ボドゲ部の闇のゲーム
「アズールが 首にリボンを結んで 「やああああだあああああ!!」と言う」
注意!
こちらは某声優さん三人によるゲーム動画を参考に作っております。
実際の動画の展開や台詞などを一部改変して書いておりますので、「これは駄目だ」と思った場合は即刻ブラウザバックしてください。
「あ、アズール氏乙。いい所に」
「こんにちはイデアさん」
「早速だけど、拙者達と正気を失ったUNO対決一緒にしてくれません?」
「は?」
ボードゲームの活動をしている教室の一角にて、イデア・シュラウドからの唐突の誘いに、アズール・アーシェングロットは首を傾げた。
「いや~、現在二徹中で変なスイッチが入っておりまして。同じく三徹してる同じ寮の彼と一緒に、何かトチ狂ったやり方でゲームがしたいなと思い」
「それでちょうど俺が昨日作業用BGMとして聞いていた、ゲーム実況の動画みたいにやってみようと思ったって訳」
「……なるほど、分かりませんね。帰っていいですか?」
「そんな事言わないでよアーシェングロット~、俺達そうでもしないと起きてられないんだよ~。慈悲の精神に基づいた寮長なんだから一回だけ付き合ってよ~」
アズールが踵を返そうとすると、同学年のイグニハイド生が後ろから抱き着いてきた。
普段は大人しい彼だが、寝不足で本当にテンションがおかしくなっているらしい。
これではこの前イデアから布教として貸して貰った漫画に出ていた酔っ払いだ。
このまま帰ろうとしてもしつこく絡んできそうなので、アズールはため息をつきながらずれた眼鏡を指で押し上げた。
「はあ……分かりました。じゃあ一回だけですよ」
「やった~さすが慈悲寮の寮長~!太っ腹!」
「はいはいじゃあ二人共座って、早速始めましょうぞ。……闇のゲームを!」
「……は?ただのUNOですよね」
アズールとイグニハイド生が席につくと、突然イデアが謎のポーズを決めながらUNOのカードの束を見せた。
「そう、これは闇のUNO……闇UNOだ!そしてこのゲームで負けた者は……命を失うッ!」
「ナンダッテェ!」
突然口調を変えてとんでもない事を言い出したイデアに、隣に座っていたイグニハイド生も大袈裟に肩を跳ねて見せた。
「覚悟はできてるでござるか?」
「失ってるのは正気でしょう。こんなゲームで命かける訳ないじゃないですか」
「いやいやアズール氏、このゲームそういうノリだから。いつもより大袈裟にリアクション取ってくれたら、それっぽくなるから」
「よーし、では順番を決めるぞ。心の準備はいいか?」
一人冷静にツッコミを入れたアズールに、イデアは耳打ちでアドバイスをした。
そして三人は一旦立ち上がると、ジャンケンをする為に己の拳を構えた。
「「「最初はグー、ジャンケンポン!!」」」
大声でのジャンケンの結果は、アズールとイデアはチョキで、イグニハイド生はグーを出していた。
「いしょっしゃあ!」
「な、なんなんだこれは……この空気についていけない」
「まあまあアズール氏、こういったのは早々に正気を失ってこの空気に乗っかった方が楽しいですぞ」
両手でガッツポーズを決めるイグニハイド生に、まだ正気を失っていないアズールがドン引きしていると、カードを配り始めていたイデアが彼の肩に手を置いて宥めた。
こうしてゲームは最初はイグニハイド生、次にイデア、最後にアズールの順番で進める事になった。
「さあ結果は見えている、それでは行かせて頂こう。闇のデュエル、スタート!」
そう言ってイグニハイド生が山札からめくった最初のカードは、黄色の0だった。
かくして正気を失った面々による、闇のUNOが始まったのである。
数分後、正気に戻ったら間違いなく黒歴史になりそうなノリで三人はUNOをプレイしていた。
その頃にはアズールも正気を失っており、その場の空気に飲まれて彼らと同じテンションでUNOに興じていた。
「お遊びはこれまでだ。ここで拙者は、禁断のカードを使わせてもらう!」
「禁断のカードですって、聞いた事ありませんよ!」
イデアがニィと口角を上げると、アズールもそれに乗っかって焦った演技をして見せた。
「デュフフ……このカードを使ったらァ…次のターンを」
「ま、待ってください」
「行くゾォ?」
「やめてください!それだけは!」
「特殊カード発動!じゃん!」
「……なんですかこれ?」
イデアが出したカードはワイルドのカードだったが、真ん中の部分が真っ白になっており、そこに何か文字が書かれていた。
「『次の人はゲーム終了まで猫耳と首にリボンをつける』」
「なんですって!?」
「じゃあアーシェングロット、これ猫耳とリボンな」
アズールが思わず席を立って声を上げると、イグニハイド生はどこから持って来たのか、黒い猫耳のカチューシャとリボンを彼に差し出した。
「ちょっと待ってください!いつの間にこんな物仕込んでたんですか!?それに何で都合よく猫耳が出てくるんだ!」
「これがッ、闇のUNO!!」
「さあアズール氏!それを装着するのだ!!」
ボードゲーム部が利用している教室には、部員が持ち寄ったボードゲームが数多く保管されているが、同時に負けた者への罰ゲームとして使われているグッズも用意されている。
