置も手際がいい事から、手入れ部屋の管理も任されていた。

「わりい、そう見えたか?」
「ああ、同田貫は第一部隊は初めてだったな。部隊の雰囲気はどうだ?」
「まだ戦ってねえんだ、分かる訳ねえだろ」
「はは、そりゃそうか。……隊長の事が気になるか?」

深い紫水晶の色をした目で、同田貫が考えていた事を適格に突いてくる刀に、何だか気まずくなって、思わず目を逸らしてしまった。

「……まあ、な」
「随分と熱心に隊長の事を見ていたからな」
「なあ、お前はあいつが隊長でいいと思っているのか」
「ああ、少なくとも俺はそう思ってるぜ」

同田貫の問いに、薬研は躊躇う事無く答えた。
その早さに目を丸くしていると、薬研は歯を見せながら笑い、同田貫の背中をバシッと叩いた。

「なあに、理由はすぐに分かるさ。楽しみにしててくれや」

そう言って彼は前を歩く五虎退の方へ歩いて行き、同田貫は一体何なんだと思いながら、叩かれてひりひりする背中を摩った。

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