十七、薬研藤四郎の手入れ部屋日記

刀剣乱舞合歓木本丸

 部屋を満たすツンとした薬の匂い。
常に清潔さを保たれている奥の四つの部屋ごとに敷かれた布団と、こまめに埃を落とされている枕元の黒漆塗の刀掛け。
この手入れ部屋の管理と、少し前に新設された救護当番の刀達の統括は、薬研に一任されている。
手入れ部屋の入口にある自分の文机の前に座り、机に置いてある小さな本棚から、ノートを一冊取り出してページを捲り、引き出しに入っていたボールペンで必要事項を記入し始めた。
ひとしきり書き終えて中身を見直していると、呼び出していた救護当番の刀達、巴形薙刀、静形薙刀、千代金丸、北谷菜切、治金丸が入って来た。

「おう、皆来たな。急に呼んで悪かった」
「薬研。救護当番の仕事として主から命があったと聞いたが、どうしたんだ?」

急に呼ばれた理由を知らされていなかった巴形が薬研に問うと、彼はノートを閉じて文机の上に置いて立ち上がった。

「ああ。大将から手入れ部屋をいつでも使えるようにしておくようにと言われてな。その用意を手伝って貰いたいんだ」
「今日出陣しているのは、新たな戦場へ向かった部隊のみだろう?本丸でも特に腕の立つ刀達ばかりと聞いている、余程の事はそう起こらないと思うが」

今日の出陣の予定を思い返した静形が首を傾げた。

「念には念をってやつだ。その新しい戦場では今まで出てきた敵以上に手ごわい、おそらく誰かが負傷するだろう。万が一に備えて用意するのが俺達の仕事だ、まあただの徒労に終わるのが一番いいんだがな」
「そうだな、何かあってからだと遅い。用意は念入りにしておいて損はないだろう。水でも汲んでこようかな」
「だい兄の言う通りだな。じゃあオレは水を入れる桶でも用意しようかな」
「じゃあおれは使える手拭いでも集めておこうか?」
「ああ、そうしてくれ」

琉球宝刀三振りは自分のする事を告げると、すぐさまその仕事に取り掛かり始めた。

「薬研、俺達はどうすればいい?」
「ああ、いつでもすぐに手入れが始められるように、倉庫から資源を各二千程いつでも運べるように用意しておいてくれ」
「二千か、いつもより多いな」
「足りなくなってまた取りに行かないといけなくよりは手間が省けるからな、重労働だが頼んだぜ」
「了解した」
「分かった」

薬研の指示で巴形と静形も手入れ部屋から出て行き、薬研は手入れ部屋に備えてある包帯や薬の数を確認し始めた。

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