「ゲームに負けた者を思い切り笑いたいから」という、いかにもナイトレイヴンカレッジらしい理由で、この教室にはボードゲーム以上に罰ゲーム用のグッズが豊富に揃っていた。
アズールは低い呻き声をあげると、やや乱暴な手つきで猫耳とリボンを装備した。
「おお、意外に似合ってますぞアズール氏」
「うんうん、可愛い可愛いw」
「くっ…!うるさいですよ!」
指をカメラの形にして笑う二人に、アズールは切り替える為にピシャリと黙らせた。
「さあ、次の色は何ですかイデアさん!」
「漆黒の…!!青ッ!!」
「漆黒の、青ですか。……いや、まだだ。僕にはまだ、勝ち筋が残されている!」
「すごいいっぱい手札あるけどw」
アズールが手札を見せつける様なポーズをとると、イグニハイド生はその枚数の多さに余裕の笑みを見せた。
「まずは、8!」
アズールは場に青の8のカードを置くと、次の番のイグニハイド生がカードを出そうとするのを手で遮った。
「まあ慌てないで、落ち着いてください。ここで、まだ8!そしてここに、8!そして最後に漆黒の、赤で8!!無限∞無限(エイト・カルテット)!!」
アズールは同じ数字で色違いのカードを一気に四枚出して見せた。
「おお、カルテット系と来ましたか……」
「寮長、あいつの名前聞いた事あるぞ…」
「なんだって?」
「噂で聞いた事があるッ」
「君、それは本当か?」
「ああ、あいつは…またの名を……カルテットアズール!!」
「何ッ!?」
「ふふふ。さて……どうします?」
イグニハイド二人の緊迫したやり取りに、アズールは自信満々の笑みを見せた。
「だがそれで負ける俺ではない!俺のターン!……ドロー!!ターンエンド!!」
「あ、手札ないんだね…w」
次の順番が回ってきたイグニハイド生は、漫画の様なベタな台詞でカッコつけたが、出せる手札が無かったのでそのままのテンションで山札からカードを取った。
……そして楽しいゲームというのは、いつか終わりが来るもの。
とうとう決着の時が来た。
「ふっふふふ……はっははは!!……あがりですわ~」
「「えっ!!?」」
自分の番が来て突然笑い出したかと思えば、イデアは手札に持っていた全てカードを出した。
先を越された二人が立ち上がって確認すると、先程アズールが出した様に全て同じ数字のカードが重なっていた。
「ファーwwwwww」
「バカな!……早すぎる!」
「まだUNOも言ってないじゃないですか!」
「さあ、命を失うのはどちらでしょうかねー?」
一番になって高みの見物を決め込み始めたイデアは、肘をついた両腕に顎を乗せてニヤニヤと笑った。
その後の二人はUNOを宣言しては最後を出せずに山札からカードを取り、スキップやリバースが出ては悪態をつき、ドロー2が出ては叫び声を上げ、一進一退の攻防が十数分に渡って続いた。
「そして、終わりだ…!」
最後にイグニハイド生が黄色の4を出してあがり、ついに闇のゲームの決着がついたのである。
「なにっ!!」
「DEATHの4だ!」
「くそっ……!ぐっ、ぐああっ!!」
敗北したアズールは胸を押さえて、苦悶の声を上げながら机に突っ伏した。
「……これで満足ですか?」
「もう大満足!ありがとうアーシェングロット!」
「途中からノリノリでしたなアズール氏、名演技でしたぞ」
うつ伏せになったままアズールが尋ねると、イグニハイド生はやや興奮気味に礼を言い、イデアは思いのほかノリが良かったアズールの演技を褒めた。
「こんなの正気じゃやってられないでしょう。負けっぱなしは嫌なのでもう一回やりますよ、ふたり、とも……」
アズールが顔を上げると、教室のドアの隙間から覗くカメラのレンズと、見覚えがありすぎるゴールドの瞳と目が合った。
「ジェイド!?」
「ふふふ、ごきげんよう皆さん。ゲーム終了お疲れ様です」
「ヒィッ!ジ、ジェイド氏!?」
「リーチ!?」
突然のウツボの来訪にアズールは飛び上がり、イグニハイド二人は先程までのハイテンションから一点、手を取り合って縮み上がった。
「お前、いつからいたんだ!いつから撮っていた!」
「イデアさんがUNOのカードの束を見せたところからですね」
「えっ。……それって、ほぼ始めから見られてたってこと?」
「はい」
ニッコリ笑って返された肯定は、さながら三人への死刑宣告だった。
「学園長からアズールに渡しておいて欲しい書類を預かったので来たのですが、皆さんとても楽しそうにゲームをされていたので、終わるまで外で待っていたんです」
「なっ、えっ」
「ふふっ、中々お似合いですよアズール。では書類はここに置いておきますね」
終始楽しそうに笑っていたウツボは、持っていた書類をアズールの前の机に置くと、そのまま颯爽と教室を出て行った。
「「「…………」」」
ジェイドによって正気に戻ってしまった三人は、しばらく放心状態でその場に固まっていた。
「あ……ああ……ああ~っ!もうやああああだあああああ!!」
しばらくはあのウツボとその片割れに揶揄われるであろう未来を想像して、アズールは絶叫しながら頭に付けていた猫耳を床に叩きつけ、他の二人は椅子の背もたれにぐったりと凭れて、「シテ……コロシテ……」としか呟けない死体と化していた。
2023年3月1日 Pixivにて投稿

コメント