「よし、皆準備してくれて助かった。何かがあった時には呼ぶから本丸内で待機しておいてくれ」
ひとしきり用意が完了して、救護当番の刀達は一旦この場を解散して、手入れ部屋から離れていった。
「よし、じゃあ俺も今の内に昼寝でもするか」
「薬研、いつもの大広間で昼寝をしないのか?」
そう言って薬研は部屋の奥にある小さな押入れから敷布団を出して、床に敷き始めたので、巴形が不思議に思って尋ねた。
「ああ、大将からの手入れの要請の連絡はここが一番早く届くからな。今日はここで昼寝をとらせてもらう」
そう言って薬研は敷き終わった敷布団にコロンと寝転んだ。
「そうか、では起きるまではここで番をしていよう。何かあれば起こすから、ゆっくり休むといい」
「それは助かる。何かあれば呼んでくれ」
「ああ、おやすみ」
「おやすみ」
薬研は巴形に手入れ部屋の番を任せると、布団を被ってすぐに寝息を立て始めた。
「巴形、それは何だ?」
手入れ部屋を出ようとしていた静形は、文机に置いてあるノートを巴形が持っている事に気づいて、彼の後ろに近づいた。
少し褪せた青色のノートは、薬研によってかなり使い込まれているらしく、表紙の端の部分はほんの少しめくれている。
「薬研がいつもここで書いているノートだ。珍しく文机に置きっぱなしになっているから少し気になった」
「……勝手に読んで良い物なのか?」
「特に見るなと言われた事はない。単に俺が前から気になっていたというのもあるが、薬研がいつもここで何を書いているのか読んでみたい」
静形が少し戸惑いながらやんわり止めようとするが、巴形は何のためらいもなくノートを開いた。
ノートが開かれてしまった以上、好奇心が疼いてしまった静形は、恐る恐ると巴形の後ろから薬研のノートを覗き込んだ。

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