ツイステ闇鍋スロット

ツイステッドワンダーランドツイステ一話完結小説

クルーウェルとトレイの癒し時間 
「クルーウェル先生が キメ顔で 傘をくるくると回す」
「トレイが 最高に楽しそうに もふもふもふもふ」

 午後の授業が終わった雨の魔法薬学室。
ナイトレイヴンカレッジ教師のデイヴィス・クルーウェルは、上機嫌に鼻歌を歌いながら道具を片付けていた。

 昨日休日だったクルーウェルは、何か映画でも見ようと近くのレンタルショップに立ち寄ると、幼い頃に好きだったミュージカル映画のDVDが置いてあったのだ。
少年だったクルーウェルはその映画が大好きで、DVDが劣化で見れなくなるまで何度も繰り返して見たものだ。 
懐かしさから早速それを借りて自宅で酒を飲みながらそれを鑑賞すると、やはり思い出に残っている記憶通り、惹きつけられる内容だった。
 
 特に雨の中傘を持った男が、雨に打たれながら歌って街を闊歩するシーンが一番のお気に入りなのだ。
雨の中笑顔で高らかに歌い、間奏部分の軽快且つリズミカルなタップダンスもオシャレで、何度巻き戻して見た事か。
 
そうやって映画のシーンを思い出しながら、クルーウェルは傘を片手に魔法薬学室を出て、サイエンス部が活動する実験室へと足を運んだ。
空はいつの間にか傘をさすか迷う程度の小ぶりの雨に変わっている。
いつもなら髪やコートが濡れるので必ず傘をさすのだが、今日は映画の影響で傘をささずにそのまま歩いた。
 
思えば幼い頃、傘を持ってあの映画の俳優の真似をして歩いたものだ。 
そう、確かこういう風に傘をくるくると回して……。


「えっ、クルーウェル先生?」
 
 背後からの戸惑った声にクルーウェルがハッと我に返って振り向くと、サイエンス部の生徒である、トレイ・クローバーが傘をさして戸惑った顔をして立っていた。 

「……あー、いや、植物園に今日の実験に必要な薬草を取りに行っていて……何かいい事でもあったんですか?」

部活の顧問がキメ顔で傘を回して歩いて来たのだ、戸惑うのも無理はない。
それでも聡いトレイは頬を搔いて目を泳がせながらも、クルーウェルに何も無かったように声を掛けた。

「……クローバー、時間はあるか?いや、あるよな。あるに決まっている」
「え?あ、はい大丈夫です」
「ついて来い」

有無を言わせないクルーウェルの迫力に気圧されて、トレイは困惑しながらも大股で前を進む顧問について行った。


「そこでいい子に座っていろよ」
「ああ、はい」

 トレイが連れられた場所は、クルーウェルが仮眠する場所としても使っている資料室だった。
トレイはクルーウェルに命じられるままソファに座って待っている間、学園の図書館並みに専門的な書籍や資料に目をやっていた。

「待たせた」

 いい匂いがしてきたと思ったら、クルーウェルがティーセットと紙の箱を持って帰って来た。 
クルーウェルがテーブルに紅茶を置いて持って来た箱を開けると、その中にはレーズンバターが入っていた。

「これって……輝石の国の有名な専門店のレーズンバターじゃないですか!」
「ああ、さすがよく知っているな。これでさっきの事は忘れろ」
 
滅多に手に入らない指折りの名店のレーズンバターにトレイが飛びつくと、クルーウェルが満足そうに頷くと、それを口止め料として小皿に乗せてトレイに差し出した。

「ははは、心配しなくても言いませんよ。でも折角なので、ありがたくいただきます」

どこか余裕の無いクルーウェルの様子に、トレイは苦笑しながら口止め料に手をつけた。

「んん!さすが名店のレーズンバターですね。いいバターを使ってるし、入ってるレーズンもいい香りだ」
「そうだろう?輝石の国で有名なラム酒でレーズンを漬けているんだ」

向かいに座って自分もレーズンバターを食べ始めたクルーウェルは、トレイの反応に口の端を持ち上げた。
 
「夜に一人でゆっくり食べたくなるような味ですね」
「ふふ、分かっているな。いつか大人になったら酒の供にするといい」
「それはいいですね。……ん?」

紅茶も飲み終えて一息ついたトレイは、部屋の奥の教卓の端にふわふわした物が動いているのに気が付いた。

「キャン!」 
 
トレイがしばらくそれを眺めていると、茶色い小さな子犬が教卓から飛び出してクルーウェルの足元に駆け寄って来た。

「犬?」
「ああ、遠い親戚から一時的に預かっていてな。家に一匹で置いておけないから、特別に許可を貰ってここで面倒を見ているんだ。まだ子犬だが中々利口な奴だぞ」
「キャン!」

クルーウェルに頭を撫でられていた子犬は、テーブルの下に潜り込んでトレイの足の間にやって来た。

「どうやらお前に興味があるみたいだな」 
「撫でてもいいですか?」
「ああ、撫でてやってくれ」

 クルーウェルの許可を貰って、トレイは足の間にいる子犬の頭を撫でた。
初めて会うのに子犬はトレイの手に嫌がる素振りを見せず、むしろもっと撫でてとばかりに彼の手に顔をすり寄せた。 
 
「ははっ、人懐っこいな」 

 実はトレイは連日の寮の副寮長として仕事や、なんでもない日のパーティーの準備などで疲労が溜まっていた。
普段からケーキを作っているので、体力には自信があるトレイではあるが、疲労が溜まるものは溜まる。
なのでおいしい菓子を食べて、触り心地のいい子犬を撫でるのは、今のトレイにとっては大きな癒しになっていた。 
  
「クローバー?」
 
 急に静かになったのでクルーウェルがテーブルの向かいに目を向けると、トレイは心底楽しそうな笑顔を浮かべて、子犬をもふもふとずっと撫で続けていた。
声を掛けても反応せず本人も楽しそうだったので、ひとまず自分の紅茶が飲み終わるまでは好きにさせておこうと、再び自分のカップに口をつけた。

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