びちゃびちゃのタオルとぐちゃぐちゃの林檎

ツイステッドワンダーランドツイステ一話完結小説

 まずギデルはフェローの頭を冷やす為に風呂場に入ると、床に転がっていた洗面器を手に取り、風呂場の蛇口を捻った。
普段なら中々お湯が出てこなくて寒い思いをするのだが、今はフェローの頭を冷やすのが目的なので、外気でキンキンに冷えている水はちょうど良い。
洗面器の真ん中まで水を溜めて蛇口を閉めると、ギデルは水を落とさないように注意しながら、フェローが寝ているベッドサイドに洗面器を置いた。
 次にタオルの準備だが、家にあるタオルは枚数が限られているので、気軽にホイホイと乾いているタオルを使ってしまったら、いざ身体が濡れた時に拭く物が無くなってしまう。
服やタオルを入れている引き出しを開けようとして止めたギデルは、ふと視界の端に映った布の存在に気づいて天井を見上げた。
天井の端から端にぶら下げている紐には、昨日から干している二人分の洗濯物が干されている。
その洗濯物の中にタオルが一枚あった、あれならまだ生乾きの筈だ。
 ギデルはご飯を食べる時に使う椅子を持ってくると、それに乗ってタオルに手を伸ばした。
しかし彼が椅子に乗っても、高身長であるフェローよりも高さが足りないので、タオルにあと少しのところで手が届かない。

「……、……!」

 つま先立ちになってもう一度思い切り手を伸ばすと、指先が僅かにタオルに引っかかったので、そのまま思い切り自分側に手繰り寄せた。
プツと何か外れた音がした瞬間に、タオルは紐から外れてギデルの頭に降りかかった。
思い切り引っ張ったせいで他の洗濯物がいくつか紐に巻きついてしまったが、今はそれどころではない。
何はともあれタオルは手に入った。
ギデルはタオルを握りしめて、足音を立てないようにしてフェローの元へ向かった。
 

 ギデルがベッドに近づくと、フェローはさっき様子を見た時と同じ状態で眠っている。
タオルを乗せる為にフェローの前髪を左右によけてやると、額に玉の様な汗が浮いていたので、ギデルは用意したタオルでまず彼の汗を拭いてやった。
それからタオルを洗面器の水に浸して絞ったが、絞る力が足りなくてびちゃびちゃになっているのはご愛嬌だ。
濡れたタオルで鼻や口を塞がれると息が苦しくなるのは身を以て知っているので、ギデルはフェローの鼻や口を塞がないように注意しながら、彼の額にタオルを乗せた。

「…………」

 看病をした経験がないので、やり方が合っているか分からない手探り状態で行動しているが、どうやらこれは正解だったらしい。
しばらく様子を見ていると、きつく閉じられた目元がほんの少し和らいだ気がして、ギデルはホッと息を吐いた。

「っ、ごほごほっ……」
「……!」

 ギデルがその場を離れようとすると、フェローが小さく咳き込んだ。
慌てて戻って彼の背中をさすって、咳を落ち着かせると、今度こそギデルはベッドから離れてキッチンへ向かった。
本当はずっとフェローの側についていたいが、ギデルにはまだやるべき事があった。

 キッチンに入ったギデルは、次にフェローに食べさせる林檎の用意に取り掛かる事にした。
肝心の林檎は、フェローが今日の昼にギデルと一緒に食べる為に用意してくれたものがある。
いつもは丸かじりで食べるけど、ギデルはかつてフェローがしてくれたように、それを食べやすいようにカットして食べさせてやりたかった。
 しかし刃物は危ないから使えない。
そもそもキッチンに入る事自体も、思わぬ怪我をするかもしれないからと、フェローに禁止されているのだ。

「…………」 

 フェローにあの林檎を食べさせてやれなくてしばらく落ち込んでいたが、ギデルは首をブンブン振って切り替えると、他に何かいい方法が無いかキッチンの調理器具が入っている棚を物色した。
フライパン、ボウル、木ベラ、鍋、眺めてみてもどれが使えるのか分からない。
まだ後ろの方にも何かあったので、思い切って棚の奥の方まで腕を伸ばしてみると、指先がザラザラした何かに触れた。
一体なんだろうと、今度は身体ごと棚に突っ込んで触った物を外に取り出してみると、それは薬になる草を見つけた時に、フェローが草をすり潰すのに使っていた、すりこぎ棒とすり鉢だった。

「……!」

それを見つけていいアイデアが浮かんだギデルは、すり鉢を頭の上に掲げた。

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