四、同田貫正国は機嫌が悪い

刀剣乱舞合歓木本丸小説

 同田貫正国は不機嫌そうに、無言で夕食を掻き込んでいた。
ただでさえ目つきが悪いと言われているのに、機嫌が悪いという事で余計に凶悪面になっている。
大広間の入り口が騒がしいなと思って目を向けてみると、その原因が堀川に引きずられてやって来た。

「ほら兄弟、昨日も寝たままで晩御飯抜いたでしょ、ちゃんと食べないと倒れちゃうよ」
「まだねむい……ねかせてくれ、きょうだい……」
「頼んだって、ダメだからね」

不満の原因は、初期刀である国広の事だった。


 同田貫は現在、第二部隊に所属している。
厚が率いる短刀中心の部隊が作られるまでは、第三部隊の部隊長をしていたが、隊員として動いた方がいい動きをすると審神者に判断されて、今では第二部隊隊員として戦っている。
そこはいい、出陣をメインとしている第二部隊では、思い切り戦う事が出来る。
戦う事が好きな同田貫にはちょうどいい。

 けれど、眠そうに眼を擦る総隊長の姿を見ると、妙に苛立つのだ。
国広が率いる第一部隊と、同田貫が所属する第二部隊は、入れ替わる様に出陣しているので、二振りが顔を合わせる事は滅多にない。
なので同田貫は、国広が戦っている姿を見た事が無かった。
同田貫から見た山姥切国広は、いつも大抵眠たげに俯いて目を擦っているか、訳の分からない場所で所構わず眠っている、そんな刀だった。
彼の体質の事は、もちろん理解している。
霊力の消費が早いせいで、眠くなりやすい体質なんて、毎日起きる時間と寝る時間が決まっているだけの同田貫にとっては、なんて難儀な体質なのだろうと、最初は思ったのだ。

 彼は総隊長や、隊長と呼ばれる事が多い。
隊長とは自分達を率いる者で、戦闘においての自分達の頭だ。
本丸を率いているとはいえ、実際に戦闘を行わない審神者とはまた違う。
時として、審神者よりも発言権を持つ場合だってある。

そんな大事な役割を、彼に任せ続けてもいいのか?
あんなに眠そうにして、いざという時戦えるのか?
そんな疑問が頭をついて離れないのだ。

「な~にふてくされてんのさ、同田貫」

間延びした声で話しかけたのは、隣に座っていた、自分と同じ第二部隊に所属している、加州清光だった。

「隣でそんなしかめっ面されたら、こっちのご飯までまずくなるよ。何かあった?」
「……別に」
「なに、隊長の事?」
「……」

ふいと彼の赤い瞳から目を逸らしたがその視界の先に、うとうとしたまま兄弟刀に茶碗を持たされている彼を見た途端に、僅かに顔をしかめてしまった事で、いとも簡単に見破られてしまった。

「最近たまに隊長の事睨んでる時あるよね、喧嘩でもしたの?」
「いいや。……ただあんなので戦えるのかって思っただけだ」
「あー、そっか。同田貫、隊長と一緒に出陣したことないんだっけ、じゃあ無理もないか。まあ、普段があれだからね。この本丸だから仕方ないってのもあるけど」

加州が国広に目を向けると、彼はこくりこくりと船を漕ぎながら、茶碗の白米をもそもそと食べている姿は、見た目の年相応に見えなくて、そのギャップに「ふはっ」と小さく噴き出した。

「お前はいいのかよ、あいつが隊長で」

何となく居心地が悪く、同田貫はむすっとして加州に聞いた。
すると「ん~?」といいながら、口の中の物を飲み込んだ。

「まあ、俺も最初似たような事は考えてたんだよね。随分主に甘やかされてるなあって。けどたまたま手入れ中の鯰尾の代理で、第一部隊の面々と出陣した時、隊長の戦っているのを見たら、そんな考えも吹き飛んじゃったんだよね。同田貫も一度隊長と戦ってみるといいよ。戦ってる隊長、すごいから」

加州は、そう言ってつり目がちな赤い瞳を細めた。

「ふうん……つっても、俺しばらくそれは見られそうにないだろうけどな」

加州の話は半信半疑だとでも言う風に、残りの白米を掻き込んで、食器を下げにその場を立ち去る黒い背中を、遠くに座っていた白い太刀と、上座に座る審神者が見つめていた。

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